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中島健人、“人間の殻を破っていく決意を込めた”アルバム『N / bias』をレビュー! 来年1月開催のソロライブも話題に
「王子、城を抜け出す。」中島健人の影に潜んでいたものが今、目覚める…!
その1人になって初リリースのフルアルバムは、ライブタイトルにもなっている『N / bias』(読み:ノンバイアス)だ。その世界観は「王子、城を抜け出す。」の書き出しのもと、以下のようになっている。
「グループからの卒業、1人になってリリースする初のフルアルバムは、悲しみと怒りが入り交じった絶望が原初となりながらも、1人の人間として未来への希望を見つけていくための楽曲で構成されている。これまでの中島健人に対する評価・偏見を振り払い、人間の殻を破っていく決意を込めた1stアルバム」
そのリード曲となる「ピカレスク」は、「悪党」という意味もあるが、小説の主人公が自身の遍歴や冒険を物語るときにも使われるキーワードだ。中島が何を思ってこのタイトルと歌詞を綴りだしたのかは分からない。だがその“物語”を帯びた歌詞の中で、自身の「闇落ち」を演出する。特に歌詞、「銃口向け悪と言われる夜さえも ジョーカーの眼から堕ちる 黒い涙と笑みは 嘘かわかるでしょ」では顕著であり、それ以外に選ばれたワードもまるで自らを自らのペンで傷つけているようだ。だが、そこからは「黒い涙と笑み」が浮かぶ……。
夜の闇を取り込み、闇を心にたたえたまま、光の世界へ飛び出そうとする覚悟
そして07の「jealous」だ。アップテンポの曲調に加えた明るいリズミカルなパフォーマンスが、またまったく違う印象を引き出す。スピード感がありながらもキャッチーであり、彼のスター性をひときわ際立たせている。09「Bye Bye Me」で感じられる中島からは、優しさの中に潜むわずかな切なさを感じさせてくれた。このように、中島健人という一人の人間の新たな顔、それも様々な内面を象徴する楽曲が盛り込まれている。単なる王子様キャラではない。孵化して伸ばし羽ばたく羽根の模様は、驚くほどに多彩な色に満ちている…。
ところで同アルバムの10曲目は形態ごとに異なっている。アルバムエンディングとして、『N / bias』の制作過程で見つけだされた“中島健人”をそれぞれ異なる3つの側面から描いた楽曲が収録される。
初回限定盤A=光・・・「Heartbeats」
初回限定盤B=夜・闇・・・「Nocturne」
通常盤=“未知”・・・「迷夢」
このまるで違う3曲。個人的にはこれをコンプリートしてこそ、中島健人の心の奥に迫れると感じている。
また「CANDY〜Can U be my BABY〜(New Vocal Mix 2024)」や「ROSSSO (Englishver.)」など、SexyZONE時代のソロ楽曲も収録されていることにも注目だ。これらも同楽曲でありながら、同楽曲ではない。つまり現段階の中島健人が、中島健人でありながら、これまでの中島健人ではないことが感じられるに違いない。
中島健人の1stアルバム『N / bias』は、中島健人という人物がどれほど多くのものを持っていたか、潜めていたかが分かるものとなっている。リード曲「ピカレスク」に刻まれた言葉たちは、彼の内なる何かを音楽というキャンバスに解き放つ覚悟のようなものが感じられた。グループからの卒業という転機を経て、社会勢力と向き合った彼が見つけた新たな自分のかたち。『N / bias』は、中島健人の魂のレコードであり、これまでの中島健人に対する評価に囚われない、これまで秘められていた不可侵領域の特異点なのだ。
ファンならずとも是非、同アルバムを耳にしてほしい。そこにはこれまであなたが知らなかったであろう中島健人が存在する。まったくの別人ではない。過去と現在、未来がその影にだぶってみえるからこそ、これまでにない彼の新たな人生のうぶ声が聞こえるはずである。
文・衣輪晋一