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北村匠海、“俳優と音楽”はお互い還元し合ってる「DISH//がなかったら俳優辞めてた」
青春なかった学生時代、早く大人になりたかったのに――「社会にがっかりした20歳」
「早めに大人になりすぎたところがあって、学校でも青春があんまりなかったですね(笑)。中学か高校の時には、芸能界を辞めようと思ってた時期がありました。芸大か美大に行きたくて。でも、進学のタイミングでDISH//が少しずつ注目され始めて、ドラマ『仰げば尊し』のお話を頂いて、その撮影途中で『君の膵臓をたべたい』のオーディションが入って…、そんなこんなで15年続けてる自分にびっくりですね(笑)。人生何が起こるかわかんないなーって」
「そもそも大人ってなんだろう、社会人ってなんだろうと、今でもすごく考えます。自分は何のために仕事をしているのか、映画を作るってどういうことなんだろうと。でも、映画って社会奉仕の仕事だと思ってるんです。そう考えると、僕も社会人なんだなと思います」
バンドの空気悪くしていた時期も…「DISH//が“北村匠海”の話題性で売れるのは嫌だった」
「18歳の頃、“俳優と音楽、どっちで売れたいの?”と色んな方面から言われることがありました。でも僕は両方100:100でやってて、“俳優をやってる傍で音楽をやってる北村匠海”じゃなくて、“両方やってる北村匠海”という見え方がしたくて。役者のイメージが先行していた中で、より一層、DISH//は実力で頂点を目指していくしかないという思いが強かったです」
とはいえ、役を通して“他人”を表現する俳優業と、“自分”を表現する音楽業の両立は容易ではない。実際北村も、そのバランスが上手く取れずに苦悩した時期もあったという。
それでも、バンドが解散することはなかった。ともに悩み、ぶつかり、ただひたすらに音楽を作り続けた。そして、2017年の『君の膵臓をたべたい』ヒットから3年。YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』で北村が歌った「猫」が公開されると、奇しくもコロナ禍と相まって、世界中で“大バズ”を生んだ。同チャンネル初の1億回再生を突破し、現在も再生数は伸び続けている。
「DISH//の取材やプロモーションでも、“北村匠海”という名前が前に出ている感じがありました。でも僕としては、DISH//の音楽が話題性で売れるのは嫌だったんです。そんな中、『猫 〜THE FIRST TAKE ver.〜』は自分しか出てないとはいえ、DISH//のメンバー全員でレコーディング再撮したやつだし、僕たちの音楽をたくさんの人に聴いてもらえたことは、すごい嬉しかったですね」
俳優と音楽どちらも100%、両立の苦悩乗り越え10年「後輩に繋ぐパイオニアになりたい」
「みんな音楽がめちゃくちゃ好きで、僕にとってDISH//っていう居場所が特別なんです。もう話すことがないくらい一緒にいるんですけど、今でも僕の家で4人でゲームしたり曲作ったりとか、ただ仲良いだけなんです(笑)。同じ傷も抱えてきたし、同じ喜びも分かち合ってきた、家族でも友達でもない“メンバー”だからこそ、楽しくやっていけるのかなと思います。DISH//がなかったら、俳優も辞めていたかもしれません」
「DISH//でいる時は、作詞作曲して、ライブの演出を考えたりと、クリエイティブなことをして、はたまた役者の時は、プレイヤーとして職人みたいなことをして、今では、お互いうまい具合に還元できていると思っています。音楽活動を通して培った感性は俳優業でも役立つし、俳優業で出会った言葉は音楽に活かせたりするので。自分は職人気質で俳優向きなんだと思うんですけど、クリエイティブが好きだから、やっぱりどっちも100:100で続けていきたいですね」
過酷なスケジュールの中、北村が俳優と音楽どちらも100%で臨むのには、未来の世代への想いもあった。
「今年25歳を迎えて、後輩も出来て、“俳優と音楽を両立したいけど、どうしたらいいか分からないです”と相談を受けるようになりました。まあ気合いかなー(笑)としか今はまだ答えられなくて。でも、色々やりたいと思う彼らが住みやすいように、大それた話ですけど、パイオニアのような存在になっていきたいと思って、両方頑張っている途中です」
20歳で親から届いた“育児満了報告” 「将来、自分の子どもにもやろうと思いました」
「プレッシャーはありましたが、監督から“北村匠海のアキラでいい、何にも引っ張られる必要はない”という言葉をもらい、アキラという人間を、自分なりに自由に演じられると思いました。あんまり役作りというよりかは、現場でリアルに感じたものをやるっていう感じでしたね」
妥協なしに1シーンに1日かけたり、納得いくまで何テイクも重ねたりと、「良い意味で諦めのない監督でした」と笑う北村。それでも必死に、“父”・阿部寛に全力でぶつかっていく日々だったと振り返る。
「あの3ヵ条はずっと心に留めていて、自分なりの親孝行もしました。育児満了メールは弟にも届いたらしいんですけど、自分の子どもにもやろうと思いましたね。『とんび』じゃないですけど、繋いでいきたいです」
(文=神谷内航平)
配給:KADOKAWA イオンエンターテイメント
阿部寛/北村匠海/杏/安田顕/大島優子
原作:重松清「とんび」(角川文庫刊)
監督:瀬々敬久
脚本:港岳彦
音楽:村松崇継
主題歌:ゆず「風信子」