(更新:)
ORICON NEWS
男性視点で描くマンガ『生理ちゃん』、“性別の差異”越えた共感生む
アスリート、モデル、女優…職業によっては「敵」という風潮
2016年のリオ五輪では、メダルを逃してしまった中国競泳の傅園慧(フ・ユアンフイ)選手がレース後のインタビューで「昨日、生理が始まったので。だからすごく疲れていて……でもそれは理由にならない。今日の自分の泳ぎは良くなかった」とコメント。この発言は大きな反響を呼び、ネット上では彼女を応援する声、逆に批判の声など様々な意見が飛び交った。女性アスリートは、ピルを服用することで大会などに合わせて生理をコントロールするのが主流だが、アジアや後進国ではこうした対策が遅れているという問題も浮き彫りになった一件だ。
また最近では、中国の人気女優・アンジェラベイビーがバラエティ番組の罰ゲームで水責めになるコーナーに出演した際「特別扱いされている」と批判が殺到。これに対して「生理の初日でつらかった」とカミングアウトしたことが国内外で大きく注目を集めている。
スポーツ界では「生理がこなくなって一人前」という意見もあるという。スポーツ界でなくとも、情緒不安定になる女性に対し「生理中の女性は面倒くさい」と思ったり、「病気じゃないのに騒ぎすぎだ」と煙たがる男性もまだまだ多い。経験のないことを理解出来ないのは当たり前。しかしこれからの時代、そういった考えは国際的にも「時代遅れ」になりつつある。男性作家が描く『生理ちゃん』は、これらの男性の間違った認識や知らなかった現実を埋めるひとつの材料になってくれそうだ。
人間模様も様々、生理ちゃんの優しさにホロリとくる
「ブスなだけでツラいんだから、さらにツラくさせることないじゃない」と恋愛をあきらめたコンビニ店員。自分をブスと思い込み、そう言われた過去を引きずる彼女に、生理ちゃんは「全然ブスじゃないよ」と優しい言葉をかけてくれる。「昔に言われた悪口なんて、たいていはただの呪いなんだから」と前向きになれる“神ワード”も登場する(「コンビニ店員と生理ちゃん」より)。子持ちの男性にプロポーズされたある女性。結婚適齢期ではあるが、急に11歳の女の子の母親になる覚悟もなく返事に悩み、飲んだくれる。生理ちゃんは彼女の話にじっくり耳を傾け、何を言うわけでもなくそっと肩を抱いて一緒に飲んでくれる。(「適齢期と生理ちゃん」より)。
女性同士でもあまり大っぴらには話さない生理トーク。そこを突くことで、『生理ちゃん』は多くの女性たちの琴線に触れている。さらには生理ちゃんの男性版「性欲くん」が登場し、男性の性事情を描くシーンも。マンガでサクッと読めるベストな長さで、ちょうどよいストーリーの“生々しさ”もポイントだ。
江戸時代の生理事情、生理用ナプキンの誕生、知らなかった歴史も
江戸時代は月経小屋というものがあり、生理になると閉じ込められたという今では考えられないよう話も登場。遊郭の女性と絵かきの女性の友情が優しく切ない。
もう一つは、1961年に発売された日本で初めての使い捨て生理用ナプキン「アンネ」誕生秘話。ナプキンの企画プレゼンで男性から「女のシモのもので飯を食う気はない。帰ってくれ」と門前払いされてしまうシーンは、ちょっとした衝撃だ。印象的なのは、生理と真摯に向き合い開発に奔走する男性・渡部さんの想い。Twitterでは「女性の生活のために本気で戦ってくれた男の人がいたんだろうかと思うと、なんかこみ上げてきて」と感動の声も。
「理解」は出来なくても、まずは一歩「知る」ところから
(文/齋藤倫子)