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水曜日のカンパネラ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』との共通点は? 詩羽の加入からの変化と“次の3年”

詩羽(C)oricon ME(撮影/田中達晃)

詩羽(C)oricon ME(撮影/田中達晃)

 音楽ユニット・水曜日のカンパネラの新曲「願いはぎょうさん」が、12月13日(金)公開の映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の主題歌に決定した。2021年9月に詩羽が2代目の主演/歌唱担当となって初の映画主題歌となる本作は、音楽担当のケンモチヒデフミが映画のために書き下ろし。キャッチーかつ一度聴いたら耳から離れない中毒性のあるメロディは、まさに映画に登場する"ふしぎな駄菓子"のようだ。水曜日のカンパネラの詩羽と、ケンモチヒデフミに同曲に込める思いを聞いた。

ポップなメロディだけど、“ふしぎな駄菓子”とリンクしたゾクッとする要素も

  • 詩羽(C)oricon ME(撮影/田中達晃)

    詩羽(C)oricon ME(撮影/田中達晃)

──映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』は全世界で読まれている児童書が原作です。主題歌のお話が来た時はどう思われましたか?

詩羽 小中学生の子たちが楽しんでいる原作ですが、実写映画になると親御さんも一緒に映画館に運んでくれるのかなと思います。そういう作品を通して、水曜日のカンパネラを広く知っていただく機会をいただけたのは、とてもうれしかったです。

ケンモチ 知り合いの姪っ子さんも原作の大ファンらしくて、たしかに子どもたちに大人気の作品ではあるんですが、大人が読むとハッとさせられるところもあって。水曜日のカンパネラも特に詩羽が入ってからは、小さいお子さんから大人まで広い世代の方々に支えられているなと感じます。そういう意味でも"今の水曜日のカンパネラらしさ"をそのまま音楽にすれば、映画にも寄り添うことができるんじゃないかなという気がしていました。

──主題歌「願いはぎょうさん」は童謡のような心踊る響きもあり、だけど歌詞にはちょっとゾクッとする要素も。制作にあたって、どのようなことを意識しましたか?

ケンモチ 駄菓子って面白い存在だと思うんですよね。一見、ポップで可愛らしいけれど、何が入っているかよくわからない感じがするというか。それがこの作品に登場する、望みを叶えてくれるけど、食べ方を間違えると不幸を招く"ふしぎな駄菓子"にもリンクするところだと思うんですけど。この曲もパッと聴きは楽しいけど、裏に何か隠されているかもしれないよ、注意してね、みたいなことが伝わるといいなとイメージしながら書きました。

詩羽 たしかに水曜日のカンパネラとしては、久しぶりに「めっちゃいいこと歌ってるな」と思いましたね(笑)。メロディはポップなのに言葉一つ一つは、わりと深い意味があるという、そんなどこか矛盾したところも面白くて。

ケンモチ 子どもの頃は普通に聴いていたけど、大人になって聴いてみると「こんなこと歌ってたんだ」みたいな発見があるというのも、実は目指していたところです。

詩羽 そういう意味では入り口は広いほうがいいなと思ったので、歌い方としては全体的に明るい声質を意識しました。受け取り方によっては、重いことを歌っているんですが、映画を見終わってポジティブな気持ちを持ち帰ってもらえたら、という願いを込めています。

水カンの"主演/歌唱担当"の詩羽、ユニット外での活躍をケンモチヒデフミはどう見てる?

  • 詩羽(C)oricon ME(撮影/田中達晃)

    詩羽(C)oricon ME(撮影/田中達晃)

 近年は俳優や、ソロアーティストとしても活躍する詩羽が加入して3年。「エジソン」をはじめとするバイラルヒットで、ファンは国内外の幅広い世代に広がっている。さらなるスケール感を増す水カンが見据える未来とは―?

──近年、水曜日のカンパネラはまた一歩大きなステージに前進した印象があります。今年3月の日本武道館単独ライブはケンモチさんにとっては2度目でしたが、前回との違いをどう感じましたか?

ケンモチ 1度目の時はいっぱいいっぱいだったんですが、今回はライブを披露する責任は感じつつも、お客さんの1人みたいに詩羽のパフォーマンスを楽しんでいた感覚がありました。たぶん僕自身、多少ゆとりができたんだと思います。お客さんたちがこんなに暖かく見守ってくれているんだということに気づけたのが、そういった居心地の良さに繋がっていたのかなと思いますね。

──詩羽さんにとっては初の日本武道館でしたが、いかがでしたか?

詩羽 私にとってはどのライブも大切で、観に来てくれた人たちを絶対に後悔させないように全力以上のものを出し切る、自分も全力で楽しむという思いでやっています。なので、武道館だから武道館モードでやるぞ! という気負いはなかったんですが、結果、想像していた以上に楽しくて、思い描いていたことがすべて実現できたんです。それはもちろん、ファンのみんなや、いろんな方の力を借りて叶ったことだったんですが、この愛おしい時間がこれからも続くといいなと思うきっかけの1日になりました。

──今年、詩羽さんは自身で作詞作曲するソロアーティストとしての活動もスタートさせました。水曜日のカンパネラの"外"の詩羽さんを、ケンモチさんはどうご覧になりますか?

ケンモチ水曜日のカンパネラに関しては、僕の音楽に合わせて演じてくれているところも多分にあると思っています。そういう意味では、僕も詩羽のソロライブは客席で見たんですが、自分のやりたいこと、歌いたいことが力強くフォーカスされていて。自分が関わっていないからこそ、より純粋な詩羽の魅力が見えたみたいなところがありましたね。

──詩羽さんは水曜日のカンパネラでは"演じている"という意識はあるのでしょうか。

詩羽 ユニットの"主演/歌唱担当"なので、それはあります。ただどっちのほうが大切とかではなくて、私としては歌う機会が増えてうれしいなというのがソロ活動をやっていて感じていることです。また水曜日のカンパネラとソロとでは、ライブを見ているお客さんの顔つきがちょっと違うのも、やっていて意味があるなと思っていて。私は水曜日のカンパネラのお客さんたちが幸せそうに笑っているのを見るのが一番好きなので、そのために主演/歌唱担当を全力でやりたいなという気持ちでいますね。

詩羽が加入して3年、水曜日のカンパネラが見据える“次のステージ”は?

  • 詩羽(C)oricon ME(撮影/田中達晃)

    詩羽(C)oricon ME(撮影/田中達晃)

──今年の日本武道館のライブには詩羽さんがMCで「チビちゃんから、おじおじまで」と呼びかけるほど幅広い層が集いました。また近年は海外でも多数ライブを行っています。スケール感を増している水曜日のカンパネラの"次のステージ"をどのように見据えていますか?

ケンモチ そもそも水曜日のカンパネラを始めた頃はカウンターカルチャー的な意識がけっこうあって、いかに王道からそれていくか、普通じゃない表現をやっていくかみたいなトライをしていたんです。ただ、やっぱりちゃんと伝わることも大切だなと考えるようになって。詩羽の加入によって、そういう景色も見えてきたかなと感じたのがここ3年のことでした。

──やはり詩羽さんの存在は大きかったんでしょうか。

ケンモチ 現体制においてはそうですね。それこそ"演じる"じゃないですけど、彼女の俳優活動を見ていても自分というものをしっかり持ちつつ、作品の世界観に寄り添えるのは、やっぱり天性の力だなと感心するばかりです。23歳でそれができるって、とてつもないことですよね。

詩羽 それ、年上の方たちみんな言うんですよ。「自分が23歳の頃は……」という前置きが必ず入るのは、なんでなのかなっていう(笑)。

ケンモチ おじさんムーブかましちゃいましたね(笑)。ただそれができる詩羽なので、また自分の中の"ひねくれ"が頭をもたげてくるんです。わりと昔から聴いてくれていた人が、SNSで「水曜日のカンパネラってまともな曲も書けるんだ」とかポストしているのを見ると、"まとも"だけで終わっててもいいのかなという疑問も湧いてきて。それこそ"駄菓子"って、親としては積極的に勧めたくないものだけど、子どもにとっては魅惑のアイテムじゃないですか。そういう全面的に良しとされてないものこそに、ワクワクやドキドキってあると思っていて。

──音楽においても、そうした"駄菓子性"のようなものを大切にしていきたいと。

ケンモチ そうですね。王道ではあってももっと実験的な要素を入れ込んだりとか、次の3年を見据える上で、さらに音楽的に突き詰めるタイミングに来ているのかなと感じています。

──そうしたケンモチさんの駄菓子的な音楽志向について、詩羽さんはいかがですか?

詩羽 私は大人ですけど、駄菓子をめちゃ食べる大人なんです(笑)。ただ、子どもたちだけでお小遣いを握りしめて、駄菓子屋に行く文化ってどんどん廃れていて。そういうドキドキする体験ってすごく大事だし、これ以上なくならないでほしいな、というのが自分の中の子ども心ですね。そういう意味でも、駄菓子的な要素のある「願いはぎょうさん」という曲で、駄菓子をテーマにした『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の主題歌に関われたのは、水曜日のカンパネラの活動でもうれしかったことの1つです。

──詩羽さんは次の3年をどのように見据えていますか?

詩羽 私自身が何をやりたいというのは実はあまりなくて、むしろ自分の周りにいる人たち。ファンだったり、友だちだったり、そういうみんなが幸せで楽しい生活を送れるような仕事をしていきたいと思っています。それはやっぱり水曜日のカンパネラを通して、こんなにも人から愛されているんだ、ということを思い知った3年間だったから。もらったものをもっと還元していけるような、次の3年にしたいなと思っています。

取材・文/児玉澄子 撮影/田中達晃(パッシュ)

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