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TikTokでも注目の“失恋の女王”さとうもか、30歳のいま伝えたいことは?
「melt bitter」に共感の声続々、3年ぶりのアルバムで感じた変化
さとうもか たくさんのリスナーの方につないでもらった曲だなって思っています。「私もこういう(恋愛の)状況なので、すごく共感しました」というメッセージをもらったり、ライブでお客さんと話すことも増えました。「melt bitter」を作ったときは「自分のことを書き過ぎた。誰もわからんかもしれん」と思ったんですけど(笑)、そういう曲が伝わったのはうれしいし、「同じような気持ちの人がいっぱいいるんだな」って。もともと私が曲を作りはじめたきっかけも、恋愛とか恋心を歌いたいと思ったからなんですよ。
――川谷絵音さん、蔦谷好位置さんなどトップアーティストからも高く評価されました。
さとうもか うれしすぎました(笑)。尊敬する方に褒めてもらえると「これでいいんだ」と思えますので。蔦谷さんが「ドとレの間の音程も使って歌ってる」みたいなことを言ってくださったんですけど、自分では全然意識してなかったから「そうなんだ!」って思ったり(笑)。
――NewJeansの楽曲の日本語詞や、アーティストへの楽曲提供など活動の幅を広げるなか、3年ぶりのニューアルバム『ERA』がリリースされました。
さとうもか 前作『WOOLLY』以降、思ったように曲が書けない時期があって。そのなかで「1回初心に戻ろう」「本当にやりたいことに向き合おう」という気持ちで取り掛かったのが『ERA』ですね。あとは過去のデモ曲を聴き直して、そのなかから「いいな」と思って曲をもう1回作り直して。曲が揃ってみると“時代が変わった”とか、変化の瞬間を歌った曲が多かったんですよね。自分自身も29歳から30歳になるタイミングだったし、これがキーワードかもと思って。この10年で自分自身も変わったし、10年前には当たり前だったことが、今はそうじゃなかったり。恋愛に対する考え方も変わったし、歌詞の幅も広がったと思います。
リアルに歌う生活や友だちとの関係、自らの気持ちの変化も反映
さとうもか フランスっぽい雰囲気の曲にしたくて、ピアノを弾きながら〈電気、ガス、年金に家賃にケータイ〉って歌いながら作っていきました。テーマ的にちょっと重くなりそうだったから、あえてスキップしながら聴けそうなメロディを合わせてみようと。すごく忙しいと、休みの日に遊びにいくのもめんどくさかったりするじゃないですか。そのことで自己嫌悪になったり、周囲の人に強く当たってしまったり…。「そこはもうちょっとがんばって、楽しいことをしてみよう!」という気持ちも込めています。
――「チェーン・オブ・ユース」はダンサブルなサウンドが印象的。友だちとの関係の変化を描いた歌詞も20代後半のリアルですね。
さとうもか サウンドのイメージはブルーノ・マーズです! 5年くらい前からあった曲なんですけど、半分は今の自分が作ったので、そのぶん歌詞の主人公も成長していますね(笑)。学生時代の友だちをイメージして書いたんですけど、卒業すると疎遠になったり、久しぶりに会って「前と感覚が違うな。寂しいな」と感じたり。つまり別々のやり方で大人になったってことなんですけど、だんだん「それでよかったんだな」と思うようになりました。
――<あの子の車の香り変わってた><あの子が私にくれたCD探してたら>という歌詞もありますが、ドライブしながらCDを聴いた思い出も?
さとうもか ありますね。音楽をやっている友だちも多かったから、ライブでCDをゲットして、帰りの車のなかで聴いたりしました。学生の頃はCDを聴くことが多かったんですけど、だんだんサブスクが主流になって、ケータイのコードをつないで聴くようになりました。ただ私はCD世代なので、「デビューしたら自分のCDを床にいっぱい並べたい」って思っていたんですよ(笑)。『ERA』をリリースするときもどうしてもCDを作りたくて、スタッフの方にお願いしました。(※フィジカル盤はTシャツとのハンドルセットでの販売)
タイトル曲を作って得た気づき、「自分にできるのは、自分の手の中にあるものだけ」
さとうもか 地元への捉え方もこの10年でめっちゃ変わりました。岡山に住んでいた頃は地元の良さを考えることなんてなかったし、「県外に行ってみたい」という気持ちも沸いていて。でも振り返ってみると「やっぱり岡山が好きだったんだな」って気づいたんですよね。「Peach Perfect」は岡山を擬人化して書いてみたんですが、好きなところがいっぱい出てきて。家族や友だちから「聴いたよ」って連絡が来たのもうれしかったです。
――タイトル曲「ERA」については?
さとうもか アルバムのいちばん最後に出来た曲で、“あとがき”みたいな曲になったし、この10年間をまとめるような曲でもあるのかなって思っています。いろいろがんばったり、挑戦もしてきましたけど、「自分にできるのは、自分の手の中にあるものだけなんだな」と思って。もし立ち止まったとしても、手の中にあるものはなくならない。とにかく自分がやれること、やりたいことを形にするのが大事だなって、このアルバムを作りながら思っていました。