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【医師に聞く】“歩く肺炎”マイコプラズマ肺炎、子どもにも重症化リスク? 検査や受診は?
“五輪病”と言われるマイコプラズマ肺炎、ウイルスではなく細菌で感染
――なぜ五輪と同じに、4年に一度なのでしょうか?
「きっかけになったのは1964年の東京五輪の際に流行した後、1968年、1972年、1976年とマイコプラズマ肺炎が流行したからだとされています。直近では少しリズムは崩れていますが、3〜4年おきに流行しています。
数年おきの流行は、集団免疫とマイコプラズマ肺炎のリズムが重なっているからと言われています。マイコプラズマ肺炎は1度感染したら一生涯ならないというタイプのものではなく、免疫はできますが数年経つと弱まってしまいます。例えば子どもが1〜2歳でかかった後、免疫が弱くなった5〜6歳でまた罹患する。ちょうど学童期となるので、教室など密な環境下で感染が広がり、親も罹患、そして流行するというようなサイクルだと言われています」
――そもそもマイコプラズマ肺炎の感染のメカニズムとは?
「マイコプラズマ肺炎はウイルスではなく、その正体は細菌です。飛沫や接触が原因で感染するので、ちょうど新型コロナウイルスのようなイメージで考えていただけるとわかりやすいでしょう。比較的、密なコミュニケーションが感染には必要とされるので、学校や家族間などで感染は起こりやすくなります。症状としては発熱、喉の痛み、空咳(たんを伴わない咳)など。そもそも“歩く肺炎”と言われるほどなので、重症感は比較的少ない病気になります」
――重症化するとどうなるのでしょうか?
「高熱が続いたり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ます。また、下痢などの消化器症状、蕁麻疹や発疹などの皮膚トラブルも、決して多くはありませんが出る方もいます。ただ、注意が必要なのは合併症です。重い合併症では中耳炎、心筋炎、胸膜炎。さらに髄膜炎や脳炎などまで起こることがある。これが重症化のなかでは最も重いケースと言われていますが、致死的なものではないことが多いとされています」
なぜ大流行している? 子どもの症状は軽いが重症化の可能性も…
「実は、コロナ禍でマイコプラズマ肺炎に罹患する人も減りました。ただ、そうして免疫を獲得しなかった方々が大勢いて、今になって大きな波になっている可能性があります。また、昨年はアメリカでも大流行しましたし、インバウンドでの流入の可能性もあるかもしれません」
――臨床の現場でも患者さんが増えているとか…。
「増えています。8月頃は、東京都の観測のデータでも新型コロナが多かったのですが、直近はマイコプラズマ肺炎の患者さんが増加しましたね。『頑固な咳は続くが、たんはない』といった症状の方が多く、インフルエンザや新型コロナ感染症のような高熱がでて倦怠感が強い、みたいな状態にはなっていない、という人が多いです」
――「肺炎」とつくだけに、やはり高齢者は注意が必要でしょうか?
「いえ。実は逆で、60歳より若い方々に多いとされる病気になります。風邪と扱われるケースが多いので明確なデータはないですが、子どもの方が一般の症状は軽いとも言われます。ただ、先述した髄膜炎や脳炎など、重たい合併症を起こすケースは小児に散見され、重症化することもあります」