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永遠のテーマ、缶スープの“コーン残っちゃう問題” 25年を迎える『じっくりコトコト』シリーズの挑戦
缶コーヒーの技術を原点に…粒入りスープの先駆的存在へ
第1号商品となったのは、コーンポタージュとベジタブルの2種類。当時はまだ粒入りのコーンスープではなかったが、粉末が主流だった市場において、缶タイプは先駆的な存在となった。しかし、コーヒーとは異なり、スープならではの課題もあったという。
「ホット販売を行なうため、自動販売機の中やコンビニエンスストアでの加温什器の中で、商品を一定期間温めることになります。一定の加温条件の中で品質の安定を保つことが難しい課題でした」(担当者)
一方、当時の国内市場のメインだった粉末スープは、メジャーブランドによる競争が激化。差別化を図るために考案されたのが、「コーン」の粒感をスープに入れるという試みだった。フリーズドライでホールコーンを還元させる技術を用いて1988年に発売した『つぶコーンスープ』は大ヒット。粉末スープでの成功を受け、同年に缶スープでも粒入りが誕生することとなった。
今でも続く課題「いかに最後まで粒を食べられるようにするか」飲み口に設けた“へこみ”で大きく前進
「発売当初から、『最後まで粒が食べられないのが悔しい』という声を、多くのお客様から頂戴しました。そのため、『いかに最後まで粒を食べられるようにするか』を今日も日々考えています。これまでにも、開け口を広くし、缶タブの傾きも変えるなど、試作を積み重ねています」(担当者)
ネットでは粒を残さずきれいに飲む独自の裏技が話題なったことも。同社でも公式サイトで紹介もしている。社員の好きな商品でもTOP5がコーンスープであり、コーンスープは同社にとっても思い入れの強い商品。きれいに飲み干してほしいというのは、消費者以上に持っているはずだ。
「現在は、飲み口に設けたへこみにより、とうもろこしの粒が壁に当たりジャンプすることで、飲み口にたまらないようにする工夫がされ、かなり飲みやすくなっていると思います」
ホットタイプの缶スープはもともと男性がターゲットだったため、缶コーヒーでなじみのあるプルタブを採用。しかし、冷製缶スープは女性ターゲットであったため、プルタブの開けにくさなどの意見を元に現在はキャップタイプに。キャップ型のため、より粒が出やすい形状となっているのも特徴。まだ改良の余地はあるといい、同社の“缶イノベーション”は続きそうだ。
25年たっても変わらぬ思い 表舞台には出なかった長い商品名も?
「当時、数多くあるネーミングの中から、商品コンセプトをそのまま表現した長いネーミングで決まりました。ノート1冊分のアイデアがあり、最初は、当時のCMに登場いただいた薬丸(裕英)さんのセリフにあった『じっくり素材を吟味して弱火でコトコト時間と手間ひまと愛情を込めて煮込んだスープ』という長い名前にしたかったそうです。そこから断腸の思いでここまで短くしてこのネーミングとなりました」(担当者)
素材へのこだわりやスープの濃厚さは、『じっくりコトコト』ブランドで同社が最も大切にしていること。それは、当初のネーミングからも伺える。
「スープを飲んだときに濃厚なスープがカラダに染み込み、“ココロ”がほどけていくような感覚になっていただきたいという想いが根底にあります。じっくりコトコトを飲むことで、忙しい日々の中で贅沢感を感じながら、ホッと安らいでいただければうれしいですね」(担当者)
「じっくり手間ひまかけて引き出した素材の力で、ココロとカラダをときほぐし、健やかな日々に寄り添う存在であり続けたいと考えています。今後、様々な地域とも連携して、その地域にも貢献して行けるような展開をしていきたいと思っています」(担当者)
その一環として、今年8月には北海道の素材を使った『北海道ららポテト』シリーズを展開。十勝地域のとうもろこしとクリームを使った『北海道ららポテト 十勝クリームシチュー味』を発売。味覚開発のため北海道を訪問し、食の豊かさや食材の魅力を再確認したそう。この取り組みに対し「素材が溶け込むスープだからこそ、より素材の魅力や食文化を伝えていきたいと思います」と担当者は語る。10月には岩手県のさば缶ブランド「サヴァ?缶」とのコラボ商品『じっくりコトコトこんがりパンサバサルサ味』も発売。
1980年の誕生から、約15億個を販売し愛され続けてきた『じっくりコトコト』シリーズのスープ。粒入りの缶スープを成功させたように、これからも新たな商品で我々の生活を豊かにしてくれるはずだ。