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たばこ休憩はズルい? 企業が悩む禁煙対策、“1本でも吸ったら悪”ではない共存の行方「喫煙者をいじめたいわけではない」
コンビニや公園に喫煙社員が殺到、急激な“完全禁煙”が生んだ弊害
では、一刀両断に完全禁煙を成し遂げれば問題は片付くのかというと、そうでもない。社内に吸う場所がなくなったせいで、近隣のコンビニや公園で喫煙する社員が殺到…という弊害が生まれたこともあった。このご時世、ある程度の喫煙制限は必至であり、喫煙者・非喫煙者それぞれの反発をなだめながら、対策することが求められている現状だ。ただ、あまりに一方的な施策では、ヘタをすると社員同士、企業と社員の間の分断を生みかねないこともあり、なかなかに頭の痛い問題だろう。
そんななか、ある企業が禁煙にまつわる取り組みで成果を出しつつある。兵庫県・神戸市に本社を置く、神鋼環境ソリューションという企業だ。同社は神戸製鋼グループの一つである、大手環境プラントメーカー。禁煙への取り組みは2018年頃から着手をしていたが、強化したのは2023年度。保健師である立石さんが旗振り役となって、推進しているのが特徴だ。
「もともと社内喫煙率は23%と、そこまで高いわけではありませんでした。ただ、疾病などによる労働損失を集計すると、治療や手術で長期休職を余儀なくされる方が年間で数名はいる状況。私は保健師として社員の健診結果を見て指導することもあり、心筋梗塞や肺がん、糖尿病などで無念な思いをする方を多く見てきました。原因はたばこばかりではありませんが、たばこが体によくないことは喫煙者もわかっています。自身の健康のため、『いつかやめたい』と考える方の後押しやきっかけにしてもらえたらと思い、活動を始めました」(立石さん)
社内調査では「ズルい」「くさい」/「ルールは守っている」「ついに来たか」…割れる意見
「それぞれ意見があるのは当然です。ただ、いたずらに禁止一辺倒にして、喫煙者をいじめたいわけではない」と語るのは、安全健康管理部の杠(ゆずりは)さん。「会社としては吸う人・吸わない人を分断させたいのではなく、お互いに健康で幸せに、過ごしやすくする方法はないかと模索してきました。健康のプロが指導してくれることで、禁煙する意味合いや納得感が増すのではないでしょうか」(杠さん)。
保健師が推進する納得の対策、「治療費“全額”補助」や「オンライン禁煙治療」で利用者増加
「過去に一部補助を行ったこともありますが、そのときは利用者が非常に少なかった。やはり“全額”というインパクトが必要で、メリハリある施策をしてみようということになりました」(立石さん)
一部補助をしていた時の利用者は、4年で10人。だがオンライン禁煙治療の全額補助になってからは、半年で17名が禁煙治療に参加した。全額補助に踏み切ってからそう時間は経っていないが、じわじわと効果をあげていると言っていいだろう。また、オンラインで診療を受けられることも功を奏した。
「通院は途中でやめてしまう人も多かったのですが、現在はクリニックフォアのオンライン診療を活用しています。この場合、家でも出張先でも診察を受けたり、内服薬(「バレニクリン」チャンピックス海外後発品)を処方してもらうことができます。出張先が遠方の場合でも、薬の配送費は会社負担なので、みなさん利用しやすいのだと思います」(立石さん)
治療に挑戦した喫煙者からは、「もうイライラしたり喫煙所を探す日々に戻りたくない」「歯茎の状況が良くなり、歯磨きをしても血が出なくなった」「失敗したから今回こそやめたい」「血圧が安定した」「1日500円のたばこ代がなくなり経済的負担が軽くなった」など、取り組み半ばながら多くの喜びの声があがっているそうだ。