映画『ハリー・ポッター』や『ファンタスティック・ビースト』シリーズの制作の舞台裏を体験できる、「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京-メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(以下、スタジオツアー東京)。11月9日より、スタジオツアー東京にとって初めてとなる、クリスマスシーズン限定の特別企画「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」が開催中(2025年1月5日まで)。本記事では、知るとより楽しめる7つのトリビアを紹介。映画制作にも携わったピエール・ボハナ氏とロージー・グッドウィン氏が解説してくれた。 「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」とは?
ハリーが初めて体験する、映画シリーズ1作目の『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年)のクリスマス・シーンを再現した特別企画で、元祖イギリスにある「ワーナー ブラザース スタジオツアーロンドン」でも大人気のイベントの一つ。クリスマス仕様に彩られたホグワーツ魔法魔術学校の「大広間」と、忠実に再現された24分の1サイズの「ホグワーツの模型」に雪化粧がほどこされた息を呑むほど美しい姿を存分に楽しめる。 Harry Potter characters, names and related indicia are trademarks of and (C) Warner Bros. Entertainment Inc. Harry Potter Publishing Rights (C) J.K.R. (C) 2024 Warner Bros. Entertain-ment Inc. All rights reserved.
「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」トリビアの数々を教えてくれたのは映画制作にも携わったピエール・ボハナ氏(小道具制作ヘッド:写真右)&ロージー・グッドウィン氏(セットデコレーター:写真左)。日本での初開催に向けて、最後の仕上げのためイギリスから来日していたところを取材することができた。 ロージー・グッドウィン氏(セットデコレーター:左)、ピエール・ボハナ氏(小道具制作ヘッド:右)
【INDEX】「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」7つのトリビア
■大広間
【基本情報】
広大なホグワーツ城の中でも、最も印象的な場所のひとつである「大広間」は、10年という撮影期間の中で、祝宴やクリスマス・ダンスパーティー、そして魔法決闘など、数々のシーンの舞台となってきた。石畳の床や背の高い窓、木製の羽目板の壁は、イギリスのオックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジをモデルにしている。 大広間
(1)映画では少ししか映らなかった大広間を忠実に再現
映画『ハリー・ポッターと賢者の石』で、クリスマスの装飾が施された大広間が映るのは、ほんのわずか。雪が降り積もるホグワーツ魔法魔術学校に、ハグリッドがもみの木を運び入れるシーンのあと、フリットウィック先生が魔法を使ってツリーの飾りつけをしている中、魔法使いのチェスをしているハリーとロンに、ハーマイオニーが話しかけに行くときに大きなツリーが何本もそびえ立つ大広間の様子を見ることができる。 ピエール・ボハナ私はさまざまな映画の小道具制作にたずさわってきましたが、作ったものがすべて映画の中でフィーチャーされるわけではないんです。映画は物語を伝えるものなので、その役目を果たせたのなら、結果、映っていなくてもいいと思っています。たしかに、1作目のクリスマス・シーンは非常に短かったのですが、帰省して家族とクリスマスを過ごす生徒が多い中、事情があって学校に残った生徒も楽しいクリスマスを過ごせるように、ツリーを飾り、ごちそうを用意するホグワーツのあたたかさを感じてもらえたのではないでしょうか。 映画撮影時と同じように、「大広間」には高さ5メートルのクリスマスツリーが左右に4本ずつ計8本並び、さらに6メートルのひときわ目をひく大きなツリーが大広間の正面奥に飾られている。大広間のドアの外に飾られていたクリスマスリース(左右1つずつ)やガーランドも再現。大広間の暖炉の上に飾られているひときわ大きなクリスマスリースは直径2.4メートル、重さは69キロもある。 ピエール・ボハナ私たちは映画の中の大広間を忠実に再現するよう努めました。私を含め、映画制作に携わった美術スタッフに再集結してもらい、撮影当時の資料や現物をもとに、素材や工程にもこだわり、全く同じに見えるように作り上げました。やまうずらのオーナメントは、羽の部分が4つの寮のカラーになっていたんです。映画の中では一瞬だった大広間を、時間をかけて、ディテールまでじっくりとご覧ください。 (2)撮影当時の資料をもとに手作業で作られたオーナメントは1000個以上
今回制作されたツリーのオーナメントは予備も含めて、星:230個、三日月とボール:230個、やまうずら:230個、ツリーのトップを飾る金色の大きな星:9個、星の下を飛び回る箒に乗った魔女:8個、サイズが異なる金色のトランク:57個など、1000個以上にのぼり、20人の小道具制作スタッフが約3ヶ月かけて手作業で作り上げた。 ピエール・ボハナ映画撮影時のオリジナルと全く同じように復元することを念頭に置いていたのはもちろんですが、ツリーに飾られる星一つをとっても、下から見上げたらどう見えるかまで考慮し、塗装を工夫しています。職人の手作業でしかできないことです。 (3)ダイニングテーブルの"ごちそう"はあえて大きく、不ぞろいに
大広間のダイニングテーブルには、イギリスの伝統的なクリスマスのごちそうの食品サンプルがセッティングされている。入口から奥に向かって左側に、七面鳥のロースト、チェリーがちりばめられたハム、ローストポテト、グリーンピースが各12皿、右側のダイニングテーブルに、雪だるまの飾りがあしらわれたケーキとクリスマスプディングが各8個ある。 ピエール・ボハナ『ハリー・ポッターと賢者の石』の撮影では、最初は本物の食べ物が使われていました。大広間の宴のシーンでは、500人もの子役や俳優が集まり、大量の食べ物が必要でした。しかし、食べ物を何度も温め直して並べ直すのは手間がかかり、最終的に捨てるのももったいないため、持続可能ではないと気づきました。そのため、急きょ、粉末や樹脂で作られた食品サンプルを用いることになりました。2作目以降は、キャストが実際に食べる一部の食べ物を除き、食品サンプルを使うことで、コストを節約し撮影もスムーズになりました。 ロージー・グッドウィン食品サンプルを作るにあたり、料理が均一に見えないように工夫しました。たとえば、テーブルに並ぶ料理は一部を自由に動かせるようにし、ケーキの上の雪だるまの表情も少しずつ変えています。また、七面鳥のパリパリ感や肉のしっとり感の表現を追求し、本物の料理のような仕上がりにこだわりました。 ピエール・ボハナポテトは揚げたてのホクホク感を目指しました。とはいえ、日本のレストランのショーウィンドウに並ぶ食品サンプルは本当に素晴らしいですね。
ロージー・グッドウィン今回のごちそうは、通常のサイズよりかなり大きく、分量も多く作られています。大広間やテーブルのスケール感とバランスをとる必要もありましたが、ホグワーツの魔法の世界を感じてもらえるのではないでしょうか。何より、ハリーにとっては、ホグワーツで迎える初めてのクリスマスです。これまでダーズリー家での生活では体験できなかった豪華な食卓に目を見張ったことでしょう。七面鳥やプディング、ケーキの大きさがそれを表現しています。全ての要素に込められたアイデアと工夫が、ハリー・ポッターの独特の世界観を作り上げているのです。それを再現するのはとても素晴らしいことです。 (4)クリスマスクラッカーとギフトボックスの中身は!?
ダイニングテーブルには、寮ごとに色分けされた小さなギフトボックスやクリスマスクラッカーも並べられている。ギフトボックスの形には5つのバリエーションがあり、計140個。クリスマスクラッカーは160個作られた。 ロージー・グッドウィン映画の撮影用にクラッカーを作った際には、中に小さなおもちゃを入れていました。振るとカサカサと音がしました。これはささやかなディテールですが、心に響く何かを感じさせると思います。同時に、私たちの仕事の一部は、細部をすべて提示することではなく、「この中には何が入っているのだろう?」と想像してもらう余地を残すことだとも考えています。すべてをリアルに見せるのではなく、想像をかきたてる要素を提示し、観る人に思いを巡らせてもらう機会を提供することも大切です。
ピエール・ボハナ僕は、ギフトボックスにはハニーデュークスのお菓子が入っているんじゃないかと思います。クリスマスクラッカーは、開けた途端、ドラゴンが飛び出してくるかもしれませんよ(笑)。 ■ホグワーツ城の模型
【基本情報】
ホグワーツの模型は、『ハリー・ポッターと賢者の石』のため、86人の職人によって、模型の初版が作られた。魔法学校をよりリアルに表現するため、職人たちの手によって、細かいパーツの一つひとつにいたるまですべて手作りされた。ロケ地となったアニック城やダラム大聖堂の中庭と建物のミニチュアも作られた。この精巧な模型をカメラで撮影した映像に、デジタルによる視覚効果が加わり、ホグワーツ魔法魔術学校の景観はリアルで印象深いものとなった。ホグワーツのジオラマはグレンコーやシール湖など、スコットランドのハイランド地方をモデルにしている。 (5)雪に覆われたホグワーツ城
ハリー・ポッターの映画でも一際存在感のある「ホグワーツ城」を24分の1サイズで表現した模型は、美術チームの最高傑作。「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」では、城全体が粉雪に覆われ、白一色のホグワーツ城を鑑賞できる。降り積もった粉雪は、紙で作られており、映画撮影当時と同じように職人たちの手作業で設置された。
昼から夜へ、そして夜明けを迎える24時間が再現されているが、朝焼けに照らされる瞬間がとりわけ美しい。陽の光(ライト)が当ったときに、本物の雪が輝くような質感や、雪の積もり方まで細部にこだわって再現されている。
模型の内部には電飾用の光ファイバーが2500本あまり取り付けられており、ライトやたいまつの明かりを表現。生徒たちが夜の廊下を歩く様子も表現されており、つい見入ってしまうことだろう。 (6)雪だるまを探そう!
ホグワーツ城の模型の中に、今回の特別企画「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」オリジナルの雪だるまが隠されている。見つからない時は、遠慮せず、スタジオツアーのインタラクターに聞いてみよう。
(7)映画「ハリー・ポッター」のクリスマス・シーンにインスパイアされたフードメニュー
「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」を記念して、映画「ハリー・ポッター」のクリスマス・シーンにインスパイアされたスペシャルメニューを期間限定で販売中。『ハリー・ポッターと賢者の石』で、ハリーとロンがクリスマスプレゼントとして受け取ったロンのお母さんによる手編みのセーターを再現したアイシングクッキーやブッシュ・ド・ノエルなど、クリスマスらしい色鮮やかなスイーツやセイボリーが楽しめる「クリスマスアフタヌーンティー」(7200円)。 「クリスマスアフタヌーンティー」1段目は「ハリーとロンのセータークッキー」に注目
2段目にはハリーの大好物「糖蜜パイ」、「ブッシュ・ド・ノエル」、小さなパフェ「林檎のシブースト」
3段目には「クラムチャウダー」「モリーのサンドウィッチセレクション」
映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』のワンシーン、ウィーズリー家の「隠れ穴」で登場したクリスマスケーキをイメージした「隠れ穴のクリスマスケーキ」(2200円)は、劇中でケーキの上を楽しそうにスケートしていたスノーマンがのっている。以上は、ツアーの中間地点にある「バックロットカフェ」の期間限定メニュー。 ウィーズリー家の「隠れ穴」で登場したクリスマスケーキをイメージした「隠れ穴のクリスマスケーキ」
ハニーデュークスで販売されるお菓子を組み合わせ、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』に登場したネビルの赤いキャンディーがトッピングされた「ハニーデュークスアソートボックス」(900円)はエントランスロビーに隣接する「フロッグカフェ」で販売。 「ハニーデュークスアソートボックス」
スタジオツアー東京、初めてのクリスマス・イベント「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」
Warner Bros. Studio Tour Tokyo - The Making of Harry Potter.
ワーナー ブラザース スタジオツアー東京-メイキング・オブ・ハリー・ポッター
撮影:蔦野裕
sponsored by ワーナー ブラザース スタジオツアー東京