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ディズニープラスには音楽コンテンツも充実!音楽ライターがオススメ作品をレビュー

 歴史に名を残すアーティストたちのライブ映像や音楽づくりに迫るドキュメンタリーなど、上質な映像作品が多数ラインナップしているディズニープラス。そこで今回は、ディズニープラスで楽しめる“音楽コンテンツ”を実際に見た、音楽テクニカルライター・布施雄一郎がオススメ作品を紹介する。

『ザ・ビートルズ:Get Back』

『ザ・ビートルズ:Get Back』(C)2021 Disney (C)2020 Apple Corps Ltd.

『ザ・ビートルズ:Get Back』(C)2021 Disney (C)2020 Apple Corps Ltd.

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 熱狂的なファンでなくとも、ザ・ビートルズの4人がビルの屋上で行ったゲリラ・ライブの映像や写真を目にしたことがある人は多いことだろう。このシーンは、1969年1月に行われた通称「ルーフトップ・コンサート」と呼ばれるザ・ビートルズ最後のライブ・パフォーマンスで、その様子を収めた映画『Let It Be』は1970年に公開。しかし長きに渡り、正式なパッケージ商品化はされていなかった。

 その元素材である60時間超の未公開フィルムと150時間を超える未公開音源を、3度のアカデミー賞(R)受賞経験を持つピーター・ジャクソン監督が丹念に修復・編集し、初のルーフトップ・コンサート完全版を含む長編ドキュメンタリー3部作として完成させたのが、ディズニープラス独占配信の『ザ・ビートルズ:Get Back』だ。
 ザ・ビートルズは人気絶頂期の1966年にライブ活動をやめ、スタジオでの創作活動に専念。名作を生み出し続けるも4人の心は次第に離れていく。そんな状態を危惧したポールが久々のライブ企画を提案し、テレビ特番とするためにリハーサル時の撮影を始める。しかし個性の強い4人の意見はぶつかり、ジョージの脱退宣言など紆余曲折を経て、テレビ特番企画は中止に。その代案として生まれたのがルーフトップ・コンサートだった。

 本タイトルでは、そうしたザ・ビートルズの1ヶ月間が赤裸々に映し出されており、4つの才能がぶつかり合う緊張感に満ちたシーンがある一方で、笑顔でセッションに没頭する様子は、ピュアに音楽が好きな4人組というバンドの原点を感じさせる。そして、今や世界中の人々が知る名曲が生み出されていく過程は、音楽史的にも貴重。そうした4人の様子を、50年前とは思えないほどのクリアな映像で堪能できる。

 さらに、音楽的な側面だけでなく、4人のファッションにも注目。とかく4人は息を飲むほどにお洒落であり、加えて当時のロンドンの街並みや一般市民の様子、風俗を知るうえでも、極めて貴重な映像資料と言える。なお、冒頭で触れた映画『Let It Be』も『ザ・ビートルズ: Let It Be』として映像が修復され、2024年からディズニープラスで配信されている。
  • (C)2021 Apple Corps Ltd. All Rights Reserved.

    (C)2021 Apple Corps Ltd. All Rights Reserved.

  • (C)2021 Apple Corps Ltd. All Rights Reserved.

    (C)2021 Apple Corps Ltd. All Rights Reserved.

  • (C)1969 Paul McCartney. Photo by Linda McCartney.

    (C)1969 Paul McCartney. Photo by Linda McCartney.

『Taylor Swift | The Eras Tour (Taylor's Version)』

『Taylor Swift | The Eras Tour (Taylor's Version)』(C)2024 TAS Rights Management LLC. (C)2024 Disney and its related entities.

『Taylor Swift | The Eras Tour (Taylor's Version)』(C)2024 TAS Rights Management LLC. (C)2024 Disney and its related entities.

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 今年2月、東京ドーム4days公演をソールドアウトさせ、計22万人を動員したテイラー・スウィフト。その来日公演は、2023年3月17日に米国でスタートし、2024年12月8日まで続く予定の大規模なワールドツアー<The Eras Tour>の一環であった。

 本タイトルは、同ワールドツアーの2023年米国ツアー最終公演、ロサンゼルス・SoFiスタジアムでの様子を収録した劇場版コンサートを映画作品にし、さらに26分を超えるアコースティック・コレクションを追加収録したディズニープラス・オリジナルの“Taylor's Version”。
 本タイトルを観てまず驚かされるのは、映像の美しさ。ライティングやカット割りが完璧なまでに計算しつくされた映像は、まるでスタジオで入念に撮影された映画並みに素晴らしく、テイラー・スウィフトがとてつもなく大きな存在感として映し出される。一般的なライブ収録用カメラではなく、映画撮影用のレンズをメインに使われたのではないだろうかと想像するほどに、映像の陰影や奥行き感が見事であり、しかもカメラやクレーン、ドローンの存在や、撮影スタッフの姿がほとんど映し出されない点にも強いこだわりを感じさせられる。リアリティに満ちながらも、実際の会場ではリアルに肉眼で見られない多彩な視点での映像によって、オープニングからこのうえない没入感で、最高のパフォーマンスを楽しめる。さらに要所でリアルな映像にプラスされるCGも絶妙かつ効果的。また、サウンド・ミックスも非常に素晴らしく、音楽作品という視点でもクオリティの高い仕上がりとなっている。

 こうした細かな部分のすべてにテイラー・スウィフト自身の意思が反映されていることを考えると、彼女が現代のトップ・アーティストであることに十分納得できる。その上で、あまりに完璧な本編映像に対し、エンドロールでのハプニング集的な映像には、思わず笑みがこぼれてしまう。実に素敵なエンディングであった。
  • (C)2024 TAS Rights Management LLC. (C)2024 Disney and its related entities.

    (C)2024 TAS Rights Management LLC. (C)2024 Disney and its related entities.

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    (C)2024 TAS Rights Management LLC. (C)2024 Disney and its related entities.

『BTS Monuments: Beyond The Star』

『BTS Monuments: Beyond The Star』(C) 2023 BIGHIT MUSIC & HYBE

『BTS Monuments: Beyond The Star』(C) 2023 BIGHIT MUSIC & HYBE

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 2023年にデビュー10周年を迎えたBTSが、それまでの軌跡を振り返り、そしてこの先の未来を見つめる8エピソードからなる計4時間超のディズニープラス・オリジナルのドキュメンタリー。
 今やBTSと言えば、音楽に興味がない人でさえ、彼らの世界的な活躍は知るところだろう。そんなBTSの7人がまだ何者でもなかった頃、2013年6月12日のデビュー・ショーケースのシーンから幕を開ける。10年間のターニング・ポイントとなった当時の映像と、メンバー7人に加え、彼らの初期プロデューサー、現・HYBE会長パン・シヒョク氏の個別インタビューを軸に構成している。個々のメンバーが10年間を回想し、その時々の偽りのない気持ちを吐露していく。そうした各人へのインタビューは、その時々のファッションや髪形を見てもわかるように、時間を置いて複数回ずつ行われている。丁寧な密着取材ぶりがうかがえる。

 これらの全エピソードを観終えた感想としては、デビューしてからのあらゆる出来事が網羅されているものの、トップ・アーティストに上り詰めるまでの苦労話ではなく、むしろ名実共に世界的なトップ・アーティストとなったからこその苦悩や、突如として世界中を襲ったパンデミックによる世界ツアーの中止など、直近の逸話に重きが置かれているのが印象的だった。そこから徐々に活動を再開させていきながら、各人がソロ活動に取り組み、そしてメンバー全員が兵役を終える2025年に向け、観る者の期待を大きく膨らませるエンディングとなっており、ただの想い出話ではなく、今と未来のBTSを感じさせてくれるドキュメンタリーとしている点が好印象だ。

 最後に付け加えると、本ドキュメンタリーでは彼らが感極まり涙するシーンが幾度となく映し出される。その様子から、彼らがいかに感情豊かで、音楽やダンスに対してピュアで、なおかつARMYを大切にしているのかが強く伝わり、これだけ世界中にARMYが広まった理由を垣間見たような想いだった。
  • (C) 2023 BIGHIT MUSIC & HYBE. All Rights Reserved.

    (C)2023 BIGHIT MUSIC & HYBE

  • (C) 2023 BIGHIT MUSIC & HYBE. All Rights Reserved.

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  • (C) 2023 BIGHIT MUSIC & HYBE. All Rights Reserved.

    (C)2023 BIGHIT MUSIC & HYBE

『エド・シーラン:The Sum of It All』

『エド・シーラン:THE SUM OF IT ALL』(C) 2024 Disney and its related entities

『エド・シーラン:THE SUM OF IT ALL』(C) 2024 Disney and its related entities

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 アコースティック・ギターとルーパー・ペダルを駆使したシンプルながら印象的なメロディと抜群の歌唱力で、「The A Team」(2010年)や「Shape of You」(2017年)などの世界的ヒットを生み出したソロ・アーティスト、エド・シーラン。ポップス、バラード、さらには高速ラップも得意とし、グラミー賞を4度受賞するなど華々しいキャリアを持つ彼だが、幼少期には吃音に悩まされ、音楽を志した10代半ばには路上生活を送る時期もあり、必ずしも順風満帆の人生を歩んできたわけではない。

 本タイトルは、そんな彼がいかにして独自の音楽を生み出し、世界的な成功を掴んだのかを自らが語る、ディズニープラス・オリジナルのドキュメンタリー。ところが撮影開始後、妻チェリー・シーボーンの病気が発覚。さらに追い打ちをかけるように、デビュー前から彼を応援し続けてきた親友ジャマル・エドワーズの訃報が届くなど、想定外の苦難が襲いかかる。そうした中でも創作活動を続けるエド・シーランの喜怒哀楽が、本タイトルには包み隠さず収録されており、多くのファンが初めて接するであろう彼の一面が垣間見られる “人間エド・シーラン”という奥行きの深いヒューマン・ドラマとなっている。
 そして、自身に降りかかるさまざまな出来事を音楽で表現しようとする彼の真摯な姿勢から、エド・シーランが真の意味でのアーティスト(表現者)であることがより一層、鮮やかに描き出されている。こうした数々のドラマの中で、何気なくエド・シーランが発したタトゥーを入れる理由や、ラストシーンで20代前半の頃のように記録を打ち立てるという成功を目指すのではなく別の幸せも探していきたいといった彼の言葉が、深く心に残った。
  • (C)2024 Disney and its related entities

    (C) 2024 Disney and its related entities

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    (C) 2024 Disney and its related entities

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    (C) 2024 Disney and its related entities

『アビー・ロード・スタジオの伝説(If These Walls Could Sing)』

『アビー・ロード・スタジオの伝説』(C) 2023 Mercury Studios Media Limited. All Rights Reserved.

『アビー・ロード・スタジオの伝説』(C) 2023 Mercury Studios Media Limited. All Rights Reserved.

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 ロンドンにある音楽の聖地、アビー・ロード・スタジオの90年を超える歴史を追ったディズニープラス・オリジナル作品。監督は、物心がついた時からスタジオで過ごしていたというメアリー・マッカートニーで、父であるポール・マッカートニーのインタビューからフィルムは始まる。
 アビー・ロード・スタジオと言えば、ザ・ビートルズがホームグラウンドとして数々の歴史的名盤を生み出したことで知られるが、それは「第2スタジオ」であり、一番広い「第1スタジオ」はオーケストラの収録に使われていた。そのようなスタジオで、なぜザ・ビートルズのロックンロールが生み出されたのか。そこから、どんな名盤が作り出されていったのかを、ポール・マッカートニーやリンゴ・スター、ジャイルズ・マーティン(音楽プロデューサー/ジョージ・マーティンの息子)、エルトン・ジョン、ロジャー・ウォーターズ(元ピンク・フロイド)、リアム・ギャラガー(元オアシス)、ナイル・ロジャース(音楽プロデューサー)ら、錚錚(そうそう)たるメンバーの独占インタビューによって紐解かれる。さらに、同スタジオの経営が窮地に陥った1980年代、それを救ったのがハリウッドの作曲家、ジョン・ウィリアムズによる映画音楽だったというエピソードも注目だ。

 近年、レコーディング機器の小型化/高性能化により、大きなスタジオはどんどん姿を消し、主流はホーム・レコーディングへと移行している。しかしスタジオだからこそ生まれる音、そこでしか鳴らせない音というものが確実に存在しており、そんな裏方中の裏方であるスタジオにスポットを当て、守り続けようとする着眼点には敬意を表したい。なお、なぜ英語タイトルが「If These Walls Could Sing」なのか。それは作品の最後の最後で明らかに。そのシーンも、ぜひ見逃さずに楽しんでほしい。
  • (C)2023 Mercury Studios Media Limited. All Rights Reserved.

    (C) 2023 Mercury Studios Media Limited. All Rights Reserved.

  • (C)2023 Mercury Studios Media Limited. All Rights Reserved.

    (C) 2023 Mercury Studios Media Limited. All Rights Reserved.

  • (C)2023 Mercury Studios Media Limited. All Rights Reserved.

    (C) 2023 Mercury Studios Media Limited. All Rights Reserved.

メイキング・オブ『ハピアー・ザン・エヴァー:L.A.へのラブレター』

「メイキング・オブ 『ハピアー・ザン・エヴァー:L.A.へのラブレター』」(C) 2024 Disney

「メイキング・オブ 『ハピアー・ザン・エヴァー:L.A.へのラブレター』」(C) 2024 Disney

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 2019年のデビュー以来、新世代ポップ・アイコンに君臨し続けるビリー・アイリッシュ。今年6月には2年ぶりの来日を果たし、テレビ番組へのサプライズ出演でも話題となったばかりだが、彼女のディズニープラス・デビュー作品が、『ハピアー・ザン・エヴァー:L.A.へのラブレター』だ。
 同作品は、2021年にリリースしたアルバム『ハピアー・ザン・エヴァー』に収録された全16曲を、故郷であるロサンゼルスの伝説的な野外音楽堂、ハリウッド・ボウルで無観客ライブ演奏し、撮影したもの。だが、あえてここで取り上げたいのは、その舞台裏を撮影した約30分のメイキング・オブ『ハピアー・ザン・エヴァー:L.A.へのラブレター』だ。

 ビリーの楽曲は、実兄であるフィニアス・オコネルが曲作りを行っていることで知られているが、本メイキングでも2人が共に主役として映し出され(フィニアスはステージでもパフォーマンスを行っている)、さらに両親も意外な形で今回のプロジェクトに関わっており、結果的に彼女の家族や生い立ち、そして人となりが伝わるメイキング映像となっている。

 しかも、「Goldwing」で共演したのは、彼女が兄と共に幼い頃に参加していたロサンゼルス児童合唱団。ビリー・アイリッシュの原点回帰であると同時に、故郷の子どもたちへの音楽的継承とも言えるシーンは、とても心を打つ。

 こうした人間的なドラマと同じくらい、テクニカルな舞台裏も興味深い。中でも注目は、ビリーのアイデアで実現されたという、ハリウッド・ボウルでのリアルな映像とディズニー・アニメーション化されたビリーとの融合。そのシーンにはどのような想いがこめられ、どのように具現化されたのかが語られており、必見だ。

 彼女のファンであれば、本編を観てからメイキングを観て、再び本編を楽しむと、アルバム『ハピアー・ザン・エヴァー』の世界をより立体的に味わえるだろうし、ビリー・アイリッシュという名前は知っているものの、それほど詳しくは知らないという人なら、まずメイキングを観てから本編を楽しむと、彼女の音楽を、より深く味わえるのではないだろうか。
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