アニメ&ゲーム カテゴリ
ORICON NEWS

23年前のPS2ソフトから蘇った巨大“ラスボス”、実力派モデラ―が市販パーツ一切なし“フルスクラッチ”ゾックに挑戦

 模型サークル「C.I.P」の代表を務め、モデラーとしてミキシング作品を応募したホビージャパン主催の『第25回全日本オラザク選手権』では、「ビルドダイバーズ部門-銀賞」!「SDガンダム部門-銅賞」を受賞。モデラーとして確かな実力を持つJUNさん(@JUNJTGRADE1)は、近作として市販のガンプラなどのパーツを一切使わない“フルスクラッチ”でゾックを制作。一見、ガンプラとも見まごうその完成度の高い作品が、多くの人たちから賞賛された。近年進化が著しいガンプラをベースにせず、なぜ“フルスクラッチ”で制作に至ったのか、その背景を聞いた。

独学で3DCADを勉強し、モビルスーツを“設計”

――フルスクラッチで制作したゾックが4000件近いいいねを獲得し、多くの方々から称賛されました。
JUN私が制作した作品を、多くの人に見てもらえるのはとてもうれしいですし、モチベーションアップになります。このゾックは、20年以上前のゲームに登場したものですが、多くの方に懐かしいと思ってくれたようで、みなさんの当時の思い出をコメントでもらったり、共感できたことがとてもうれしかったですね。

――4本脚のゾックって珍しいと思っていたのですが、ゲームに登場する機体だったのですね。そもそも、なぜ本作を作ろうと思われたのですか?
JUN2000年12月に発売されたPS2のソフト『機動戦士ガンダム』のラスボスがこのゾックなんです。今までの2本脚から4本脚に大幅にデザイン変更されていて、当時とても衝撃を受け、「このゾックを立体化したい」と思っていました。
 その当時、プラ板やパテでのスクラッチや、シリコンでの複製はすでにやっていたのですが、環境も技術も至らずに、こだわっていた1/100サイズでの制作はかないませんでした。それから数年が経過し、昨年11月に、以前から興味のあった3Dプリンターをプラモデル制作に導入する事を決め、独学で3DCADを勉強しました。前後左右対称デザイン・4本脚を制作するにあたって3Dモデリングは最適の手段でした。そこで「今なら1/100で、あのゾックを制作できるのでは」と思い、どうせ作るなら市販パーツを一切使わないフルスクラッチで制作を始めました。

――3DCADって建築などで使われるツールですよね。それを導入してどの様に制作されたのですか?
JUNこの4本脚ゾックは、立体化されているのが当時発売されていた『ガシャポン MSセレクション』だけ。小さいサイズで、細かい部分が省略されていたので、ゲーム画像を参考に自分でリデザインするところから始めました。そこで、さらに好みのデザインになるように、各部のバランスやデザインを少しアレンジしました。
 次に3DCADで外装から形状出しをし、内部フレーム・関節を制作し、各部のディテールを作り込んでいきました。各パーツを3Dプリンターで出力し、修正の繰り返しをした後は、ひたすら表面処理を行い、塗装とデカール貼り。その後は組み立てと補強とLEDの埋め込み・配線。最後に展示台の作成をして完成です。

今後の制作は「アナログの良さ、デジタルの良さどちらもあるので、使い分けていきたい」

――立体化されたモチーフも説明書もないなかでの制作は、苦労たくさんあったのではないかと思います。実際に制作してみていかがでしたか?
JUN見えている外装よりも見えていない部分の制作には、苦労しました。特に、内部フレームや関節の在り方や、高さ275mm×横325mm×奥行420mmの大サイズなので、崩壊しないように補強の為に、内部にトラスの設計、木材・真ちゅうの配置、さらに、3D出力での内部硬化と強度を踏まえた各パーツの分割などは、大変でしたね。上記を考え、デザインするのに総制作時間の約3分の2の時間を費やしました。

――こだわりが詰まっているわけですね。
JUNはい。アニメでは活躍があまりなかったゾックですが、このゲームでは“ラスボス”。なのでゲームプレイヤーが「こんなヤツに勝てるのかよ!」と思うような“圧倒的ラスボス感”を出す為に重厚感を意識して、手脚を元デザインより太くし全体をボリュームアップしました。ガンプラを作るにあたっての自分のこだわりですが、連邦系の機体は、スジ彫りなどのディテールを多くし先鋭的なイメージ、ジオン系の機体はディテールを最低限にして無骨なイメージになるように制作しています。
 もともと、キット化されにくい機体(過去作で言うと、1/100ドラッツェ、1/100ザクタンク、1/60サイコミュ高機動試験型ザクなど)を制作するのが好きで、おそらくこの4本脚ゾックが1/100でバンダイから発売される事はないと思うので完成してとても満足です。

――“フルスクラッチ”作品にもさまざまな手法があるなかで、初めて3DCADで設計された作品が完成しました。今回の制作で学んだこと、得たこと、気づいたことはどんなことでしょうか?
JUN今回は3DCADで設計し、3Dプリンターで出力した初の3Dモデリング作品です。アナログのみ(の手法でフルスクラッチを)制作されている方の中には、本作を見て「なんだ出力品か」と思われる方もおられると思います。ただ、実際に挑戦した結果、自分で設計し、出力する難しさを感じることができましたし、今までアナログでスクラッチしてきた経験がとてもいかされたと思います。いかにデータでいいモノを作ったとしても、出力後にプラモデル制作にとって欠かせない基本的な表面処理と塗装ができないと、完成度は大きく変わってくると思います。なので最終的にはアナログの基礎技術力がとても大事だと思いました。アナログの良さ、デジタルの良さどちらもあるので、今後は使い分けて制作していきたいと思います。

――ご自身はミキシング作品で賞を取られるほどの実力派モデラーですが、それに飽き足らず、ベースもない状態のフルスクラッチ作品も作り上げています。実際、どちらが楽しいですか?
JUNミキシングは発想力をフルに活かして制作しています。フルスクラッチと既存キットのカスタムはそれぞれ違う楽しさがあるので、作りたい作品に合わせてどちらの手法でも制作していきたいですね。

――では最後に、JUNさんにとって「ガンプラ」とは?
JUN刺激をもらえるモノであり、自分を具現化できるモノです。これからも、「工作」「塗装」「発想」を大切にして、多くの人の目に留まり、見た人が「ワクワク」や「懐かしい」など、何かを感じてもらえる作品をこれからも作っていきたいと思います。

あなたにおすすめの記事

 を検索