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(更新: ORICON NEWS

TikTok発、Z世代からブレイク 宮城の“激レア”銘菓「霜ばしら」 入荷即売れ切れの影に深刻な転売問題

 情報が一気に拡散される現代。長年にわたって愛されてきた商品が、思わぬバズを生むことも珍しくない。その一つが、入手困難となっている仙台銘菓「霜ばしら」だ。サクサクとした軽やかな食感と優しい甘みが魅力の銘菓であり、もともと入荷と同時に売り切れる幻のお菓子であったが、ASMRコンテンツをきっかけにさらに話題化してさらに入手困難となっていると九重本舗玉澤の専務執行役員・近江剛史さんは話す。

約50年、季節の銘菓として地元で愛されてきた「霜ばしら」 ASMRをきっかけに人気急上昇

 仙台銘菓「霜ばしら」とは、1675年創業の老舗「九重本舗玉澤」が販売する冬季限定のお菓子(10月〜翌4月)。その名の通り、霜柱をイメージした半透明の光沢が美しい薄い板状のアメで、口に含むと優しい甘みとともに2秒足らずでふわりと溶ろける。またサクサクとした食感は、まるで霜柱を踏んでいるような軽やかさだ。

 なんとも不思議な魅力に満ちたこの「霜ばしら」が、ここ数年、極めて入手困難になっている。九重本舗玉澤の公式オンラインショップでは発売から数分で売り切れることもしばしばで、近江さんは「すべてのお客さまの声にお応えできないのが心苦しい限りです」と低頭する。

 そもそも「霜ばしら」が発売開始されたのは50年あまり前。

「和菓子の醍醐味は季節を味わえること。仙台に冬がやってきたことを感じていただけるようなお菓子を作りたい。そんな思いから職人が試行錯誤を重ねて完成したのが『霜ばしら』です。これほど話題になる前は仙台土産のほか、空気がキリッと冷えた頃になると『そろそろ霜ばしらが食べたいね』と地元の方がご購入されていくことがほとんどでした」(近江さん/以下同)

 地元での人気も高くメディアで取り扱われることも多く、宮城県出身のタレントが全国ネットのテレビで紹介などもしてくれることもしばしばだが、近年これまでとは違った層にインパクトがあったのはASMRコンテンツだ。中でもTikTokには無数の「霜ばしらを食べてみた」動画がアップされており、Z世代を中心にその心地よい咀嚼音にハマる人が続出している。

 SNSで話題になっていることには「ありがたいです」としつつも、深刻な問題も起きている。転売だ。

予約受付は公式SNSのみ 抽選販売も取り扱い店舗公表もしないワケ

写真提供:九重本舗玉澤

写真提供:九重本舗玉澤

 数年前より九重本舗玉澤には「大口の注文問い合わせが増えた」という。

「それもほとんどが遠くの県の方からです。非常に喜ばしいことですが、一方で、以前、数十個単位で購入された方が実は転売されていたことがありました。その後も毎年、他社ECやオークションサイト、フリマサイトに倍以上の値段で『霜ばしら』が並んでいるのを知り、ご購入できなかったお客さまには大変申し訳ない気持ちでおります」

 350年にわたり地元で実直な商いをしてきた九重本舗玉澤にとって、落胆はいかばかりだったか。以来、直営店と公式オンラインショップでは1人2個までの販売とした。また「霜ばしら」は仙台のお土産物店や全国の百貨店の銘菓コーナーに並ぶこともあるが「問い合わせが殺到してご迷惑をおかけするため」、いつどこで販売するかは告知していない。

 なお、「霜ばしら」は公式オンラインショップ以外でのネット販売は行っていない。予約受付は公式SNS(X、インスタグラム)で開始の直前に告知する。

 あまりに入手困難なことから、何とか買えるようにしてほしいという声が届くことも多い。

「貴重なご意見として受け止めております。なるべく多くの方にお届けできるよう、販売方法なども工夫しながら、努力を続けていきたいと思っております」

Z世代による新たな楽しみ方に喜び「霜ばしらの魅力が咀嚼音という形で広く届いたのはうれしい」

写真提供:九重本舗玉澤

写真提供:九重本舗玉澤

 できる範囲の転売対策は講じてきた。しかし「いたちごっこです」と心労を語る。

 中には「売れるのだから店に損はないじゃないか」とうそぶく転売ヤーもいる。しかしそれは、職人の気概を踏みにじる意見だ。また消費者サイドも、転売品の購入は品質が保証されていない商品を手にするリスクがあることを知っておこう。

「職人が1つ1つ手作りしている『霜ばしら』は熱、衝撃、湿気に極めて弱い繊細なお菓子です。公式オンラインでは細心の注意を払ってお送りしていますが、転売サイトではどのような扱いをしているかは計り知れません。本来の魅力を損なった『霜ばしら』がお客さまに届いてしまうのは、私どもが最も胸を痛めているところです」

 では、製造数を増やすことはできないのか。これについても近江さんは首を振る。

「霜ばしらは熟練した職人技でしか作れないため、1日の製造数は必然的に決まってきます。また熱に弱いお菓子ですので、気温によって作れない日もあります。今年は仙台も残暑が厳しかったため、例年に比べて製造開始が遅くなり、全体の出荷数も少なくなってしまいました」

 老舗銘菓店に思わぬ混乱を招いたASMRコンテンツのバズ。しかし近江さんは意外にもポジティブにも捉えていた。

「お菓子は味はもちろん口溶け、食感といった五感で楽しむもの。霜ばしらの魅力が咀嚼音という形で広く届いたのはうれしいことです。また霜ばしらをきっかけに、『杜のゆべし』や『九重』といった数百年続く弊店の定番菓子を食べてみて『おいしかった』という声も頂戴しています。14代続く九重本舗玉澤を、味も品質も変えることなく未来に繋ぐのが当代の役割。若い方にもぜひ召し上がっていただきたいですね」

 3年前には霜ばしらの箱と缶をリニューアル。シックで洗練されたパッケージがワンランク上の手土産として珍重されている。仙台を訪れた際にはぜひ九重本舗玉澤の直営店に訪れてみてほしい。
(取材・文/児玉澄子)
九重本舗玉澤
公式ホームページ:https://www.tamazawa.jp/
X:https://twitter.com/TamazawaSendai?s=06
Instagram:tamazawa.sendai

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