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【野村不動産ホールディングス】空前絶後3,000人のお引越し大作戦、“昭和”なオフィスからおしゃれフリーアドレスへ…おじさんたちはどう変わる?

  • 新宿野村ビル(外観)

    新宿野村ビル(外観)

 昭和のオフィスといえば、“島型”にデスクが配置され、課長やら部長やらが鎮座し、平社員がその周りを固めていた。だが、時は令和。ベンチャーや外資系などでは、フリーアドレスのおしゃれなオフィスが続々と登場。憧れを抱く若手がいる一方で、「フリーアドレスなんて邪道!」「部下の顔が見えない…」などと疑念を抱くおじさんたちも多いのでは。だが、環境が変われば意識も変わる。50年近い歴史のある新宿本社からの移転を予定し、全社員約3,000人を総動員した“お試し”引っ越しを実施中だという、野村不動産ホールディングスに、リアルを聞いた。

昔ながらの新宿ビルの社員3,000人、今どきのオフィスに対応できる?

  • 新宿オフィス、イスはおしゃれだが…“島型”のよくある配置

    新宿オフィス、イスはおしゃれだが…“島型”のよくある配置

 新宿副都心の超高層ビル群の象徴のひとつとして、1978年の竣工以来、その名が広く知られている新宿野村ビル。そこに本拠地を置く野村不動産グループが、移転を考えたのは5年前のことだった。

 当時、多くの社員を抱える同社は23フロアに散り散りになっており、グループの一体感としては問題あり。歴史ある会社だけに、フロア内は基本、昭和風の“島型”だった。「島型にメリットがないわけではないですが、やはり非効率な部分はありました。」と明かすのは、移転事業を任されたプロジェクトチーム・グループオフィス戦略室長の春日倫さんだ。

 そんな課題を解決すべく移転先に選んだのは、同グループ過去最大のプロジェクト・芝浦事業「BLUE FRONT SHIBAURA」に建設される、ツインタワーのワンフロア。移転は2025年。広大なスペースを生かし、フリーアドレス(グループアドレス※)で多様な働き方ができるオフィスを目指す…!ことにした。
※グループアドレス:部署やチームごとに大まかなエリアを決めた上で、自分の席を自由に選択する働き方

 とはいえ、長年、昔ながらの新宿ビルで働いてきた社員約3,000人。新宿→芝浦への移転は通勤時間や経路も変わってしまうし、そもそも“島型”→フリーアドレスのおしゃれ空間への転向はうまくいくのか。グループ内には様々な職種があり、社員も若手から管理職の年配層まで多様。混乱必至だが、もちろんそれによって業績を落とすわけにはいかない。

 そこで考えたのが、「トライアルオフィス」だ。移転後と同じ芝浦地区に仮のオフィスを設え、本番前に“お試し”引っ越しを行い、その後の働き方を模索してみるというもの。“お試し”引っ越しを行うのは、なんと社員約3,000人全員。部署単位で順次入れ替えながら各々2ヵ月をトライアルオフィスで過ごし、それを2巡。その間は拠点が芝浦と新宿の2つになるという、一大プロジェクトが始まった。

“お試し”引っ越しのために社長直下のチームを結成、「正直、重いなあ…と(笑)」

  • グループオフィス戦略室、(左から)林田さん、春日さん、橋本さん

    グループオフィス戦略室、(左から)林田さん、春日さん、橋本さん

 この“お試し”引っ越し、もとい「トライアルオフィス」を含む新本社移転プロジェクトのため、様々な部署から人員が集められたプロジェクトチーム“グループオフィス戦略室”を結成。社長直下のチームだというが、急きょ抜擢された推進課課長・橋本葉子さんは、「一生に一度の事業に呼ばれたのは嬉しかったですが、これは大変そうだ。やりきることができるのか?という不安もありました」と当時の心境を語る。

 同チームの若手社員・林田晃典さんは、「不安もあったけれど、おしゃれなオフィスのキラキラ感は羨ましかった」とのこと。前述の室長・春日さんは「正直、重いなあ…と(笑)」と本音を明かしながらも、「現状と移転の間にひとつプロセスを設け、新本社に近い立地・環境・働き方を体感することで、移転時の混乱緩和と役職員の移転に対する意識醸成を図りたい。また、移転時の課題を事前に抽出・解決したいと考えました」と、決意を新たにしたそうだ。

 とはいえ、約半世紀ぶりの本社移転。まったくノウハウがないなか手探りの状態でのスタートであり、未知の試みである。社内で反対はなかったものの、いろいろ不満も飛び出した。

 「日頃の仕事で手一杯な中、新宿と芝浦の2拠点になる不便さもあり、しぶしぶ…という社員も多くて。説明会のほか、本部毎に任命されたアンバサダーを通じてステップを踏んで伝え、賛同を得られるよう苦心しました。何にトライして何を新本社に生かすのか、その設計にも非常に苦慮しました」(橋本さん)

単にカッコイイだけではダメらしい…、管理職や年配の社員からはフリーアドレスへの不満も

  • 最初のC・D区画、「攻めた」洗練さだが

    最初のC・D区画、「攻めた」洗練さだが

  • 「丸いテーブル」は使いづらいなど、意外な盲点がわかった

    「丸いテーブル」は使いづらいなど、意外な盲点がわかった

 トライアルオフィスは、2022年11月から翌年3月末までを1巡目、今年6月から来年3月までを2巡目とし、全社員が各2ヵ月、2回にわたって参加。最初に様々なワークスペースを用意したC・D区画で検証され、社員からの意見を次のA・B区画に反映。全社員にもう1度トライアルしてもらい、その意見を新本社の設計に反映するという構想。もちろん、どちらもおしゃれなフリーアドレス(グループアドレス)だ。

 実際、最初のC・D区画は「攻めた」というほど洗練された空間になっていた。ところが、トライアルした社員からは「ラボのような無機質なエリアよりも、アースカラーのある少し落ち着いた雰囲気のほうがいい」「椅子はおしゃれだけど長時間座ると体に負担がかかる」「丸いテーブルはミーティングしにくい」「窓際は景色はいいがまぶしくて仕事にならない」「後ろを通られると気が散る、集中できるスペースがほしい」などの指摘が続々。どうも、単にカッコイイだけでは働きやすいわけでもないということがわかった。

 そして、もっとも物議を醸したのは、やはりフリーアドレスについてだった。

 「管理職や年配の社員からは、『今までは目の前に部下がいたので、状態が見られてすぐ話もできたのに、それができない』と、今までとれていたコミュニケーションがとりづらくなることへの不満が非常に多かったです。一方、若手社員からは『上司に報告したり、同僚にちょっと相談したい時に近くにいない』ことが課題として上がりました」(橋本さん)
  • C・D区画での要望を生かした次のA・B区画

    C・D区画での要望を生かした次のA・B区画

  • 家具や社員が集まる場所にもこだわり

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