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活動15周年のEveが企画展・蒼像を開催、アニメーションを通じてニコ動から世界へ…「間違いなく音楽をやる大きな喜び」
楽曲の世界に没入、企画展の観覧後は「アルバムの聴こえ方」が変わるかも?
撮影:笠原舞子(Pash)
活動15周年を迎えたEve
Eve 前回の企画展は2023年に開催したライブ「虎狼来」と「花嵐」を再解釈する内容で、過去の振り返りみたいな要素が強かったんです。今回はむしろ未来、夏のツアーを前にアルバム『Under Blue』の世界を音楽やMVとはまた別の形で触れていただきたい、という思いで企画しました。僕の楽曲のMVはわりと非現実的な世界観を描いたアニメーションが多いので、リアルな立体物として再現したら、より楽曲の解像度も上がるんじゃないかなという意図もありましたね。
──会場を広く使った展示だけでなく、密室のような部屋がいくつも作られているのも今回の展示の特徴なのかなと思いました。
Eve それは、絶対に今回やりたいことの1つでしたね。究極を言えば、部屋に1人ずつ入ってほしいくらい(笑)。実際は難しいことかもしれないけど、それくらい楽曲の世界に没入していく感覚を味わってもらえたら嬉しいなと思っています。
──実際に上がれるステージや、創作スペースの再現、Eveさんの思考の深部に潜り込めるギミックなど、ただ眺めるだけではない内容が多い印象です。
Eve 会場の設備的に難しいところも試行錯誤して、なんとかクリアしていただいたので、ぜひ至近距離まで近寄って見てもらいたいです。
──夏には自身最大規模の全国ツアーが開催されます。今回の企画展を経て、どんなことを楽しみにしてほしいですか?
Eve 企画展から帰った後、アルバムの聴こえ方がそれまでと変わってたら嬉しいですね。今はセットリストや演出を考えているところなんですが、僕自身、企画展に向き合ったことでアルバムの理解もさらに深まり、ライブの濃度も高まっている感覚があります。あまりライブの本数が多くないほうなので、僕もみなさんにお会いできるのが本当に楽しみです。
15年続いた活動に自身も驚き、あまりメディア露出しない理由に言及
撮影:笠原舞子(Pash)
撮影:笠原舞子(Pash)
Eve 僕自身はあまり何かを感じていたということもなくて。というのも、たぶんメディアに積極的に出てこなかったからなのかなと思います。レーベルの方が「音楽番組はどうですか?」と提案してくださったこともあったんですが、基本的にはすべてお断りしてきました。だから、今も自分のペースを崩さずに活動できているのかなと思います。
──たしかに大ヒットが出ると、その曲ばかりがフィーチャーされて"消費"されていく…ということはありがちです。それを避けたいという判断?
Eve いや、そんなカッコいいことではなくて(笑)、メディアに出るのが苦手というほうが正しいかもしれない。あとは、ありがたいことにメディアに出なくても聴いてくださる方がずっといたというのは大きいですね。もちろん食わず嫌いはダメだと思いますし、スタッフのみなさんとキャッチボールしながら「ここには出てみよう」と取捨選択はしているんですけど。
──一方、ライブでは普通に“顔出し”で演奏。やはりライブは特別な場なのでしょうか?
Eve そうですね。曲を作るようになったのも、ライブが楽しかったからというのが大きくて。もともと自分は音楽畑の人間ではなく、趣味としてボカロのカバーをニコニコ動画に投稿していたんです。そこからライブに誘われるようになって、刺激的な出会いもたくさんあって。その頃から自分のオリジナル曲だけで成立したライブをやりたいなと思うようになったんです。それが今も続いていることに、自分でも驚いています。
──驚いている?
Eve 飽き性のくせに音楽だけは15年続けてきたんだな、ということにですね。ただそれも自分だけの力じゃなくて、出会ってきたクリエイターさんたちの影響はとても大きかった。やってることは音楽だけど、そこからアニメーションやイラスト、それこそ今回の企画展の造形のように、表現がどんどん派生していくのが面白くて。だから、ずっと新鮮な気持ちで音楽に向き合えているのかなと思います。
アニメーションの威力を実感、「また二次創作をやりたいな」との思いも
撮影:笠原舞子(Pash)
撮影:笠原舞子(Pash)
Eve ただ、カバーとか二次創作ならではの喜びって確実にあるんですよ。それも音楽を軸にした派生表現ですし、自分は“二次創作より一次創作が偉い”みたいな感覚はありません。どらちもやってきたからこそ、最近は、また二次創作をやりたいなという気持ちもちょっと湧いてきていて。ないものねだりなのかもしれないですけど(笑)。
──楽曲の世界観やメッセージを緻密に描いたアニメーションも、Eveさんのクリエイションの特徴の1つで、企画展でも楽曲に紐づいた視覚表現がふんだんに使われています。楽曲を創作する時、Eveさんの頭の中には映像が流れているのでしょうか。
Eve たしかに、「このクリエイターさんと一緒にMVを作りたい」と思って、その方の作風をイメージしながら曲を作ることはけっこうありますね。そもそも僕はニコニコ動画の投稿からスタートしているので、当初から音楽だけが独立して存在しているイメージがあまりなくて。視覚表現から強い影響を受けて、音楽を作っているところはかなりあります。そういう意味でも、一緒にものづくりをするクリエイターさんたちの存在は大きいです。
──今や“音楽×アニメーション”の表現もメインストリームになりました。初期から取り組んできたEveさんにとって、昨今のカルチャーをどう感じていますか?
Eve 僕自身、アニメーションが大好きなので嬉しいですし、何よりアニメーション作家さんには尊敬の念しかありません。去年のアジアツアーで、言語も文化もぜんぜん違う人たちと繋がれるって本当に素敵なことだと感じたんですが、それこそ15年前には想像もできなかったことでした。日本でも海外でも「同じものが好き」な人たちがこんなにたくさんいると思えることは、間違いなく音楽をやる大きな喜びになっています。