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濱津隆之、『カメ止め』ヒット後の苦悩…芸人・DJを経て辿り着いた“俳優業”成功の鍵は「目的がないこと」

 2018年、スマッシュヒットした映画『カメラを止めるな!』。主演の濱津隆之はそれまでほぼ無名状態だったが、同作ヒット以来、映画・ドラマ・舞台・CMの出演が止まない。ドラマ『ノーサイド・ゲーム』や映画『キングダム2』での好演が話題となり、先週からは、初主演ドラマ『絶メシロード』のseason2がスタートした。一見、順調なサクセスロードを歩んでいるかのように見えるが、実は元芸人・元DJというユニークな経歴を持つ。その後、『カメ止め』の“一発屋”にとどまらず、俳優として大成した彼の生き様に迫る。

チョコプラ&シソンヌと同期でNSCに入所、好スタートを切るも芸人からDJに転身

 もともと芸人を目指し、大学卒業後、NSCに入所した濱津隆之。チョコレートプラネット、シソンヌ、パンサー向井ら同期とともに、当時800人以上もの研修生がしのぎを削っていたが、濱津はいくつかの授業で選抜クラスに入る成績優秀者だった。しかし、NSC卒業後1年足らずで芸人を辞めた。

「ひたすらバイトしながらの芸人生活でした。一応、吉本の若手お笑いライブで1位を獲るなどもしましたが、“本当にこのままでいいのか”と思い始めたのです」
 大の音楽好きだった濱津は、大学卒業にあたり、お笑いか音楽か、悩んだ末に芸人の道を選んだ。しかし、その道を進むに連れて、音楽への想いを抑えきれなくなっていた。

「良いスタートを切っていたし、相方もいたのに、そんな自分勝手で1年足らずで辞めてしまって…。でも僕は、昔からやりたいことをやらずにいるということが出来ない性格で、とりあえずやってみなければ、というところがあったのです。そこで行き着いたのが、DJという仕事でした」
 ところが、実際にDJの世界に飛び込んでみると「これを仕事にしていく能力は僕にはない」という現実にぶち当たった。だからと言って、中途半端に辞めてしまった芸人の道にはもう戻れない。そんな絶望の淵で、自分がコントで“キャラを演じる”ことが好きだったことに思い至った。「それなら役者をやってみよう」。──俳優・濱津隆之の誕生である。

「新しいことに次々挑戦するのは不安しかない。でも、それよりも、自分の中に大きくある興味を気にしたまま、やらずに死んでいくのが嫌だったんです。やらないより、やった方がいい。もちろん、自分に合う・合わないはあると思います。よく“自分で自分の限界を決めるな”という言葉を聞きますが、僕は“限界はある”と思っている。合わない方で自分を信じて執着するより、見極めた方が良い。ゴールは1つでも、そこへ至る道はたくさんある。そんな多くの選択肢の中で、僕は身の丈に合った選択をしてきた結果、今に至ります」

『カメ止め』は“身の丈に合わない”ヒット?「流れ着いた」役者業で再びぶち当たった壁

 自分の限界を決めるというのは、とても勇気のある行動だ。諦めなければ、この先に道が開けるかもしれない。しかし、濱津のように早々に引き返し、違う道を選ぶことで、明るい未来が待っているかもしれない。時にその見極めは、非常に難しい。

「そんな時は、それが本当にやりたいことなのかどうか、自分に問います。重要なのは、どう生きて、どう死ぬか。自分の筋が通っていれば、その道を諦めても、あるべき場所へ流れ着くと僕は思うんです」

 かくして役者の世界へ「流れ着いた」と表現する濱津。そんな彼を一躍スターに押し上げたのが、インディーズ映画『カメラを止めるな!』だ。この頃、濱津はさまざまな小劇場の作品に出演していたが、結果的に、自分の人間味を面白がってくれる人たちと仕事をするのが、最も自分に合っていると解を得ていた。まさに上田慎一郎監督も、その1人だ。
「実は『カメ止め』の役はみんな、上田監督の当て書きなんですよ。誰もがあそこまでヒットするとは思っておらず、あれよあれよとコトが進んでいき、実感して噛みしめる間もありませんでした」

 それぞれの個性を理解し、最大限に引き出してくれる上田監督の力量により、『カメ止め』は大ヒット。主演俳優である濱津のもとには、様々なオファーが殺到した。しかし、世間の注目を集めるスポットライトの裏で、彼は再び苦悩に襲われていた。

「それまでの人生の中で、自分にやれること・やれないことを見極め、身の丈に合った舞台の世界に行き着いたつもりでした。しかし、そうして辿り着いた役者業で、ありがたいことに様々なオファーを頂くようになり、どうしても僕の人間味とは合わないお仕事も頂いてしまう。それは役者としては命取りとなる“自分を意識しすぎること”と似ていて、正直、2年ほど苦戦しました」

「僕にとって売れる・売れないは重要ではない」多くの挫折を経て、辿り着いた境地とは

 同作は、主人公・須田民生が、絶滅してしまうかもしれない絶品メシ=“絶メシ”を求めて、日本全国、一泊二日の車中泊の旅をする。実在する独特な雰囲気のお店や少しクセの強い店主、そしてさまざまな絶品メシに出逢う物語だ。濱津は役作りについて「とにかく演じすぎないようにしていた」と告白。「もともと僕は友達があまりいなくて、いつも1人なんですよ。ご飯も1人で行くことが多いですし、あのままですね」と笑う。

 連ドラ初主演となった本作で、もう一度自身と重なる役に出会った濱津は、自然体の演技を取り戻した。それからいかなる役のオファーが来ようと、「自分は自分のままで行こう」と仕切り直すことができたという。
「このドラマの主演は僕ですが、主役はそのお店や店主、そして何より“料理”。僕はただただ料理が美味しく見えるように意識しました。とにかく美味しく食べたいので、食べる撮影がある日は朝から何も食べずに現場へ。空腹もよい調味料になったと思います」

 そんな濱津の自然な演技、料理に懸ける情熱が視聴者にも伝わったのか、ドラマの放送後、実際にお店に足を運ぶ人や続編を求める声が続出し、season2が制作された。

「Season2も渋いお店、味のある店主もたくさん出てくるので、是非お楽しみに。……僕の見どころですか? それはないですね(笑)。なんとなく流れている風景を楽しむ作品ですし、僕の見どころがないのが、本作のまた良いところではないかと思います」と飄々と語る。
 芸人を辞め、DJを諦め、30歳手前で始めた俳優業。それから10年、俳優を辞めたいと思ったことは一度もない。それは何より「好きだ」と感じたからだという。元々、人を笑わせ楽しませることが好きだった。芸人時代もDJ時代も、そして今も、それはずっと根っこにある。たとえ肩書きが変わっても、どんなに打ちひしがれても、濱津が舞台に立ち続けてきた理由はそこにある。

「目的がないことも良かったのかもしれないですね。芸人時代は売れようと肩に力が入っていましたが、多くの挫折を経て、自分にできないことが沢山あると知った。今の僕にとって重要なのは、売れる・売れないではない。単純にものづくりが好き、それだけです」

 濱津にとって、芸人・DJを目指した時間は決して遠回りではなく、「自分のできないこと」を知る貴重な過程だったのかもしれない――。


(取材・文=衣輪晋一)
◆濱津隆之主演『絶メシロード season2』(外部サイト)
(テレビ東京系/毎週金曜 深 0:52〜1:23)

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