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俳優とアーティスト…第一線で活躍し続ける“カッコイイ大人”吉川晃司、「見得を切る」生き様とは
映画『キングダム 大将軍の帰還』ホウ煖（C）原泰久／集英社 （C）2024映画「キングダム」製作委員会
インタビューに答える吉川晃司
映画『キングダム』で演じた“武神”ホウ煖に宿る、吉川晃司の生き方とは
映画『キングダム 大将軍の帰還』ホウ煖 （C）原泰久／集英社 （C）2024映画「キングダム」製作委員会
今回、映画『キングダム 大将軍の帰還』で、秦国随一の大将軍・王騎(大沢たかお)と激戦を繰り広げる趙の総大将・ホウ煖（ほうけん）を演じている吉川。その身に神を宿す“武神”と畏れられるホウ煖だけに、さすがの吉川も演じるにあたり「高いハードル」を感じたという。
「映画を観てくれるお客さんに、『この男は確かにホウ煖だ』という説得力を与えられるかどうか。そこがまず勝負なんです。その鍵となる要素のひとつが、ホウ煖の持つ大きな武器を自在に操れるようになること。あれを振り回せなかったら、ホウ煖ではないんです。山にこもって、ずっと練習を続けました。そもそも、山のほうへ行かないと、あんなものを振り回せる場所はない。仮にあったとしても、見つかったら警察に連行されちゃいますから（笑）」
「ホウ煖の前に演じていた役では、71kgまで落としていたんです。僕はふだんが75kgくらいなんですけど、ホウ煖をやるにあたっては86kgまで増やしました。15kgはキツかったですよ（笑）。それに、僕の場合はコンサートツアーのスケジュールもありますから、そこに合わせて、またライブのためのベストな体重、コンディションに調整しなくちゃいけない。大変でしたけど、現場では隣のテントにいつも、90kgまで仕上げてきた大沢たかおという男がいるわけですよ（笑）。彼が作品に懸ける気持ちは、グイグイ伝わってきましたからね。負けちゃいられないと。彼をはじめ、『キングダム』のキャストやスタッフからは、作品を良いものにしたいという思いを常に感じ、刺激を受けていました」
巨大で重い矛を使った立ち回り、そして乗馬。吉川はどんな役を演じるときも、可能な限り、吹き替えを立てずに自ら演じたいというスタンスだ。
「バイクに乗ったり、流鏑馬をやったり……。自分で壁を超えてみたいというのがあるんです。だから『自分でやらせてくれ』というのは、常にお願いしますね。もちろん、そのための訓練もします。ただ、今回の『キングダム』のアクションチームなんて、優秀ですからね。僕よりも上手いスタントマンがたくさんいますから、全部を自分でやったわけではないです。むしろ、こだわったのは芝居の部分かな？ ホウ煖の顔が映らないカットでも、役を演じている本人にしか出せないものというのがあると思っているので、そこは『やらせてほしい』と。特に『背中』の芝居ですね。顔なんて、そんなに映してもらわなくてもいいと思っていますから（笑）」
映画『キングダム 大将軍の帰還』ホウ煖 （C）原泰久／集英社 （C）2024映画「キングダム」製作委員会
まさしく“背水の陣”、負った傷をエネルギーに転換する
「当時17〜18歳だったので後々になって、いろいろとわかってきました。結果的には、あの時やらせていただいたお陰で、今こうやってお芝居にも触れていられるっていうのはありがたいことだと思います。一時期、二足のわらじを履いている自分はどっちにも行けないような不安を覚えて、音楽だけに絞ったこともありました。いちばん精神的にキツかったのは、いろいろとあって、自分で会社を立ち上げるしかなくなったころかな。ただどうにもならない時に背負ったもの、傷みたいなものって武器にもできるし、エネルギーにも転換できるんですよ。いわゆる“背水の陣”というやつで。しばらくぶりに俳優をやるきっかけになったのが、三池崇史監督から声をかけてもらったこと。タイミング的にも、そろそろやってもいいかなと自分の中で思えるようになった時期だったんです」
三池監督の映画『漂流街』(2000年)に出演。この作品で演じた伏見役で強烈な印象を残すが、同時に三池監督からある言葉をかけられた。
「監督から『君は普通の役ができない』『存在感が邪魔をする』とか言われたんだけど、褒め言葉だと捉えましたよ（笑）。役者としても、見得を切れるような役をやっていきたいですからね。今回のホウ煖なんて、そういう意味でありがたいです。役柄もそうだし、プロジェクトとしても大きいじゃないですか。まだまだ日本のエンタテインメントも負けてないぜ、という気概を見せてくれている。少々ムリしても、がんばろうと思える作品でした」
アーティストと俳優は“相乗効果”「見得を切って、いかに生きるか」
映画『キングダム 大将軍の帰還』 （C）原泰久／集英社 （C）2024映画「キングダム」製作委員会
「若いころはそれほど自分でわかっていなかったんですけど、両方やることによって、トータルで高まっている部分があるというのは感じますね。意外な広がりも出てきたんですよ。ナレーションの仕事が、アニメの声優をやらせていただくきっかけになったり。特に近年で大きかったのは、時代劇で演じた役の関係で、弓道と出会ったことですね。いまも続けているんですが、弓道を学んだことによって、呼吸の仕方が変わって、昔よりも息が上がらなくなったんです。体幹も、より鍛えられましたし。
もちろん、歳を重ねて、いろいろなところにガタが来ているのも事実です。映画の撮影の準備でバイクを練習していて脚を折ったときは『昔より（骨が）くっつきにくくなったな』と思ったし、心臓や目の手術もしたし、先日の東京ドームでの『COMPLEX』チャリティーライブ２日間のときも、ステージにいる間は全く自覚がなかったけど、終わったら体のあちこちが痛かった（笑）。でも、欠けていくものだけじゃないんですよ。何かを失っても、代わりに得るものというのが必ずあるし、歳をとったぶん、知恵もめぐらせますから。すべてが勉強だし、経験が自分のエネルギーになっていくんです」
インタビューに答える吉川晃司
「そもそも歌うこと、楽器を弾くことと演じることって、手段は違いますよね。ただ人生として考えると、ともに見得を切って、いかに生きるかということ。言葉を変えれば、いかに傾く（かぶく）かという生き方。ロックンロールにも、芝居の中にもそういう要素がすごくある。だから共通点が多いんだと思います。自分は今まで見得を切って生きてきたから、これは最後まで切り通すしかないなって。年齢を重ねてくると、いろいろ削れたり欠けたりすることも出てきますから、それとどう通り折り合いをつけるかというのはありますが」
常に目の前のことに真摯に向き合っていく。愚直なまでの真っすぐな姿は「上手に生きようとは思っていない」という彼自身の姿勢の表れとも言えるだろう。
「昔から、“上手に生きる”なんてできていないですよ。できないからやらない。ずっと問題児でしたからね。でも味方になってくれる人たちがいて、何とか生かされてきたんだと思います」
これまで歩んできたのも、決して平坦な道ではなかった。その瞬間瞬間に「遠回りしているのかな」と不安になる時はなかったかと聞くと、こんな答えが返ってきた。
「僕にとっては、いわゆる近道のほうが不安なんですよ。遠回りをしているという意識もないけど、時間をかけることによって初めて身につくものというのがあるし、それが自信につながって、負ける気がしなくなる。そういうことだと思っています」
（取材／用田邦憲）
Information
応募期間：2024年7月12日（金）11:00〜2024年9月30日（月）17:00
キャンペーン特設サイト（外部サイト）
『UL・OS Questions』
吉川晃司×松橋真三（映画『キングダム』プロデューサー）インタビューページ（外部サイト）
映画『キングダム 大将軍の帰還』
公式サイト（外部サイト）
