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発売40周年の『おっとっと』、今も変わらずベテラン職員が手作業で型おこし…「数値化・言語化できない“暗黙知”の結晶」
「孫に買ってあげる」“味を知る”世代が祖父祖母に
中が空洞になった特異な構造のノンフライスナックは、発売からすぐ人気商品に。とんねるずが出演した印象的なCMシリーズの効果もあり、当初のターゲットに措定された中高生から支持を集めた。以降40年に渡って、様々なフレーバー投入やコラボ展開などを続けながら現在に至る。
「近年では、当時の中高生たちが50代〜60代になっていることもあり、お孫さんに買い与えているというデータもあります。これまでは親子で楽しむ2世代スナックという位置づけでしたが、すでに3世代での消費が始まっているということになります。世代間のコミュニケーションを促進するノンフライスナックという基本軸を守りながら、様々な企画を展開しています」(マーケティング担当・山ア里咲さん/以下同)
自分でも食べたことがあり味を知っていること、長年維持されている定番ブランドとしての安心感、何より多様な生きものなどをモデルにした型が会話のきっかけになる付加価値などが、3世代消費を推進するカギになっているようだ。
型づくりは長年のスキルと知見による“暗黙知”の結晶
40周年を記念して今年の4月からスタートしたキャンペーンでは、一気に40種類の新たな菓子型を投入した。全国40ヵ所の動物園・水族館とコラボし、それぞれで人気がある生きものの型を作ったという。その型づくりは、発売当初から変わらず、人力で行っているという。
「社内で長年担当しているデザイナーが描いたイラストを元に、工場のベテランさんたちの知見をフル活用して、密にコミュニケーションしながら、ひとつひとつの型を起こしています。ここはこうしないとうまく膨らまないとか、折れにくくするにはどんな工夫が必要だとか。うまく数値化・言語化できない領域でもあるので、もはや社内の重要な暗黙知となっています」
菓子型そのものが商品のコアな魅力だと明確に定義づけた上での展開は、じつは2015年頃からの方針。やや売上が落ち込んでいた当時、改めて商品コンセプトの再定義が行われたことにより、安定的な成長ペースにのせることが可能になった。
「レアな型を探したり、モデルとなっている生きものを言い当てたり。親子で楽しみながら食べることができるのは、型へのこだわりがあってこそ。お子さまの知的好奇心を刺激することで、親子の会話のきっかけになり、成長を後押しできます。そうした体験や時間を、スナック菓子を通じて提供できるということこそが、『おっとっと』の価値につながると思います」
知的好奇心についてのストレートな取り組み例としては、『学研の図鑑LIVE』とのコラボなどが挙げられる。『おっとっと』パッケージ内側記載の生きものの説明にスマホをかざすとARで3DCGが楽しめたり、特設サイトで型がコレクションできたりといった仕掛けを用意。期間限定で実施され、好評を博したそうだ。
発売40年で初の挑戦、甘い『すいーとおっとっと』
「パッケージでは、お客様への感謝も込めて、イメージキャラクターの赤いクジラ(とと丸)と、そのパートナー(とと美)が甘い愛の言葉を語り合っています。コンソメ味の『ベジタブルおっとっと』パッケージにずっと描かれている“ととベジータ”も含め、なかなか名前が浸透しないのがこれからの課題のひとつですね(苦笑)」
クジラのキャラクターの正式名称はともかく、『おっとっと』そのものは、子ども・親・その祖父母まで、幅広い世代に圧倒的な認知度を誇る。40年をかけて醸造されてきた安心と信頼。その源は、お菓子を通じて子どもの成長を促すきっかけを提供すべく、様々なアイデアを投入し続けてきた森永製菓の真摯なスタンスにこそありそうだ。
(取材・文/及川望)