ORICON NEWS
【ドラマ×マンガ】ドロドロ系なぜ大流行? 托卵、復讐、女性風俗…電子コミックの影響をコミックシーモアに聞いた
“痴情のもつれ”だけじゃない、多様化するドロドロ系ドラマ
このようなドロドロ系の流れは少し前から片鱗があり、篠田麻里子の濡れ場が話題になった『離婚しない男』(テレビ朝日系)、女性風俗がテーマの『買われた男』(テレビ大阪)も話題に。さらに今秋も、高校生の不倫がテーマの『3年C組は不倫してます。』(日本テレビ系)、托卵を描く『わたしの宝物』(フジ系)、復讐モノ『愛人転生―サレ妻は死んだあとに復讐する』(MBS)と、視聴者の間でも議論が高まりそうなドロドロ系ドラマが続いている。
そもそも不倫などの愛憎劇が多かった枠と言えば、1960年代にスタートしたTBSとフジテレビの昼帯。男をたぶらかす妖婦でありながら、初恋の人を思い続ける未亡人を描いた菊池寛原作の『真珠夫人』(TBS系/1974年)が社会現象を巻き起こした。昼ドラ以外でも、『黒の斜面』(日テレ系/1971年)、山田太一原作・脚本の『岸辺のアルバム』(TBS系/1977年)。さらに1983年『金曜日の妻たちへ』(TBS系)は、「金曜の夜は妻が電話に出ない」と言われるほどのブームとなった。
1997年には『青い鳥』や『不機嫌な果実』(共にTBS系)、渡辺淳一原作『失楽園』(日テレ系)などやや昇華された形となったが、2004年『牡丹と薔薇』(フジ系)では原点回帰的な「このさかりのついたメス猫!」「アバズレ女」など数多くの名(迷)言が飛び交うドロッドロ系がネタ化もしつつ大きな話題に。2014年『昼顔』(フジ系)も大ヒットし、2016年頃には『せいせいするほど愛してる』(TBS系)、『不機嫌な果実』(テレ朝系)、コント的ではあるが『黒い十人の女』(日テレ系)、『僕のヤバい妻』(フジ系)、前田敦子主演の『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)も制作されるなど、一定の周期を経て再燃している印象がある。
だが昨今の作品は、痴情のもつれだけでなく、さらにその先の托卵や復讐、女性風俗や依存症など、これまでにないパターンが登場。ドロドロ系も多様化、さらに増幅していると言っていい。
■ショートドラマ化され話題!コミック『満タサレズ、止メラレズ』(外部サイト)を読む
なぜこんなに多い? TVerやVOD、電子コミックの豊富なドロドロ作品群も影響
「まずドロドロ系はSNSでネタにされやすく、情報が出た当初こそ批判コメントが大量投稿されてXトレンドに入ったりしますが、そうした内容が話題になることで興味を持ってしまうのが人情(笑)。逆に宣伝になり、オンエアのみならずTVerの再生回数にも直結する。再生数がテレビ視聴率とは別の指標として確立されたことも大きいと思いますね」(衣輪氏)
たしかに、最近では「TVer総再生数〇万回突破!」というニュースをよく目にする。「SNSを通じて批判的に感じていたが、結局TVerで観てハマってしまう」というのは、ありがちな流れだろう。人は結局、なんだかんだドロドロや人間の深淵を深くえぐるような作品に惹かれてしまう。自分では踏み込まなくても、ドラマで疑似体験できるのというのが、ドロドロ系作品が好まれる理由の一つだと語る。
「コンプラが厳しい昨今ですが、ドラマは“フィクション”であるだけにまだ余白がある。そこへ、NetflixなどVOD制作ドラマや韓国ドラマの大ヒットで、こうしたドロドロ・過激な作品の需要が可視化された。もはや当たり障りない内容やテーマでは物足りなくなったのでしょう。制作もビジネスですから、数字を求めてそういったものを作るようになります。
そして、今それらの題材を多く輩出しているのが、電子コミックです。マンガ原作ドラマはこれまでも数多く制作されていますが、とくに昨今はドロドロ系をマンガから取り入れている感が強い。前述した最近のドラマでも、『3年C組は不倫してます。』『わたしの宝物』以外はマンガ原作です」(衣輪氏)
「復讐」や「サレ妻」コミックは10年で売上155倍に、スキマ読みやWEB広告に親和性
「ひとつは、やはり電子コミックの普及。通勤通学などのスキマ時間にスマホでマンガを読むユーザーが増えたことで、よりわかりやすくストレートな展開の作風が読まれやすくなった印象があります。また、マンガ読者世代がオトナになった、というのも要因の一つかと。『週刊少年ジャンプ』がギネス記録となる最高発行部数653万部を記録した1995年付近には業界が非常に盛り上がり、またコロナ禍で電子コミックを読む人が拡大しました。そういった環境の中で、電子コミックをよく読む世代が、実際に結婚して家族を持つ年齢に。ドロドロ系で描かれるような離婚や不倫といったトラブルも対岸の火事ではなくなったことで、こうしたジャンルの作品をより手に取りやすくなったとも考えています」(コミックシーモア担当者)
一方で、これも現在ならではかもしれないが、「WEB上でのマンガ広告の活発化」も起因しているとみられる。「感情・欲望を揺さぶる作品はWEB広告と非常に親和性が高く、そのため出版社様や作家様の創作意欲が高まり作品量も増えたのでは」と推測している。