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「ドラッグストアには勝てないという先入観あった」イトーヨーカドー、“スーパー”の枠を超え変革する背景

  • イトーヨーカドー横浜別所店

    イトーヨーカドー横浜別所店

 イトーヨーカドーが大きく生まれ変わろうとしている。変革の柱としているのが「フード&ドラッグ戦略」で、食品売り場とドラッグ・コスメ売り場をシームレスに繋げた買い回り利便性の高い売り場を、順次80店舗以上に拡大する予定だ。医薬品や日用品を充実させる一方で今年3月には自社開発のアパレル業からの撤退を発表。また今後は首都圏に注力し、2026年2月末までに33店舗の閉店も決定。規模縮小を強いられる中でどのような未来を思い描くのか。イトーヨーカ堂に話を聞いた。

顧客調査で見えてきた課題「日用品はイトーヨーカドーでは買わない」

 同社では、2021年度よりドラッグストアを内包した新業態の店舗展開を進めている。「フード&ドラッグ戦略」と銘打たれたこのリニューアル施策はすでに26店舗(2023年6月末時点)で実施されており、ほぼ全店舗で売上増を実現しているという。

「近年、小売業で売り上げを伸ばしている業態が、EC、コンビニ、食品、そしてドラッグストアです。このうちセブン&アイ・ホールディングスが保有していない業態はドラッグストアだけ。ただ、イトーヨーカドーでは48年前より医薬品を扱ってきた実績(登録販売業)があり、これを生かした形です」(株式会社イトーヨーカ堂 取締役執行役員 ライフスタイル事業部長 梅津尚宏氏/以下同)

 イトーヨーカドーでは従来から多くの店舗で医薬品はもとより、ドラッグストア商材と呼ばれる日用品やコスメを扱ってきた。しかし顧客調査によると「日用品はイトーヨーカドーでは買わない」という声が多かったという。

「特に3〜40代のお客さまにその傾向が顕著で、理由は『ドラッグストアに比べて高い』『品揃えが中途半端』という声がほとんどでした。実際はドラッグストアと遜色ない価格設定であっても、生まれたときからドラッグストアに慣れた世代にとって『総合スーパーで日用品を買うのはコスパが悪い』というイメージが根強かったようです」

 一方で3〜40代の顧客調査から吸い上がってきたもう1つのニーズがタイムパフォーマンス。いわゆる“タイパ”だった。

「ここ数年のドラッグストアの躍進は、食品を扱うようになったことが大きいとされています。とは言え、ドラッグストアでは食品はそれほど充実していません。一方でイトーヨーカドーには従来から強かった食品に加えて、ドラッグ商材の品揃えも充実できる売り場面積があります。お子さんのいる共働き家庭が複数の店舗を買い回るのは大変なこと。食品も日用品もワンストップで買えれば、コスパもタイパも満足していただけるはず。そうした考えのもと、推進しているのがフード&ドラッグ戦略です」

レジを1ヵ所に集約 “タイパ”にこだわる3〜40代顧客層に向けた「買い物しやすい」工夫とは

店内の中央の配置されたレジ

店内の中央の配置されたレジ

 すでに26店舗で実施されているフード&ドラッグ戦略のモデル店舗として、6月30日にリニューアルオープンしたのが横浜別所店だ。同店の特徴は食品売り場とドラッグストアがワンフロアに融合していること。またリニューアル前は5ヵ所に分散されていたレジを中央の1ヵ所に集約し、すべての買い物を一度に会計できる形とした。リニューアルと同時にレジの7割にセルフレジを導入したことも「レジに並ぶストレスが緩和された」と好評だという。

  • 買い回りしやすい広い通路

    買い回りしやすい広い通路

「通路を広くしたことから『買い物がしやすくなった』という声も多くいただいています。フード&ドラッグ戦略の実施店舗では通路の幅と品揃えの両方を実現させるために、従来より背の高い什器を導入しています。さらにドラッグストアとの差別化を図るべく、利便性ニーズ(モノ視点)に加えて、セルフケアや自宅の環境、ペットといった癒しニーズ(コト視点)を取り入れた品揃えを強化しています」

 なお同店では、2階フロアにセブン&アイグループのベビー用品専門店「アカチャンホンポ」があるが、中でも購入頻度の高いベビーフードなどを「アカチャンホンポセレクション」として1階フロアでも展開。「アカチャンホンポセレクション」は他のフード&ドラッグ戦略の実施店舗でも取り扱いを拡大中。そのほか同グループのLOFTの商品(コスメ、ケア、健康雑貨、ギフトグッズなど)も取り揃えるなど、グループのシナジーを存分に生かした形だ。

「顧客調査をしたところ、特に3〜40代の方々には『失敗したくないニーズ』というインサイトがあることがわかりました。信頼できる接客(薬剤師、美容部員など)、信頼できる価格(月間安い値、毎日いい値など)、そして信頼できるブランド(アカチャンホンポ、LOFTなど)。イトーヨーカドーではこの3つの信頼で、お客さまの『失敗したくないニーズ』にお応えしていきます」

“ドラッグストアには勝てない”先入観を払拭するための進化に「勝機はある」

ペット用品も充実

ペット用品も充実

 そもそも同社では、ドラッグストアが近隣にある店舗では、ドラッグ商材の品揃えをあえて充実させていなかったという。

「理由は『ドラッグストアには勝てない』という先入観があったからでした。ところがフード&ドラッグ戦略の実施店舗では、ドラッグストアが多いエリアほど、売り上げを伸ばしていた。考えてみれば当然のことで、ドラッグストアが多い地域にはドラッグ商材のニーズもあるわけです」

 今後、同社では首都圏の店舗に注力していく方針を掲げている。首都圏の駅前にはドラッグストアも多いだけに、「勝機は大いにある」と自信を滲ませる。

 フード&ドラッグ戦略を推進する一方で、今年3月には創業事業である自社アパレルからの撤退が発表された。また2026年までに地方を中心とした33店舗を閉店させることも決定。何より食品売り場とドラッグストアが融合したその姿は、総合スーパーのイメージの強かった従来の同社を大きく様変わりさせている。

「時代によってお客さまが求める価値は変わります。現代の人々が求める『コスパ・タイパ』、『癒し』、『失敗したくない』の3つのニーズに応えていくためには、従来の姿にこだわることなく、まったく新しい業態に生まれ変わる必要があります。時代によって姿を変えながらも、常に地域のお客さまに寄り添うコミュニティでありたい。それこそがイトーヨーカドーが今までもこれからも進むべき方向だと考えています」
(取材・文/児玉澄子)

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