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ペットの鳥たちにも馴染むカラス、素直にくちばしカットされる姿が話題に “傷病鳥”の終生飼養を決めた投稿者の思い
カラスへの好意的なコメントを嬉しく思う一方で「安易な保護欲や飼育欲を刺激してしまう懸念もあった」
インコズの爪切り終わったら自分の嘴もかと待ってたので、まだそんなに伸びてないけど整えた?#カラス pic.twitter.com/Hxq0ShUFLk
? vanilla 地味鳥園(@vanilla_crow) September 6, 2021
これまでもお手入れ中の様子は公開していましたが、こんなに反響はなかったので驚いています。八咫烏(やたがらす)など神使なイメージもある一方で、一般的にカラスは不気味で気味が悪いというイメージの方が強いので、好意的なコメントが多かったのは素直に嬉しかったです。
――ただ、危惧していることもあるとか?
ペットとして販売されているような鳥ではなく保護した野鳥であるため、反響が大きいと安易な保護欲や飼育欲を刺激してしまう懸念もあります。そのため、ツリー表示で色々と綴りました。面白かわいい動物を紹介するだけの内容の取材はお断りしようと思っていました。
他の鳥達もそうですが、カラスの呂色(ろいろ)がしてほしいことをしてやれるように、こちらのしてほしくないことはなるべくされずに済むように、また、しなければならない嫌なことは手短に済ませてしっかりフォローするなどして、お互いの妥協点を探りながら生活のルールや環境を作っていくといった感じでしょうか。あと、くちばしを整える頻度は、伸びてきたなと感じたタイミングで月1回くらいです。呂色は生まれつきの不正咬合があり、正常な長さまで伸びてくると咬み合わせに歪みが生じるので、短めにカットして削っています。
――接していく上で難しい部分は?
カラスは拘りが強くマイルールも多いので、こちらが合わせる部分が多いと感じます。コンタクトを外して眼鏡を掛けたら気に入らない、季節が変わると服が変わるのが気に入らない、朝起こしに来るのが遅れた、帰宅がいつもより遅い、などでよく怒られますね。
複数の獣医からの「野生復帰は難しい」見過ごすことはできず法的手続き経て保護飼養へ
夫が横断歩道脇で発見して、助けてほしいと電話をしてきました。野鳥はダニや病原菌を持っていることが多いので、近くの植え込みへ移動させるよう指示したのですが、怪我もしている様子で「どうしても見過ごせない」と。現場に行くと、骨折した様子が見られるぐったりした雛カラスが居ました。
回復したら放野するつもりでの保護でしたが、翼も痛めていて飛ぶことができず、脚が悪く止まり木にも留まれず、複数の獣医さんから野生復帰は難しいと言われています。自然のサイクルの中での怪我は「自然は自然のままに」ですが、「人間活動の影響での怪我であれば保護飼養は可能」という住んでいる地域の意向の元、法的な手続きを経て今に至ります。
――カラスは一般的に狡猾で攻撃的なイメージがありますが、実際のところは?
とても頭が良いので、こうしたら効率良く望む結果が得られると分かっての行動が狡猾に、臆病ゆえの防衛行動が攻撃的に映るのだと思います。理由なく攻撃してやろうという好戦的さは全く感じません。狡猾で攻撃的というのも、カラスは不気味というマイナスイメージから来ていると感じます。ただ、鳥の場合はNOを伝える手段のひとつとして噛みます。カラスはくちばしが大きく力も強く、けっこう気が短いので、実際に攻撃力は高いですね。野生のカラスが繁殖期に攻撃的になるというのは、巣や雛を守りたい一心からです。
――確かに、勝手に怖いイメージを持ってしまっていますね。
「カラスは臆病だ」と、カラスと暮らしている人達が口を揃えるように、呂色も例に漏れず臆病です。特に家の外は恐ろしい所のようで、日光浴や水浴びでベランダに出しても、膝に乗せて抱いていないと怖がって戸を開けろとせがみ、開けたら急いで中へ入ります。駐車スペースで地面に降ろしてみたときも、急いで玄関ドアの前へ逃げて行きました。
現在は9羽のさまざまな鳥たちと暮らすカラス「年長で面倒見の良いヨウムに好意を寄せている」
野鳥ということもあり、検疫隔離も兼ねて約2年半インコ達とは別の階で飼育していたため、互いに声はするけど姿は知らない存在でした。昨冬よりインコ達の部屋の隣に呂色の部屋を構え、そこで初めてそれぞれの姿を認識しました。キサキスズメの珊瑚(さんご)、シュバシキンセイチョウの丹色(にいろ)に関してはあまり一緒にすることがないので、「何か小さいのがいるなー」くらいにしか思っていないと思います。自分と同じような体の大きさと色のクロインコの黒哥(くろう)のことは、普段おとなしい分、急に動かれると少し怖いようです。
5羽いるヨウムのうち、年長で面倒見の良い紅幸(こゆき)と好奇心の強い椿希(つばき)の雌2羽が気にかけてくれるのが、呂色はとても嬉しいようで、遊んでほしそうに近くへ行ったり甘える仕草をしたりします。年長で雄の銀戀(ぎんこ)には距離が近いとよく怒られていますが、インコ達のテリトリーへ遊びに行っている身なので怒り返したりはしません。そういう立場を弁えるようなところはよく見られます。紅羽(くれは)と陽綺(ようき)とは互いに興味は強くないようで、群の一員という認識だと思います。文鳥の胡桜(こざくら)は呂色が一番好意を寄せている紅幸がとても可愛がっているため、一目置いているように見えます。
――カラスを終生飼養保護登録し、鳥達の様子をSNSで投稿している一方で、傷病鳥の保護や見つけたときの対応について呼びかけています。その背景にはどんな想いが込められていますか?
春から梅雨明け頃になると頻繁に報告される「鳥の雛を拾いました」のほとんどが、保護の必要のない巣立ち雛です。鳥にとっては誘拐であり、野生で生きる術を学ぶ機会を奪う行為なので、巣立ち雛の誤認保護は減ってほしいと思います。傷病鳥の保護は診てもらえる病院も限られますし、どんな病気を持っているかもわからないので、まず専門機関へ連絡したり頼ったりしてほしいです。許可を必要としない一時的な回復見込み期間を超えて保護する場合は行政の許可が必要となるため、継続して保護するのであれば、トラブルにならないためにも飼養登録をしてほしいです。
――安易に保護するべきではないですね。
怪我をしたからといって人間に助けてもらいたいと野鳥は思っていないだろうし、それがかえってストレスとなり弱ることもあるし、自然界で命を落としても他の生き物の糧になるので、必ずしも傷病保護が良いことだとは思ってはいません。呂色にとっては結果的には良かったのかもしれないけれど、生態系的には良くないことをしたのだという気持ちは今もあります。野生で生きる能力のない子なので、関わったからには最後まで責任を持って面倒を見なければと思っています。
――傷病保護の難しさとは?
ペットと違って飼育マニュアルや専用の餌や用品があるわけではないので全て手探りになる難しさ、体や声が大きいため飼育環境の難しさ、元が身体トラブルのある個体なのでずっとケアが必要で手がかかる難しさがあります。そういったことも含めてブログなどで発信しています。
――最後に、vanillaさんにとって鳥たちはどんな存在ですか?
ひとことで言えば、「原動力」ですかね。