ORICON NEWS
相次ぐ中古CDの買取り終了…様変わりする存在価値、CDが復権する可能性は?
バブル弾けた後も日本経済を支えた…90年代、絶頂期を迎えた音楽市場の象徴がCDだった
同社担当者はこのニュースについて「寂しい」と率直な感想を語った。「音楽の聴き方自体が、20年前から変わってきていますので、今、CDが目を向けられなくなっているのは正直仕方のないことかもしれません…このニュースを聞いた時は、正直寂しかったですが、予想できうる流れではあったと思います」。
かつて1982年にCDが登場した際、レコードも同じような道を辿った過去がある。間にカセットテープなどもあったが、当時プラスティックの透明なケースに入った、角度を変える度に色が変わる円盤の姿に“未来”を感じた人も少なくないだろう。
時代もあったかもしれない。この頃のCDはレコードと比べて圧倒的に売れた。globe、安室奈美恵、華原朋美、TRF…“小室ファミリー”と呼ばれ小室哲哉がプロデュースしたアーティストがミリオン、ダブルミリオンを連発。一方で“バンドブーム”も社会現象に。X JAPAN、LUNA SEA、L'Arc〜en〜Ciel、GLAYなど、日本のROCKシーンが確立され、独自の世界観で熱狂的に音楽シーンを賑わせていた。そして1998年に浜崎あゆみ、宇多田ヒカルがデビュー。特に「Automatic」「First Love」の衝撃は忘れられず、メディアがこぞって取り上げ、街のどこにいても彼女たちの曲が流れていたのは今思えば異質な状況だった。
当時、バブルはとっくに終わっていた。社会情勢を見れば、90年代は暗黒の時代。しかし、CDだけは飛ぶように売れていた。日本経済を音楽が支えていた側面があり、それを牽引してきたのがCDだったのだ。
CDがここまで売れていた理由として「手軽さもあったと思います」と同担当者は語る。サイズが小さく、持ち運びが楽。ポータブルCDプレイヤーの発展もあったほか「パソコンでもDVDプレイヤーでもプレイステーションでも聴けた。誰でもどこでも聴ける手軽さがあり、かつレコードと違って裏返す必要なく、ずっと再生し続けることも可能だった。さらにはダウンロードにはない『歌詞カード』。音楽解説が書かれていることもあり、ビジュアルブックのような体裁で、そのデザインも含めて“アート作品”として楽しめた。レコード世代にとっては、このブック形式は本当に革新的だったと考えられます」。
レコードのように割れにくい、場所も取らない、車でも聞ける、カセットテープだとテープが伸びたり温度に弱かったりもする。これらのメリット、J-POPブームもあり90年代はCDの天下だったと言っていい。そこに登場したのがiPodだ。2000代半ば頃から変化が起こり始める。
推しを応援する文化として、コレクターズアイテムとして…変容する存在価値
CD全盛期ではCDをコレクションして自分だけの棚を作って並べる・それを眺めるのも一興だった。だがZ世代においては、そもそもCD自体を手にしたことがないという人もいる。こうした状況を救ったものの一つが、アイドルソングのヒットだった。一家に1枚だったCDが、個人で1枚、さらには個人で数枚に。アーティストを応援する価値基準としてあり続け、曲そのものが持つ価値とは別軸でのCDの価値が提示された。
「アイドルソングというのは『恋するフォーチュンクッキー』に代表されるように、音楽マニアから見ても価値のあるサウンドを追求していたり、新進気鋭のアーティストが曲を寄せ、最新のトレンドを取り入れたり、実験的なサウンドを試みたりするなど、“音楽”そのものに“価値”があるものが多い。しかし、あまりにも数多く世の中に流通してしまう部分は否めず、CDを中古買取りで依頼していただいても、“中古市場”的には価値が低くなる。値段がゼロになってしまうことも。販路を考えたり、買い取ったものをセット売りをするなど工夫をしていますが、買取が厳しいといった状況になることもあります」
同社では、「厳しい状況に変わりありませんが、コレクターズアイテムとしてCDの価値を広げていきたい。今後レコードのように変容する可能性にも期待する」という。
「昨今のアナログレコードの流行を見ると、CDというのは、レトロな価値観が付与されたレコードと、最新のダウンロード、サブスクの間で、ふわふわとした位置にとどまっている。ですが今もCDのコレクターはいますし、プレミア価値のあるCDもある。サブスクやダウンロードでは表現できない“音質”にもこだわれる。レコードが再注目されたように、今後CD、中古CDも復活の可能性はあります」
今価値がついているCDとは…意外? ゲームのサントラが高値で取引される時代
ほかメタリカやピンク・フロイドも初盤は帯の種類が違い、その帯がなければ数千円だが、あると数十万円になったりもする。“希少価値”、それは中古CDでも重要なキーワードだ。昨今、高値がついているのは90年代のアメリカのインディーズのギャングスタラップ。これらは自主制作でCDしか発売されてないことから、希少価値がある。
また、昨今のレコードブームがCDブームにつながる可能性がある。「レコードは、購入し、針を落としてやっと音楽が鳴る。音楽と“向き合う”という“体験”に結びつくのです」。思えばCDもそうだ。予約し、店頭へ買いに行き、予約特典などももらい、ワクワクしながら帰宅、いよいよプレイヤーへ挿入…。音楽にたどり着くまでにいくつもの工程があり、それをこなすことも醍醐味になっていた。いつでもどこでも気軽に聴けるサブスクとは異なり、“どんなシーンで聴くか”という部分でもCDであるからこそのこだわりが強く出ていたのではないか。
過去の8cmの縦長シングルもその形状ゆえのユニークなデザインがあったりする。レコードでもデジタルでもない音楽も存在する。「CDでしか聴けない」。そういった音楽もあるため「CDが終わったとはまだ思いたくない。時代の流れで、例えばインフルエンサーの影響などで、CDに価値がつく時代が来るかも知れない」。
“価値”とは不思議なもの。ゴッホの絵画にしても生前はまったく売れなかったが死後、高額で取引されるようになった。同社は「エコストア」を名乗っている。廃棄は可能な限り避けたい。今、あなたの手元にあるCDも実は将来突然、“価値”が付与されるかも知れない。完璧に不要なものなど、世の中には、どこにも存在しないのだ。
(取材・文/衣輪晋一)
レコード宅配買取件数 全国1位 「エコストアレコード」
https://ecostorecom.jp/(外部サイト)