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eill、14thシングル「happy ever after」に込めた想い「自分の恋愛の思い出を振りかえって聴いていただきたい」

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 国内外で手掛けた楽曲が話題となっている、シンガーソングライターのeill。今回、14thデジタルシングル「happy ever after」が発売され、同曲がAmazon Prime Videoの恋愛リアリティ番組『ラブ トランジット』シーズン2の主題歌に決定した。シーズン1に引き続き、主題歌・挿入歌を手掛けた彼女に、楽曲の制作秘話、さらに幅を広げている自身の音楽活動について話を聞いた。

『ラブ トランジット』シーズン1の反響に驚き「一度恋に落ちた相手との絆ってすごく強い」


ーーAmazon Prime Videoの恋愛リアリティ番組『ラブ トランジット』シーズン1に続き、シーズン2でも主題歌と挿入歌を担当することになった心境から聞かせてください。

「シーズン1の反響がすごかったんです。リアルな恋愛模様の中に私の楽曲がすごく良いタイミングで流れて。自分でも『あれ? このために書いたんだっけな?』って錯覚しちゃうぐらい、参加者の感情とフィットしてて。周りからもたくさん連絡が来たし、すごく嬉しい気持ちでした」

ーーeillさんご自身はシーズン1を見てどう感じましたか?

「私は元カレNG派だったんですけど、それがすごく変わりましたね。こんなに美しいんだって感じて。元彼との友情も恋愛もそうですし、一度恋に落ちた相手との絆ってすごく強いんだなっていうふうに思って。毛嫌いしてた自分は心が狭いなと思って。私自身がヨリを戻せるかは分かんないですけど、『もう絶対に会いたくない!』みたいな気持ちだったのはだいぶ変わりました(笑)」

ーー(笑)! シーズン1の主題歌「happy ending」はどんな思いを込めて作った楽曲でしたか。

「前回楽曲を制作した時は台本もないので、まだ、どういう恋愛になるかもわからなくて。だから、自分の固定概念みたいなものと言いますか、元彼アレルギーで歌詞を書いてしまったっていうのもあって(笑)。もう別れて会いたくないってなってるけど、ちょっとだけ心が引かれちゃってて辛いっていう歌詞になってたんです。サウンド的にもビートが強めでラップもしてて」

ーー「happy ending」というタイトルですけど、失恋ソングですよね。

「そうですね。どういう経緯をたどったとしても、最後に結ばれたとき、この曲が”結ばれた歌”としても聴けるように少しの救いというか、光を残しておきたくて、そういうふうにタイトルをつけました」

ーーハッピーなラブソングにしなかったのはどうしてですか? 

「『ラブトランジット』は5組の元カップルが集まって共同生活をしていくので、やっぱり一度別れた相手には複雑な感情だと思うんです。しかも、元恋人が他の人と新たな恋愛をするところを目撃するかもしれない。そういった感情に寄り添いつつも、初めてそこで、私はこんなにこの人のこと好きだったんだなって感じることもあるかもしれない。そういう想像をしながら書いていたので、自然と失恋ソングになったのかなって思います」

『ラブトラ』シーズン2の主題歌「happy ever after」、「一つの物語が終わるという時間軸を意識して曲を書きました」

ーーシーズン1を経て、シーズン2の主題歌「happy ever after」はどんなところから作り始めたんですか。

「5年前に『1分1秒とそれ以外』というタイトルで作っていたデモをリアレンジして歌詞を書き直したんですけど、それも元々失恋ソングだったんです。すごく少ない時間でも一緒にいたいっていう曲だったんですけど、『ラブトランジット』は元恋人と、また新しい恋を探すような場所に行くので、相手の幸せを願う自分もいつつ、過去の恋愛にちょっと心を引っ張られるような、ちょうど真ん中にいる場所なのかなという気持ちで書きました。あと、シーズン1を見て、失恋すると心が落ちていくけど、それが人間らしくて美しいなって感じたんです。そういう意味ではその心にもう少し近づいた曲になったかなと思います」

ーー「happy ever after」というタイトルにしたのは?

「物語の一番最後に<幸せに暮らしましたとさ>みたいな締めの言葉として使われるんですけど、『happy ending』と同じような意味を込めてます。今回も最後はちゃんと少しの希望というか、光を残して描きました」

ーー歌詞自体も物語になってますね。

「そうですね。1人の主人公が、相手はもう完全に自分の元にはいなくなるかもしれないって予知している。恋が冷めた瞬間=夢から目覚めた瞬間みたいなところから物語が始まっていて。一緒に過ごした部屋や時間の中にいるのはもう私しかいない。そこから少しずつ時間が経つけど、自分は忘れられないまま、相手はどんどん遠くに、先に先にと歩いてしまうという物語になってます」

ーー歌とピアノだけのベッドルームローファイのようなサウンドから始まって、英語の部分でオルタナティヴロックのような破壊的なムードに変化します。

「アレンジもこだわって作りました。ここでちょっと物語の中に落ちていくようなファンタジー感を連想させて、自分の恋愛に重ねて、いろんなことを思い出してくれたらいいなって思って作ったセクションなんです。そこで、頭の中を全部整理して、自分の心を整えた先に、<私を置いていって>って、自分の中でのこの恋愛の置き場所を見つけるというか。この歌詞だけでは伝わらないかもしれないんですけど、本だったら本を閉じる瞬間というイメージですね。一つの物語が終わるという時間軸を意識して曲を書きました」

ーー区切りをつけて、失恋の辛さを乗り越えてるってことですよね。

「英語で<一緒にはいられない>って言い切ってます。でも、それはもう最初からずっとわかってたことなんです。この恋が私を引っ張るんだっていう状況から、寝て起きたら、もう歩き出せるかもしれないって感じてる。この恋を置くんだっていう楽曲です」

ーー番組を見る方々にはどう届いてほしいなと思いますか。

「シーズン1のときは、主題歌だけでなく、挿入歌として使っていただいた『片っぽ』の反響も大きくて嬉しかったです。あの曲も失恋ソングで、同じように最後、ちゃんと救いがある楽曲にはなってるんですけど、自分の恋愛と重ねて聴いていただけた方がいっぱいいたのかなと思ってます。ぜひ、今回も回想シーンで自分の恋愛の思い出を振りかえって聴いていただきたいなと思います。あと、前回、『スキ』という曲がデートのシーンとか、ウキウキするシーンでかかってて。私、恥ずかしいんですけど、普通に見てて『キュン?』としてしまって(笑)。テレビを見ながら、『うー』って声が出ちゃったくらいだったんです。今回、『プレロマンス』という楽曲もそういう系の曲なので、どんな場面で流れるんだろうって楽しみにしてます」

韓国語や英語で曲を作る経験が糧に「自分と同じような気持ちで音楽やってる人に出会えた」

BLUE ROSE SHOW 2024 in TOKYO@Zepp DiverCity  Photo by tatsuki nakata

BLUE ROSE SHOW 2024 in TOKYO@Zepp DiverCity  Photo by tatsuki nakata

ーー「happy ever after」のリリースから1週間後には、リード曲「CRUSH」の日本語歌詞を担当したIVEのJAPAN 2nd EP『ALIVE』がリリースされます。IVEの日本語歌詞を手がけるのは、昨年の「After LIKE」「Take It」に続き、3曲目になりますね。

「IVEはライブにも行くくらい大好きなので、自分が書いた言葉を自分の推しが歌ってくれることにいまだにびっくりしますね(笑)。私もリリースされるまで、本人たちが歌ったものを聴いていないので、すごく楽しみにしています」
かったので」

ーーそうなんですか!?

「そうなんです。(取材日の当日に先行配信された)なので、どんなふうに歌ったんだと思って今朝聞いたら、日本語もすごく丁寧に歌っていて。私たちがうまく発音ができない英語の単語があるように、ちょっと苦手に感じるような発音の単語がないようにすごく気をつけながら書いたつもりではいるんですけど、日本の人が歌ってるくらい自然に歌ってくれたので嬉しかったです。なりより、かわいい! かわいかったです!!」

ーー(笑)。日本語に置き換える上で、どんなところにこだわりましたか。

「K-POPは元々は英語で作ってる楽曲が多いので、そのまま日本語に書き換えると大変なことになることが多いんです。なので、そこはもう意味も変えちゃって、『こっちの方が素敵でオシャレだと思います!』って、私は結構、どんって提出しちゃうタイプです。意外と『それを信じます』みたいな感じで受け止めてくださるので、日本歌詞も聞かれるようになった理由なのかなって思いますね。今回の『CRUSH』っていう曲も、曲調的にはやっぱり英語の方が気持ちいいっちゃ気持ちいいんですけど、せっかく日本で歌を出してくれるなら、やっぱり日本語で歌ってほしいなと思って。サビの前に<とめどなく夢中>って言葉を使ったんですけど、『IVEがそれを言うんだ!』みたい言葉を入れたかったんですね。それをすごく意識したし、私は日本語ならではの美しさもあるなと思っています」

ーーeillさんはGRAYさんとのセッションで韓国語歌詞にも挑戦されていますし、英語の歌詞も書いてます。韓国語や英語としてアウトプットするときに日本語とは異なる大変さを感じた部分はありますか?

「そもそも日本語の歌詞の表現ってすごく奥深いんですよね。こうやってインタビューしていただいて、掘り下げていくと、いろんな意味が出てくることがある。アメリカのポップスやK-POPは、割と見てわかって、それ以上の意味がなかったりするんです。日本語の歌詞の世界観やJ-POPってすごく特別だなって思うんです。だから、例えば、書きたいことが決まっている中で、日本語の歌詞を韓国語にするってことはすごく難しかったです。『そういう表現の仕方はしないよね』とか、『そういう言葉はそもそもない』っていうのが多すぎて、すごく迷いました」

ーーそこをどうやってクリアしてたんですか。

「韓国語を手伝ってくださったNOIZEWAVEさんと相談して。どういうふうに置き換えれたら一番伝わるだろうねっていう作戦会議を何回もしました」

BLUE ROSE SHOW 2024 in TOKYO@Zepp DiverCity  Photo by tatsuki nakata

BLUE ROSE SHOW 2024 in TOKYO@Zepp DiverCity  Photo by tatsuki nakata

ーーK-POPの方々とたくさん仕事されてて、ご自身の音楽活動にどんなものが返ってきてますか。

「自分と同じような気持ちで音楽やってる人に出会えたって思えた。間違ってなかったなと思ったし、これからもこういうふうに音楽作っていけたらなと思いました」

ーー逆に、日本ならではだと感じたことは?

「あります。日本って本当に独自なんです。最近、セッションやコライトでいろんな国に行ったんですけど、必ず、『J-POPって特別だね』と言われます。コードもめちゃくちゃ変わるし、ABCDという展開も多いし、日本人にしか書けない歌詞やメロディーがあるそうなんですね。そういうのが、今、逆に流行ってるんだよって教えてもらったりしてて。私は日本の音楽を幼いときそんなに聴いてこなかったんですけど、すごく誇らしくなって。今更、歌謡曲を聴いちゃうムーブになりました」

ーー何を聴いているんですか?

「ちっちゃいときから母の影響でユーミンさんを聴いてたんですけど、今、聴くとなおさら沁みますね。いちばん好きなのは『卒業写真』です。中学校のときに、ユーミンさんの弾き語りブックを買って。ピアノで弾き語りして。今は、スナックとか行って、歌ってます(笑)。ご自身の青春と重ねて、私が歌った『卒業写真』で泣いてくれる人もいるので、それは羨ましく感じたりしますね」

ーー幅広いアーティストに楽曲提供し、どんどん新しい音楽もインプットしてるようですが、今後はさらにアーティストとしてどのように活動していきたいと考えてますか。

「プロデュースもやってみたいですし、K-POPを含めて、楽曲提供もどんどんやっていきたいです。まだまだ自分が作ってみたい音楽がたくさんありすぎちゃって。自分の可能性みたいなものをどんどん音楽で表現していきたいです。あとは、いちばん最初に音楽を始めたときからアジアツアーを目標にしていて。『フィナーレ』や『片っぽ』が台湾や韓国で聴いていただけるようになってきて。少しずつ目標に近づいているような気がしているので、さらに頑張りたいなと思っています」

取材・文/永堀アツオ
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