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米倉涼子の“居場所”とは?「請け負ったものをどれだけ一生懸命やれるか」
米倉この本、読んだことあったけ?と忘れちゃうことも多い中、この原作ノンフィクションは10年くらい経っても忘れられない1冊です。「国際霊柩送還士」という職業があるんだ、というところから、ご遺体を扱うことの大変さ、海外から日本へ、または日本から海外へ運ぶ事務手続きの煩雑さを知りました。ご遺体は物理的に重いので、ご遺族に届ける前に修復したり、死化粧をしたり、着替えさせたりするのも一苦労です。誰もがやりたいと手を上げるような仕事ではないけれど、誰かがやらなければならない必要な仕事。それを「自分の仕事だと思えた」ときっぱり言える境地にまで行きついた女性のストーリーに衝撃を受けました。事務的な対応をすることだってできるけど、彼女は思いっきり泣いて、思いっきり頑張る。心を込めてご遺体と向き合い、故人とご遺族のパイプ役を果たし、ご遺族が前向きに人生を歩めるように手助けをしている。その仕事ぶりに感銘を受けました。
米倉100%全力でなりふり構わず仕事をする一方で、お買い物も好きで、おいしいものにも目がないおばちゃん、という感じを出せたらと思いました。モデルとなった利惠さんがまさにそうで、革ジャンやスカジャン、原色の洋服を着こなし、さりげなくブランド品を身につけ、食事にもすごくこだわりがあって、手作りのお弁当の差し入れをしてくださるなど気配り上手な方でした。普通の人の3倍ぐらいパワフルで、フレンドリーで、人をフィルター(色眼鏡)にかけてみない。生身の人間だからきっと弱いところもあると思うのですが、それにもひるまない人なんだろうな、と感じたので、私も心のエネルギーを満タンにして表現したいと思いました。
米倉そのせりふを読んだ時にハッとしたんですよね。就職活動をして会社に入っても、向き不向きとか、好き嫌いとか、やってみないとわからないですよね。私も、この仕事に落ち着くなんて、思ってもみなかったことです。でも、ほかに何かあっただろうか、と考えると、トリマーになりたいと思っていたけど、なったとしてちゃんとやれてるかな?と思うし、デスクワークは…きっとできてないと思うし(笑)、やっぱりこの仕事なのかもしれないな、と思います。自分のスキルが足りているかと言われると、まだまだですが。
人それぞれ居場所を見つけていくのが人生なのかもしれないし、割と早く一発で見つかる人もいるかもしれないし、一生見つからずに終わるかもしれないし、そう考えると、「居場所なんてどこにもない、みんな無理やり作っているんだ」というせりふも腑に落ちるというか。結局、自分が請け負ったものをどれだけ一生懸命やれるか、ということだと思います。
米倉このドラマでは、誰も予期していなかったことが、毎話、起こります。自分の身にも起きるかもしれない、というのはわかるんだけれど、それを期待している人はいないわけで、「死」に至るまでは「生」があるわけだから、「生きる」ということを無駄にしてはいけない、と思いました。そして、どんな仕事にも、誇りを持って、心を込めて働いている人たちがいるということに思いを馳せていただけたらと思います。
予告編
『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』
キャスト:
米倉涼子 松本穂香
城田優 矢本悠馬 野呂佳代 織山尚大(少年忍者/ジャニーズJr.) 鎌田英怜奈
徳井優 草刈民代 向井理 遠藤憲一 ほか
原作:佐々涼子「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」(集英社文庫)
脚本:古沢良太 香坂隆史
音楽:遠藤浩二
監督:堀切園健太郎
制作:NHKエンタープライズ
作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0B66GL9PH