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「すき間を探していた」倖田來未、歌うために辿り着いた“エロかっこいい” 素の自分との葛藤を救ってくれた母の言葉

 2000年にデビューし、“エロかっこいい”の代名詞としてゼロ年代の若者たちを魅了した倖田來未。テレビでは底抜けに明るく豪快に映る彼女だが、これまでの活動を振り返ると、「“倖田來未”がわーっと走って行って、私自身は後ろから追っかけている、みたいな感覚」だったという。セクシー路線でブレイクするまでの模索期間のことや、“倖田來未”であり続けることの苦悩からそれを乗り越えられた出来事、結婚を経た現在の境地など話を聞いた。

念願の姉妹コラボも大ゲンカで3年の絶交期間 それでも一番好きな“友達”妹・ misonoの存在

――この20年間を振り返ってみて改めてどんなことを感じますか。

倖田來未めくるめく日々でしたよ(笑)。下積み時代は、AIちゃんやCrystal Kayちゃんなど、クラブで活動しているメンバーと切磋琢磨していましたが、私は私にしかできない音楽を表現していこうというところから“倖田來未”という人が確立されて。ヒット曲にも恵まれて、結婚もして。辛い時期もありましたが、“倖田來未”にはよく折れずやってくれたなと思います。

――今も原曲キーで、当時のままの歌声で歌っていらっしゃることには驚きます。

倖田來未実は一時、声が出なくなっていたこともあったんですよ。発声法が我流で、それでもかつては若さでやっていけたんですが、2015年頃、1、2曲歌ったらしんどくなって。そこからボイストレーニングに通い始めて、良い先生と出会えたことで、今では1日に2公演でも全く声がつぶれなくなりました。自分がブラッシュアップしている実感を持ちながらボイストレーニングできているから、成長が楽しいし、ボイトレが楽しいです。どんどん高度な曲を歌っているから、それをこなすにはスキルを磨き続けるしかなくて。ボディコントロールも含めて、時代に置いていかれないように自分磨きをすることが自分の使命だと思っています。意外に考えているの(笑)。

――20年の中で特に思い入れのある楽曲は何ですか。

倖田來未妹・misonoとコラボした曲「It’s all Love」 は大きかったかもしれないですね。misonoも私もライオンなので、一緒にやるうちに大ゲンカが勃発するんですよ。私はテーブルをひっくり返すし、むこうはPVの撮影に来ぉへんし。だから、あのPV、合成なんですよ。そこから3年くらいしゃべらないんですけど(笑)。

――それはすごい(笑)。仲直りはどうやってされたんですか?

倖田來未結局、友達の中で一番好きなのがmisonoなんですよ。面白いし、優しいし、内面はすごくナイーブな子なので。コロナ禍のとき3ヵ月くらい2家族で一緒に我が家で暮らしていたこともあったんです。そのときも料理を作ってくれたり、「おねえ忙しいやろ」って家の中をきれいにしてくれたり。そもそも私に自分を持たなきゃいけないということを教えてくれたのもmisonoなんです。

――いつもご自身の言葉で発信されていたイメージがありますが、“倖田來未”を演じているところもあったのですか。

倖田來未それはあります。私、本当は内向的で、人見知りで、普段の生活は地味やし。でも、「Crazy 4 U」ぐらいから、「峰不二子ちゃんみたいにかっこいい、女の子が見てもきれい〜、セクシーって思ってもらえる女性になりたい」と思うようになりました。自分がやりたいことではなく、“倖田來未”がいかに輝くかを俯瞰で考えるようになったんです。だって、ラックにかかっている服を見て「え!? 今日の衣装これですか?」と思うような、下着みたいな薄い服のときがあるわけですよ(笑)。「倖田來未さん以外は誰も借りていない」と言われて、「そらそうやろな!」と思うけど、これを誰が着こなすのかと聞かれると、「倖田來未やんな」とも思うし。

女性ソロアーティスト全盛のゼロ年代「どうやったら知ってもらえるか“すき間”を探した」

――ゼロ年代には10代や20代の若者達のアイコン的存在でした。当時を振り返ってどう思いますか?

倖田來未「すごいな、倖田來未」と俯瞰で見ていました。レコード大賞とかディスク大賞、ネイルクイーンなどいろいろいただいて、若い女の子たちがみんなヘアスタイルやファッションを真似してくれて。こんなに褒めてもらっていいのかなと思っていましたよ。“倖田來未”がわーっと走って行って、私自身は後ろから追っかけている、みたいな感覚でした。時には、私の内面にいる神田來未子さん(旧姓の本名)に引きずられそうなことも。普段は夜9時には寝ているのに、クラブで活動している時代は、夜中の1時2時にクラブで歌えと言われて、眠たいし。それに、神田來未子さんはあまりお酒も飲まないのに、“倖田來未”はクラブで朝までお酒を飲んでいそうじゃないですか(笑)。自分のできないことを具現化するのが“倖田來未”であり、自分が思うかっこいい女性の理想像が“倖田來未”なんですよ。

――そうした理想像はどのように作られたんですか。

倖田來未歌うことが好きだったから、最初は歌えたら良かったんです。でも、売れないし、知ってもらえない。どうやったら知ってもらえるかと考えたとき、当時、安室奈美恵さんやあゆ(浜崎あゆみ)さん、ELTさん(Every Little Thing)がいて。安室さんは踊るけど、セクシーなファッションでは踊ってないよなとか、あゆさんはロックやしなとか、そういう感じで、すき間を探したんです。すき間を探しつつ、突拍子もないことをやろうとしているときに、「Crazy 4 U」のPVを見た庵野秀明監督が「キューティーハニー」を歌ってほしいと言ってくださったんですよ。
――実はアーティストであり、プロデューサーでもあったのですね。

【倖田來未】それ、もっと言って〜(笑)! 実は3年でCD売れなかったらクビって言われていたんです。最初は用意されたレールに乗ってるだけやった。でも、「Crazy 4 U」に出会ったときに「これや!」って思って、こういうPVにしたい、こういう振りが踊りたい、こんな衣装が着たいと初めて主張したんです。

――そういった中でもご自身の中でぶれてしまいそうな時期はありませんでしたか。

倖田來未親が私のことで「お前の娘、あんな格好して」などと言われていた時期は、辛かったし、やめたほうが良いんじゃないかとも思いました。でも、お母さんが「倖田來未は倖田來未、家に帰ったらくぅちゃんなんやから、大丈夫よ。好きにやればいい」と言ってくれたことに救われたんですよね。

――ご自身の理想として作られた“倖田來未”は、その後変化していますか。

倖田來未変わっていないなあ。まだ誰もやっていない初めてのことをやるのが“倖田來未”だと思うから。

――お仕事も、プライベートもサービス精神がベースにある気がします。

倖田來未そうですね。そのサービス精神が足を引っ張ることもあるんですけど(笑)、それが多分私やから。それが楽しいし、天性。“倖田來未”の「來」って、お母さんがつけてくれたんやけど、人を笑顔にさせるって意味があるんですよ。人が笑っているのを見るのが好きだから、誰かのためなら頑張れる。ダイエットもそう。“倖田來未”やから、きれいでいなあかんって思うけど、普段の私やったら太っていると思いますよ。めっちゃ食べるから。

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