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「聖地巡礼」に変化? 推し活人口が増えても消費速度は爆上がり…ライト層取り込む新たな動き

JR東海が展開する『推し旅』、ライトノベル『薬屋のひとりごと』のプラン

JR東海が展開する『推し旅』、ライトノベル『薬屋のひとりごと』のプラン

 老いも若きも、なにかしら“推し活”をする人が増えている昨今。2016年に流行語大賞にノミネートされた「聖地巡礼」という言葉も、広く浸透した。だが、コンテンツの消費速度がどんどん増している今、かつて潤った巡礼先も落ち着きを見せつつあるよう。以前言われた“アニメやマンガで町おこし”は、通用しなくなってきているのだろうか。聖地巡礼の今を、JR東海とコミックシーモアに聞いた。

コンテンツの消費速度は爆上がり、かつての「聖地」の現状は?

 かつて熱心なファンのものであった「聖地巡礼」は、2010年代から一般化。ヒットコンテンツが生まれれば、それに伴って作品の聖地に足を運ぶ人が増えるのは、もはや珍しいことではなくなった。2016年には官民が協力した「アニメツーリズム協会」が発足し、“訪れてみたい日本のアニメ聖地88”も制定されている。

 とくに有名な聖地といえば、『スラムダンク』に登場する神奈川県鎌倉市内の江ノ電の踏切や『ガールズ&パンツァー』の茨城県大洗町、『君の名は。』の岐阜県・飛騨古川エリアなどだろうが、いまや全国に無数に存在。こうした聖地を目的とした観光客の増加で、地元もおおいに盛り上がり、潤ったといえる。

 だが、この聖地巡礼需要がいつまでも続くわけではないのは、エンタメコンテンツの流行りすたりが早いのを見てもわかるとおり。実際、数十億円もの経済効果が生まれたという地域ですら、時間の経過とともに来訪者は少しずつ減少傾向にあるとも報道されている。コンテンツの消費速度が上がっている今、一時は盛り上がった聖地が徐々に落ち着いていくのは自然な流れだ。

 では、この聖地巡礼の流行も、いずれシュリンクしていってしまうのだろうか?

 「全体的に減少しているわけではない。コンテンツと共に新しい聖地が増えているし、効果が薄れてきた印象はありません」と語るのは、JR東海の営業本部需要創出グループの伊藤悟さんだ。同社は『推し旅』として、新幹線を利用した推し活旅行プランを開発。アニメやマンガ、ゲームをはじめ、アイドルやアーティストとのコラボなど多くのプランがあり、開始当初の2023年3月時点は10件程度だったプラン数は1年後には80件まで増加。ユーザーからも好評を得て、コロナ禍で落ち込んだ新幹線利用の持ち直しに寄与したという。

 「現在は1人1人の趣味も広がって、多様化している時代。推すコンテンツ自体も、巡礼先も、それだけ多様化していると言えるでしょう。さらに、コアファンだけでなくライト層も推し活するようになり、その裾野は広がっていると見ています」(JR東海・伊藤さん)

 多くの作品を擁し、読者間のコミュニティーサイトもある電子コミックサービス『コミックシーモア』の松原純さんも、「コロナ禍に比べるとメディアで取り上げられることは落ち着いていますが、コアファンを中心として聖地巡礼の温度感は高く、一時期のブームよりもタイトルやジャンルの幅が広がった印象です。旅のついでの聖地巡礼ではなく、聖地巡礼が主役の旅の形はいまだ人気のように感じていますね。コミックシーモアの読者のコミュニティーサイト『シーモア島』内でも、聖地巡礼に関するスレッドで情報交換がされており、ライト層が入りやすいメディア化したものからコアな作品まで幅広い作品で情報発信があります」と明かす。

推し活人口の増加、ライト層のハードル下げるプラン化された「推し旅」が好評

『しかのこのこのここしたんたん』(C)おしおしお/講談社

『しかのこのこのここしたんたん』(C)おしおしお/講談社

 一時ほど話題になることは減ったにせよ、コアファン+ライト層によりいまだ支えられている聖地巡礼。ブームの成熟につれて『推し旅』のような新たなサービスも生まれ、楽しみ方も多様化した。

 「とくに新たに推し活に参入したライト層は、『推し旅』のようなプラン化されたものが利用しやすいのではないかと思います。一から巡礼先を調べたり、行く場所を決めるのはなかなか大変。『推し旅』はデジタルスタンプラリーやオリジナルコースの設定もあるので、ラクに周ることができるのではないかと。また、新幹線の中でGPS機能を使ったデジタルコンテンツ(車内限定音声など)を楽しむことができ、乗った瞬間から推しを堪能できるところはコアファンの方にも満足いただける内容です。ライト層にとっては、行き帰りのハードルを下げていると言えると思います」(JR東海・伊藤さん)

 たしかに、コアファンならば熱心に調べたり準備したりすることが苦にならずとも、ライト層では面倒に感じてしまうこともあるだろう。

 「舞台が必ず公式で公表されているわけではないので、“推測”で聖地巡礼しなければならないパターンも多いのです。聖地巡礼で気になっていたのに実は違う場所だった、なんてことも聞いたことがあるので、下調べ不要なのはメリットだと感じます」(コミックシーモア・松原さん)

 自ら聖地を推測したり、探し出したりする楽しみ方もあり、効率的なサービスに乗っかる楽しみ方もあり。推し活人口が増えてコンテンツが多様化したように、聖地巡礼も変化を遂げているようだ。

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