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森山直太朗、大切に温めてきた楽曲「茜」をドラマ主題歌としてリリース!「自分の引き出しの奥に眠っていた感情を引き出してもらった」

 シンガーソングライターの森山直太朗の配信シングル「茜」が8月10日にリリースされた。本楽曲は、現在日本テレビ系で放送中のドラマ『家庭教師のトラコ』の主題歌として作品に深い彩りを与えているが、森山が最初に「茜」を歌ったのは、2017年までさかのぼる。そこから5年の歳月を経て、曲と物語が運命的な出逢いを果たし、ドラマチックな形で世に送り出された。「いつかこの楽曲をレコーディングしてリリースしたい」という夢を持っていた森山が同曲への思いを語った。

「人の心を動かすトラコの情熱が『茜』という曲にリンクした」

 2019年に放送された連続ドラマ『同期のサクラ』でもタッグを組んだ脚本家の遊川和彦と大平太プロデューサー。そのとき主題歌「さくら(二〇一九)」を担当した森山に、2022年7月クールに放送となったドラマ『家庭教師のトラコ』でも再度主題歌のオファーした。森山自身、大平プロデューサーの掲げる作品コンセプトや、遊川氏が描く物語に心を寄り添わせると、森山が大切にしていた「茜」という楽曲が浮かび上がってきたという。

 「僕がお話を受けたときは、実はまだ1話目の台本しかありませんでした。でも脚本家の遊川さんと1時間ぐらいですが、ざっくばらんにお話をさせていただき、最終的に主人公のトラコがどういう景色を見るのかを共有させてもらいました。遊川脚本なので、一筋縄ではいかないというのは想像できたのですが、ある程度物語の世界観をイメージすることができました」。
 森山が強く作品に感じたのが、橋本愛演じるトラコという女性の人の心を動かす情熱が「茜」という曲にリンクする部分が多かったという。

 「家庭教師であるトラコが子どもの受験というものを通して、一つの家族の人生に踏み込んでいくという物語。『茜』に『何よりも大切なもの』『君は僕に教えてくれた』という歌詞がありますが、まずトラコの存在意義みたいなものが、この歌詞とリンクすると感じたんです。あとはドラマのなかでは家庭教師という立場でしたが、誰にでもトラコのような存在っていると思った。それは学校の先生あったり、親戚のおじさんだったり、あるいはバイト先の先輩だったり……そんな部分も曲の伝えたいものと近いと感じたんです」。
 さらにトラコ自身の持つ影やトラウマのようなものも、遊川氏の脚本からは想起させられた。そこも「茜」という曲の歌詞にリンクすると森山は感じた。

 「遊川さんの脚本は、表層的な部分とはまったく違うものが後ろに隠れているようなバッファというか余白みたいなものを残しながら毎回進んでいく。ただトラコが熱血漢で、生徒やその家族を変えていくだけではなく、トラコの背景にある家族の愛を知らないという闇やトラウマみたいなものも『茜』という曲の持つイメージに合致するなと思ったんです。そして失って初めて気づく感覚というのは、誰にでもある普遍的な感情だと思うんです」。

曲作りへの向き合い方「常に『なぜこの曲が生まれたのか』理由を探るもの」

 森山にとって「茜」という曲には強い思い入れがあった。2017年に劇場公演を行った舞台『あの城』でお披露目した曲だが、実はその前から森山の心のなかには存在していたという。

 「実は『あの城』よりも前、2015年ぐらいには『茜 茜色に染まるあの空』『何よりも大切なもの』というフレーズは僕の心のなかにありました。でもその当時はどんな受け皿なのか見当がつかなかったんです」。

 そんなとき舞台『あの城』のイメージした景色と「茜」という曲が合致したため、そこでお披露目した。

 「曲作りって、常に『なぜこの曲が生まれたのか』という理由を探るもの。そして物語にも理由がある。なにか行動を起こすとか、なにか生まれてくることには理由があるけれど、意味を説明できないことも多い。僕らも生まれることに理由はあるけど、意味を見出すことはなかなか難しいんです。それでも音楽というのは、そういう些細な機微を伝えられる数少ないツールだと思っているし、みんなが無意識に持ち合わせている普遍的な感情を自分なりに掘り下げたくてこの曲ができたと当時は思っていたんです」。

 こうしてできた「茜」という楽曲は、さらに今回「家庭教師のトラコ」というドラマによってより具現化して世に送り出され、視聴者からは「染み入る」と多く反響を呼んでいる。

 「ドラマの持つインパクトと世界観が『茜』にリンクする瞬間を感じ、今回自分の引き出しの奥に眠っていた感情を引き出してもらった気がします。多分僕が表現しているものとドラマで伝えたいことは、すべてが合致しているわけではないと思うけれど、普遍的な思いを伝えようとしていることはリンクしていると思う。曲だけでは伝えられないものを、ドラマを通して伝えてもらっているし、その逆もある。お互い良い部分を引き出し合いながら進んでいけたら嬉しいですね」。

こだわりの 一〇〇本ツアー「一つ一つが五臓六腑に染み渡るような感覚を味わえている」

 今年は森山がメジャーデビューしてから20年という節目の年となる。3月には14枚目のフルアルバム『素晴らしい世界』をリリースし、”全国一〇〇本”にも及ぶ、アルバムと同名の20thアニバーサリーツアー「素晴らしい世界」を6月からスタートさせた。

 「”一〇〇本”という数字にはこだわりがありました。まあ変な話、例えば『72本ツアー』と題しても『あーそうなんだ』という反応だと思うんです。でも”一〇〇本”と聞けば、それなりにインパクトがありますよね。もう一つは、うちの母親(森山良子)やさだまさしさんなど先輩たちは、弾き語りやバンドツアー、ディナーショーなど形態は違いましたが、年間一〇〇本以上のコンサートをやっていたんですよね。幼少期からそういう背中を見てきたので、我々若い世代が30本とか50本にしていてはダメだと思ったんです。それにいまはコロナ禍で、ライブ一つやるにもすごくセンシティブな時代になってしまっている。だからこそ逆にチャレンジしてみたいという思いもあったんです」。

 ツアーの前篇を7月30日に無事終えたが、一つ一つの会場でかけがえのない経験ができているという。

 「今回に関しては離島でのコンサートもあり、一つ一つが五臓六腑に染み渡るような感覚を味わえています。僕らは基本的に舞台を作ってお客さんを招いて『ようこそ!』という立場だと思うのですが、いまは僕らと同じぐらいの強度でお客さんが迎えてくれるんです。こうした気持ちを感じられるというのは、すごく救われた気分なんです」。

 何年も前から大切にしていた楽曲「茜」が新たな形で生まれ変わり視聴者の元に届く喜び、さらにツアーによって得られた新たな感覚――。こうしたかけがえのない宝物を携え森山は貪欲に音楽道を突き進む。
(取材・文:磯部正和)

日本テレビ系水曜ドラマ「家庭教師のトラコ」主題歌

森山直太朗
▼配信シングル「茜」 配信中!
https://lnk.to/akane

▼「茜」Music Video
https://youtu.be/bqDhZehHVfc

■”全国一〇〇本ツアー”
森山直太朗20thアニバーサリーツアー『素晴らしい世界』
https://naotaro.com/subarashiisekai/index.html

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