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世界が絶賛する『SHOGUN 将軍』を“現代の侍”藤岡弘、が語り尽くす、「よくやってくれた!」

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 今、世界で大きな注目を集めている『SHOGUN 将軍』(ディズニープラス)。真田広之が主演・プロデュースを務めた戦国スペクタクル・ドラマシリーズだが、初回配信の第1、2話は、配信開始から6日間で全世界で900万回(※)のストリーミング再生回数を記録。ディズニープラス(北米ではHulu)のスクリプテッド・ゼネラル・エンターテイメント・シリーズ作品として、歴代1位に。大手メディアや批評サイトでも、絶賛がやまない。なぜ本作は、ここまで海外の人々を魅了するのか? その答えを読み解くのは、早くから俳優として海外で活躍し、武道家としても知られる藤岡弘、だ。これまで、ハリウッドが描く日本の時代劇は、日本人から見ると多くの誤解や疑問を感じさせてきた。だが本作は、藤岡をして「よくやってくれた!」と言わしめる。「現代の侍」藤岡弘、が観た、『SHOGUN 将軍』の凄みとは?
※再生回数はストリーム総時間を1、2話の総尺で割り算出
ディズニープラスで超大作『SHOGUN 将軍』を一気見!(外部サイト)

自身がハリウッドで戦った苦労も…、だからこそ『SHOGUN 将軍』に感激

――世界的に話題になっている『SHOGUN 将軍』、ご覧になられていかがでしたか。

藤岡弘、観る前は、正直、不安がありました。これまでハリウッドで作られた日本の時代劇にはすべて違和感があったので、何もかも気になりすぎちゃってね。ちょっと、腹が立つこともあったくらい(笑)。でも、『SHOGUN 将軍』は違った。真田くん、よくやってくれた! と、嬉しかったですね。

――具体的にどういう点でしょうか。

藤岡弘、やはり、日本民族の精神性ですね。日本の内から湧き出ずる感性のダイナミズム、内面の熟成は世界一なんですよ。しかし西洋人にはまだ理解されてないから、“戦い”なんです。僕は父(家伝の古武道・藤岡流を継承する武道家)から、武士道の芯である死生観を教えられた。死に対する恐怖をどこまで抑えられるか、覚悟をもって事にあたることを学ぶのです。決意、決断、覚悟、信念のもとに己を天に捧げるという自己犠牲の精神こそ、日本人の侍精神だったわけです。揺るがず騒がず動ぜず…こうした、現代や西洋の倫理観では理解しがたい精神性を、映像でどこまでえぐり取ってくれるか。それが俳優としての一番の願いだったのですが、『SHOGUN 将軍』にはそこがしっかり描かれていました。

――真田さんは、日本の時代劇の専門スタッフを率いて撮影したと聞いています。

藤岡弘、そうだろうね。精神性や時代考証、所作や歩き方まで。細かいところですが、当時は農民、商人、侍で歩き方が違います。侍は、いつなん時でも刀を抜くことができるように、右足と右手を同時に出して歩く。侍の覚悟が表れた歩き方ですね。実際、『SHOGUN 将軍』ではそこもキャメラでしっかり追っている。それをやってくれたのは真田くんでしょう。そして、俳優たちも見事、応えてみせた。日本の伝統を背負う意識を持ち、日本人として恥ずかしくない覚悟で取り組んでくれたと思う。僕はもう、俳優陣に拍手喝采だね。

――藤岡さんご自身も、先陣を切って海外で道を作った方です。

藤岡弘、僕も、ハリウッド時代劇の主演(『SFソードキル』1984年)をやったからわかるんですよ。当時、こちらの意見を聞き入れてくれない状況でした。日本の精神性の理解が遅れていたように思う。そのため、僕は劇中でも、本物の日本刀で“実”を見せています。ただ、そのころはまだ人種差別もあり、どう訴えても日本民族の精神性や所作、覚悟について理解してもらうには難しい面もあった。しかし、今作は本当にうれしかった! 細かい所まで見事に再現している。
藤岡弘、も絶賛!『SHOGUN 将軍』視聴サイトはコチラ(外部サイト)

■武士道、女性の生き様、「本物の日本の魂をどこまで西洋に理解してもらえるかが肝」

藤岡弘、 SHOGUN,将軍

――ストーリーではどんなところに惹かれましたか?

藤岡弘、民族の違いやそこから起こる葛藤は、とてもうまく描かれていたね。お互いの精神性は異なるし、それぞれにプライドやアイデンティティがある。西洋人側でも、同じキリスト教ながらカトリックとプロテスタントがあって、そこで対立が起こる。本作ではそんな葛藤も描かれていて、西洋人・按針(コズモ・ジャーヴィス)や通訳をした戸田鞠子(アンナ・サワイ)を通して、見事に体現してくれています。

――たしかに、それが人間ドラマとして浮かび上がります。

藤岡弘、女性陣のお芝居も素晴らしかったですね。武士道には、男武士道と女武士道があるんです。例えば武士の刀の鍔(つば)には「こより」がついていたのですが、それは女性が作ったもの。死地へ向かう夫の「こより」が切れていたら、その身に何かあったと悟る。そうした女武士道があり、本作にはそれが見事に演出されていました。侍を育てたのは、そうした女性たち。伝統的な日本女性の生き様が感じられました。

――戦(いくさ)の裏側が描かれたところも魅力的でした。

藤岡弘、そうですね。なぜ関ヶ原の戦いで東軍が勝ったのか。状況的に見て、勝てるわけがない戦いで勝ったのは、背景に知略謀略策略があったからですね。重要なのは忍者、忍びの者…つまり情報戦。こうした背景はぜひ、大河ドラマでも描いてほしいと思います。あと、素晴らしかったのは殺陣(たて)です。日本刀は非常に重く、簡単にチャンチャンバラバラと舞うような殺陣は本来できない。

――たしかに、言われてみれば…。

藤岡弘、一刀の重さが、本作にはありました。武士には「心眼」があり、隙を見逃さない。西洋は「理性」と「知性」が先にあり、そのあとに「感性」が続きますが、日本は「感性」が先にあり、「気」のエネルギーを重視した文化です。「気」を消す、「気」を殺す、「気」を抜く、「気」を入れる、「気」を留める。感性をどのようにコントロールするかという世界であり、すなわち武道は「気」の訓練に他ならない。ゆえに急所を一瞬で突き、扇子1本でも相手を倒せる。そうした日本伝統の精神が殺陣から感じられる本作は、本当に大したものです。本物の日本の魂をどこまで西洋に理解してもらえるかが肝であり難しいところですが、今回は大成功だと思います。
最終回、第10話の配信がいよいよスタート、『SHOGUN 将軍』を観る!(外部サイト)

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