ORICON NEWS
豊胸した元男性「認めてほしいわけじゃなく自分らしくいたい」、LGBTQというカテゴライズへの違和感
自身の中で変化していく“自分らしさ” 「生まれ持った性がアイデンティティと思い込んでいた」
2022年のORICON NEWSのインタビューでは、【コロナ禍で自粛していた時期に、「家で何かできることないかな」と思って、試しに女装をしてみたんです。その姿をTikTokに上げたら評判が良くて】と明かし、当時は【見た目と心は女性、身体は男。そんな女装で納得している】と自身のジャンダーについて語っている。
今は、身体の女性化を強く希望している。昨年2月頃から女性ホルモン注射をはじめ、その年の夏に豊胸手術へと進んだ。
「前回のインタビューのあと、将来について深く考える時間が増えたんです。そのときに自分はどうなりたいんだろう、と。“女装男子”というままでも楽しく生活はできる。だけどもっと“自分らしく”いられるあり方があるんじゃないかと思って、心だけでなく、身体も女性になることを決めました」
「長い間、勝手に自分の中で“そこまで行ってはいけないんじゃないか”と、決めつけていたんだと思います。生まれ持った性こそがアイデンティティだと思い込んでいたと言うか…。女装から、身体の女性化までの気持ちの移り変わりを言葉にするのは難しいですが、多分ですが、より生きやすい道を歩んでいった結果、いつの間にか“自分らしく”という部分が変化していったんじゃないかと思います」
生まれ持った性別は男性。“自分らしさ”はその上にあるものだと思い込んでいたと述懐する。
「生きている価値ないじゃん…」存在を否定された飲み会
「実は、その後に行った豊胸手術よりも女性ホルモン注射を始める時の方が、悩んで眠れない日々を過ごしていました。何カ月も悩んで悩んで。ネットで調べると、色んなリスクが書いてあって…。しかも、女性らしい見た目を望むなら、生涯にわたって打ち続けないといけないんです。数週間に一度の注射を、コストもかかりますし精神的にも生涯続けられるのか…。本当に悩みましたね」
不安と恐怖の中で女性ホルモン注射を打ち続け、数ヵ月後に自身の肉体に女性化が見られた時は、安堵と嬉しさでいっぱいだったと話す。
「全体に肉付きが良くなり、特に腰まわりは柔らかいラインになりました。胸も少しふっくらして。何より、周囲から『優しい印象になった』『女性らしい』と言われることが格段に多くなりました」
「男性が『なんだ。この子、男じゃん。女の子呼んでよ』って。その時に、誘ってくれた友人にも、ごめんねって思いました。もちろん、出会いを求めていた男性からしたら、女性がくると思っていて、自分がきたらびっくりするとは思うけど…。目の前ではっきり言われると衝撃が大きかった。“自分は人に迷惑をかける存在なんだ、生きている価値ないじゃん”と、落ち込みました」
それまでも、好きな男性ができても“どうせ自分なんて対象外”と消極的だったが、この一件から、ますます恋愛は苦手になった。そんな中、女性ホルモン注射によって、身体が自分の理想に近づき、容姿を褒められることは自己肯定感につながっていったと振り返る。
LGBTQというカテゴライズより重要なのは「自分」という“個”
「確かに。そうくくられてしまうことは、YouTubeで発信している側じゃなかったら嫌だったと思います。発信する場合はそのくくりは分かりやすく視聴者に伝えられる。でも世の中にはさまざまな性自認の方がいる。それぞれ悩み、こうなりたいけどできない、という方もいます。でも、どこかのきっかけで“自分らしく”なれる瞬間は誰にもあると思っていて。自分は自分。誰も同じ人はいない。それを無理にLGBTQにくくらなくてもいいんじゃないかって思います」
ちなみに彼女が凛という名に改名したのは、「凛」という漢字にはクールさと格好良さが内包されているから。生物学上は男性であり、徐々に少しずつ女性へと変化していった、その「二面性」を表す言葉として最適だと考えたからだと話す。
さらに「きっと私は先天的ではなく、後天的なんですよ」と明かす。女性と交際した時期もあった。女性、男性と関係なく人を好きになった時期もあった。これまで彼女がたどってきた人生、体験したこと、感じてきたこと、そして「後天的に」女性となったこと。そのどれをとっても「杉本凛」でしかなく、LGBTQと単にくくるのはためらわれる。
「世の中にはいろんな人がいて、自分のような人を認められない方もいらっしゃると思います。でもそれは仕方がない。だから全員に『LGBTQを認めて』『男の娘の人権を認めて』とは言わないし思いません。ただ理解してくれる人、わかってくれる人もいて、そんな大事で大切な人たちと過ごしていきたい。それで、いいんです」
(取材・文/衣輪晋一)