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『ゴールデンカムイ』EDテーマで注目、函館出身の“名無し之太郎”「目指すは“第2のGLAY”」
ACIDMANに [Alexandros]、ストレイテナーらに交じった“名無し太郎”って?
中野 うれしいし光栄な気持ちであることは間違いないのですが、あまりの出来事に未だ現実味がありません。自分たちが好きでよく聴いていたバンドさんの中に、名無し之太郎という文字を見つけて「ああ、入ったんだな」と、どこか一般のファンのような感覚です。
二瓶 今はまだ僕たちのことを知らない人がほとんどで、文字通り「誰だ?」と思われていると思います。逆にこのインパクトで注目していただけたことで、皆さんがどんな反応を返してくれるのか、今の状況がどう変わって行くのかすごく楽しみです。
――そもそもどうして“名無し之太郎”という名前に?
中野 私の高校時代のあだ名が“太郎”で、当時流行っていたネット掲示板2チャンネルでよく使われていた“名無し”を足して、高校生のノリで付けました(笑)。当時は5人組でギターがいたのですが、その人は北海道に残り、東京の大学に進学した我々4人でギターレスのまま活動を続けているという形です。
――「毒矢」の制作にあたっては、原作マンガを読んだり、アニメや映画を観て取り組まれたそうですが、『ゴールデンカムイ』という作品について、感じた魅力や面白さを教えてください。
高橋 明治・大正時代の東京を舞台にした作品は多々ありますけど、その時代の北海道を描いた作品は他にありません。東京や他の地域とは異なる独自の発展をした、アイヌ文化を残した世界で繰り広げられる、実際にあり得たかもしれないストーリー。リアルとフィクションが絶妙なバランスで成り立っていて、そんなところに魅力や面白さを感じます。
林 私たちも北海道出身なので、アイヌの文化について触れる機会は本州の方より多いのですが、そんな私たちでも驚くような文化が前面に押し出されていて、継承する一助にもなっていると思いました。
『ゴールデンカムイ』アイヌの少女の感情をなぞる曲、「原作ファンが頷いてくれるものになれば」
二瓶 基本的に詞先で林が作詞をし、それを元に僕が作曲をしてデモを打ち込みます。ただベースとピアノはあくまでもガイドというイメージで、高橋と中野それぞれの感性でイメージを広げて演奏してもらっています。
――歌詞はアイヌの娘であるアシリパさんをイメージして書かれたそうですね。
林 まず「毒矢」という曲名を決めてから作詞をしました。アシリパさんが弓矢を使うこと、熊が出るシーンが第5話の見どころでもあることなど考慮し、いろいろな候補を出して、ネットで検索しても曲名がかぶらないものを選んで「毒矢」と。歌詞はアシリパさんをモチーフに、原作を読んで私が感じたことも重ねながら書いて行きました。きっとアシリパさんは、アイヌ文化を自分なりに解釈して後世に伝えながら、新たな時代を切り拓いて行くのだろうと思って、冒頭を〈切り開け翳りのない眼で見据える先〉というフレーズで始めました。第5話のエンディングテーマでもありますが、北海道の力強さや『ゴールデンカムイ』そのものも意識した歌詞になっています。
――サビのメロディがどんどん高くなるところは、作品の熱量の高まりとも重なりました。
林 メロディは3回転調していて、転調のたびにキーがどんどん高くなります。私は地声が低いので、高音は苦労しました。
二瓶 音程の起伏が激しいメロディは、アシリパさんの感情の浮き沈みを表現しています。林が書いた歌詞が何にフォーカスしているのかわかりやすかったので、歌詞の感情の流れに沿うように、僕も作詞をするかのように作曲をしました。
――感情に寄り添ってはいますが、アシリパさんの主観というわけではないですよね。
林 はい。アシリパさんを勝手に俯瞰して、願いを託している人みたいな視点で歌っています。〈たとえ朽ち果てようとも その心は廻り続ける〉というフレーズは、アイヌ文化の考え方を土台に、途中で脱落していく登場人物の存在が残った人たちの支えになっているという意味も込めて。原作ファンの方が歌詞を読んで、「そうだよね」って頷いてくれるものになっていたらうれしいです。
サウンド面ではアイヌ音楽を意識、北海道の威風堂々とした雄大さを表現
二瓶 実際にアイヌ音楽を聴いてから曲を作ったのですが、〈タッタウタタ タッタウタタ〉というリズムがアイヌ音楽の特徴で、民族っぽいところはまさにそこですね。
――中野さんと高橋さんは、楽曲を聴いてどんな印象を抱きましたか? ベースとピアノで意識したことも教えてください。
中野 北海道の雄大で威風堂々とした感じが、曲を聴いてすごく伝わってきました。それでベースもチマチマ弾くのではなく、堂々としたフレージングを心がけました。Dメロの〈滲んでいく 染められていく〉のところは、わざとコードからはずれた音で弾いて、聴いた人を驚かせられるような、自分ならではの演奏を意識しました。
高橋 曲を聴いて、北海道の広い大地に雪が降り積もっている様子が目に浮かびました。キーボードも堂々としたほうが曲のイメージに合うと思って、ドッシリと構えているようなイメージでアプローチしました。
育ててくれた地元・函館に恩返し、夢は「北海道を代表するバンドになること」
二瓶 「風化」は高校生の時に舞踏会のイメージで作ったものの、当時は演奏技術が追いつかず温めていた曲。だからタイアップで作ったのはまだ「毒矢」だけなのですが、作品の雰囲気を崩さないことは大前提ですね。
林 「毒矢」は原作と合っていて、聴いた人が「ここはこうなんじゃないか」と考察したり、伏線を見つけてもらえるような歌詞になればいいなと思って書きました。
高橋 「風化」に関しては、「アニソンっぽくなくていい」というコメントを、たくさんいただいています。アニソンと言えばこうだというステレオタイプに当てはまらない、そこに気づいて刺さってくれたことは、すごくうれしいです。
林 「カッコいい」とか「表現力がある」といったコメントが多くてうれしいです。男性だと思われることも多いのですが、そこはあまり気にしていません。アニメを観た人、曲を聴いた人それぞれの受け取り方で、いかようにも解釈できる作詞をしているので、自由に思っていただければ。
――では最後に、それぞれ目標を教えてください。
中野 今は作詞・作曲を2人に任せてしまっているのですが、自分も作曲をしたいと思っています。演奏面では、ベースだけどメロディックな演奏もできるというところを、どんどん突き詰めていきたいですね。
林 私個人としては、ボーカルだけじゃなく、メンバー全員の名前を認識してもらえるような、4人それぞれがキャラ立ちしたバンドになっていけたらと思っています。その上で育ててくれた地元・函館に恩返しする気持ちで、地元にも貢献できるような活動をしていきたいです。
高橋 やっぱり地元で愛されるバンドになりたいですね。GLAYさんの「Winter,again」は函館でしか生まれない楽曲だし、函館を代表している存在感がすごくカッコ良くて憧れます。例えばOfficial髭男dismさんの地元・島根県では、JR米子駅の発着メロディに「Pretender」が使用されているそうで、それくらいのレベルで、地元・函館の日常に楽曲が溶け込んでいるようなバンドになりたいです。
二瓶 先日、地元・函館で初めてワンマンライブをやったのですが、すごく楽しかったです。この楽しさのまま規模を大きくして、同郷の大先輩であるGLAYさんが“緑の島”でライブをやったみたいに、地元・函館のでっかい会場を埋められるようになって、北海道を代表するバンドになりたいです。今は“第2のGLAYです”と冗談交じりに名乗っていますが、周りからそう言ってもらえるような存在になりたいです!
(文:榑林史章)
インフォメーション
10.28リリース
WOWOW『連続ドラマW ゴールデンカムイ -北海道刺青囚人争奪編-』第5話エンディングテーマ
Profile
名無し之太郎(ななしのたろう)。林(Vo/作詞)、二瓶(Dr/作曲・編曲)、高橋(Key)、中野(Ba)による、北海道出身の4人組ギターレスバンド。2024年2月21日、3ヵ月連続リリース第1弾「我儘」でメジャーデビュー。10月3日には、アニメ『カミエラビ GOD.app』シーズン2オープニングテーマ「風化」をデジタル配信した。
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