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スキンケア「美容液」に8万円も…? 憧れの”諭吉美容液”、その価値はどう定義されるのか企業に聞いた
数百円でも美容液が買える時代、コスパや成分軸だけでは語れない価値基準
だが、その前提がありながらも、皆が美容・スキンケアに月数万円をかけられるわけではない。美容に興味のない層からすると、1万円を超える“諭吉美容液”の価値を問う声は当然聞かれる。市場には数百円から1000円台で購入できるコスパ重視の“プチプラ美容液”が豊富にそろっているため、「高価格帯アイテムとの差を感じられない」「自分の購入できる予算の範囲内で選ぶ」との意見もあるだろう。しかし実際は幅広いアイテムから選べるほど化粧品全体の技術力が上がった“時代に沿った価値基準の変化”があったからこそ、コスパや成分だけでは語れない選び方があるとポーラで商品開発を担当する石井飛鳥さんは話す。
「昔より様々なアイテムが市場に溢れ、ケアに求める効果も複合的な中、『確かなものを使いたい』と考える方が増えてきています。配合成分、口コミ等のリアルな評価、肌研究をはじめとするサイエンス、使用時の心地よさ、肌実感など、自分にとって最適で信頼できるアイテムを選び使いたいと考えている方は多いです。新しい肌悩みが増えたタイミングで、よりニーズを満たすアイテムを検討し始める傾向です。
また、コロナ禍の自粛生活を経て、自分をケアすることへの意識が高まり、商品選びにも変化がみられます。スキンケアは日常で自分をケアする時間なので、肌のケアにとどまらない価値を求めて投資をしたい、心地の良いテクスチャーや癒される香りなど感性的な価値を重視する声も多く伺います。コスパや肌実感だけではなく、自分が使っていて気分が上がるという軸でスキンケアを選ばれる方が年々増加していると感じます」
「“1品1品に特別感があるもの”という考えが原点」
その発売経緯は「ブランドが大事にしている真心と技術、サイエンスをしっかりとお伝えできる商品として開発したいという思い」だったと開発担当の石井さんは当時を振り返る。
「2006年が当社の創業77周年で、それを記念して発売されたのが初代グランラグゼでした。当社を象徴するアイテムであり、『最上級の真心と技術とは何か』を突き詰めた商品です。例えば、化粧品技術者の世界大会で最優秀賞を受賞した技術者が研究を担当していたり、当社が誇る高機能成分を1品にすべて凝縮していたり、品質管理者が1つ1つサインを商品に書き入れていたり、“1品1品に特別感があるもの”という考えが原点にありました」
変わりゆく美への考え方、“一石を投じる”ことで新たな価値につながる
「例えば2013年に発売した2代目には“オートファジー”が搭載されています。後にノーベル賞を受賞したオートファジー理論をいち早く化粧品に応用したものです。オートファジーが肌の中に蓄積された老廃物を輝きに変えていくという機能だったので、メッセージも『年を取ることは悪いことではない』という方向に。当時はまだアンチエイジングや年を取りたくない考えが主流だったなか、重ねた時間をプラスに転じられるような想いを込めていました。当時の美容への考え方に逆行するような動きだったと思います。
3代目は“脳科学”がテーマとなり、肌だけを見るのではなくて人の体全体を捉えることを根幹としました。香りでも好奇心が上がる、感触でも脳を刺激するというエビデンスを取っており、肌というものを越えて生体全体が影響し合ってコミュニケーションを生んで良くなっているというようなメッセージを出しました」
“内面をケアする時間”の大切さを見つめ直すことを突き詰めたものが、4代目『B.AグランラグゼIV』だという。“身体を休めている時”も充実しているからこそ、次なる行動を起こすための活力となると、今の時代ならではのメッセージが込められ、「輝きと引き締め」がテーマに。「“肌効果”という化粧品メーカーとして、絶対にお約束したいところを目指す思いがありました」。
「生活の大きな変化として、コロナがありました。マスクを取って、あらためて自分の顔を見る機会が増え、お手入れの意識自体も高まりを感じます。『肌のお悩みは何ですか?』と質問させていただくと、皆さんほぼすべての項目にチェックが付きますが、その中でも何が一番気になるかというと『たるみ感や形状』と『くすみ』と答える方が多かったんです。このタイミングだからこそ、“肌効果”という私たちとして絶対にお約束したいところを高めていくべきだと。さらにこの商品でしか得られない機能を搭載しようという形になりました」
“これを使っている自分が好き”「マインドの面から選ぶ」ユーザー意識の変化
「まず、技術と効果について確実に言えるのは、これまで市場に存在していない、業界初の新発見や技術を開発してきたこと。何十年もの月日をかけて発見した、どこにもない研究を搭載したオンリーワンの商品であるという点です。新発見だからこそ最先端の美容ケアができ、機能性も含めて商品の魅力だと考えています。『B.A グランラグゼ IV』は今回、新開発した当社オリジナル成分に加え、当社が誇るスター成分をほぼ全て入れていて、『リンクルショット』『ホワイトショット』『B.A』の第6世代など、ほかで配合することができないオリジナルエキスを計14種類も配合しているので、その点で自信を持っています」
「一つは、スキンケアの時間を充実させるアイテムを選んでいく考え方です。『B.A』だから、ポーラブランドだからと信じていただけている。パッケージを開けたときの感動やワクワク感、手に馴染むボトルの感触や形、香りなどを突き詰めていることが、『ブランドへの信頼』となり、『スキンケアを通した体験』で選んでいただくことにつながります。もう一つは、商品選びで大切にされる軸が皆さん違ってきている点です。成分や効果で選ぶ方ももちろんいらっしゃいますが、自分が使っていて心地良いものを使いたい意識の高まりも感じます。例えば、『これを使っているときの自分が好き』とか、そういったマインド面での選んでくださるという部分まで、化粧品の価値ととらえることができると考えます」。
『B.A グランラグゼ IV』の共通美容成分は、同社エステ部門でも使用されている。「エステは特別な体験として、その価値を象徴するものだと考え、こだわりをもっています。人の手の温かさで癒されること、気持ちや心への実感も大事にしています。そこで気持ち良くなっていただいたり、肌への効果を感じていただいたり、それをご自宅でも体験していただけるような、アイテムとの繋がりを持っていただく場にもなっています」。
ありとあらゆる化粧品があふれる中で、もう機能性だけでは差別化ができなくなってきている現状がある。そのなかでも『B.A』シリーズは、ベーシックケアラインが1アイテム1万円〜数万円する高価格帯でありながら、石井さんの担当する『B.A ミルク フォーム』は発売から1カ月で予測の3倍の7万4000個を販売するなど“爆売れ”状態が続いている。
「たくさんあるなかで選んでいただくからこそ、ブランドの思想を伝え続けていくことが大切だと考えています。6代目になる『B.A』はコロナ禍の2020年にリニューアルし、自粛生活で社会全体の活気がなくなった時期での発表となりました。混沌としていましたが、そこから希望をいかに感じていただけるか。年齢に関するネガティブな意識を払拭し、いつでも『人の可能性は広がる』というブランドコピーを伝え続けてきた結果、今があると思います。『B.A グランラグゼ IV』は当社の象徴となる商品なので、その商品だから使いたいと思ってくださる方がもっともっと増えるように価値を伝え続けていきたいと思っています」
PROFILE 石井飛鳥
株式会社 ポーラ ブランドクリエイティブ部 B.A開発チームで『B.A ミルク フォーム』『B.A グランラグゼ IV』のプロダクトリーダーを担当。