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「“のだめ”ってmiletみたい」友達の一言で聴き始めたショパン miletが愛するクラシック音楽3選
⇒この記事をオリジナルページで読む(7月28日掲載)
そんなmiletさんの音楽的なルーツは「クラシック」。両親の影響で幼少期からバッハ、ベートーヴェン、モーツァルトなどの楽曲に親しんできた彼女に、「大切な人や場所に思いを馳せる夜に聴きたい曲」というテーマで自ら選曲した3曲を解説してもらいました。実はショパンを聴き始めたのは、友達から「“のだめ”って、miletみたいだよ」と言われたことがきっかけなんだとか! クラシック音楽からの影響も感じられる7th EP『Ordinary days』についても聞きました。
撮影:田中達晃(Pash) 取材・文:森朋之
フルートは「ストレス発散、息の使い方や音感確認にも役立つ」
両親がクラシック好きで、家でずっと流れていたんです。車に乗ってるときもかかっていたし、知らない間に刷り込まれてました。お父さんはモーツァルトやバッハ、お母さんはベートーヴェンなどの重厚な楽曲が好みで。音楽関係の仕事をしているわけではないんですが、お父さんは音響にも凝っていて、朝、モーツァルトの楽曲が大音量で鳴り響いて目が覚めることもありましたね。
――朝から大音量のモーツァルトというのはすごい(笑)。miletさんは小学生の頃からフルートを習っていたそうですね。
はい。フルートの前に少しピアノを習っていたんですが、最初はあまり相性がいいとは思えなくて。フルートは、小学校低学年のときの文化祭のような行事がきっかけでした。「いろんな楽器を試してみよう」というコーナーがあって、オーボエやクラリネット、フルートなど、ふだん音楽の授業でもあまり触れないような楽器を体験できたんです。
そのときのフルート担当の先生がすごくキレイな方だったので、フルートを吹いてみようと思って。最初から音を出すのは結構難しいそうなんですが、すぐに音が出たので、「すごい! 上手だね!」って褒めてくださって。「この先生に教えてもらえるなら、フルートをやりたい」と思って、その場で先生の連絡先を聞いて習い始めました。
そうなんです。その先生とは今でも連絡を取り合っていて。私の曲も聴いてくださっていますし、こうしてインタビューなどでクラシックやフルートの話をするとすごく喜んでくれます(笑)。
――実際に習い始めて、フルートにさらに魅了されたのでしょうか?
はい。すごく好きだなと思いました。でもそのうちに、「自分の奏でる音では頂点にはいけない」と感じ始めました。それでも音大を目指して受験勉強を頑張っていましたし、「オーケストラに入って、一つの音楽をたくさんの人と作り上げたい」という気持ちもあったんですけど、途中で映画音楽に興味が出てきて。フルートの先生に相談したら、「(音大以外の)大学にもオーケストラはあるし、それもありじゃない?」と言ってくださって。
今でもずっと吹いています。ストレス発散になりますし、歌っていて息の使い方や歌い方がわからなくなったり、音感を取り戻したいときにフルートを吹くと、背筋が伸びて自分の中に“スッ”と軸ができる感覚があって。フルートで好きな音楽を吹くと、気持ちが落ち着くというか、“正気”を取り戻せるというか、すごく大事な時間ですね。
――フルートを通して、音楽への理解もさらに深まったのでは?
そうですね。私、ずっと耳コピで練習してたんですけど(笑)、音大受験を考えたときに、「まず楽譜を読めるようにならないと」と思って勉強しました。いろんな楽曲も聴いてきましたし、今もクラシックが基盤になっていると感じます。自分の曲中にストリングスや合唱を入れるときなどにも、何気なく役立っていると思います。フルートではなくピアノをやっていたら、歌い方もまた違っていたかもしれないとも思いますね。
――息を使う管楽器ですから、フルートのほうがより歌うことには近いかもしれないですね。
はい。体の使い方は近いと思います。
miletが選ぶ「大切な人や場所に思いを馳せる夜に聴きたい」クラシック3曲
♪メンデルスゾーン『ピアノ協奏曲 第2番 ニ短調 作品40 第2楽章』
♪ラヴェル『ピアノ協奏曲 ト長調 第2楽章』
♪ショパン『ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11 第2楽章』
♪ラヴェル『ピアノ協奏曲 ト長調 第2楽章』
♪ショパン『ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11 第2楽章』
私がクラシック音楽を聴きたくなるのは気持ちが少し不安定なときが多くて、好きなクラシックを聴くと自然に心が落ち着くし、自分をゆっくりと振り返ることもできるんですよね。この3曲は、まさにそういう役割を果たしてくれています。メロウでゆったりとしているけれど、ドラマティックで情緒的で美しい。
バラードを聴くと、ゆっくりと言葉一つ一つが頭に刻まれて大切な人を思い出したりすることができるじゃないですか。私にとってはそういった役割をしてくれる3曲で、クラシックはあまり詳しくないという方でも、メロディーがわかりやすくて耳なじみがいいと思います。音に無駄がなくて、でも余白もあって、人間の感情に近い音楽だなと思います。
テーマを「大切な人や場所に思いを馳せる夜に聴きたい曲」としましたけど、実はこのプレイリストは夕方に歩きながら作ったんですよ(笑)。夕日がきれいで、私の今までの思い出を振り返りながら選びました。朝に聴いてみてもいいと思います。「今日は落ち着いていきたいな」という朝には、ストンと気持ちを落ち着かせてくれる感じが心地いいと思いますし、夜に限らず好きな時間帯に聴いてほしいですね。
意外な気づき「私、第2楽章が大好きみたい(笑)」
好きですね。自分が弾けないから、憧れもあるのかも。ピアノ1台でいろいろな世界を表現できるし、素晴らしいなと思います。しかも、リスト化して初めて気づいたんですが、私、第2楽章が大好きみたいですね(笑)。私が大好きなベートーヴェンの交響曲第7番の第2楽章もそうなんですけど、ピアノ協奏曲の第2楽章は、ちょっと落ち着いた雰囲気の曲が多くて。そこに惹かれるんでしょうね。
「波のよう」絵的に美しいメンデルスゾーンの楽譜
指揮:ビクトル・パブロ・ペレス、オーケストラ:ガリシア交響楽団、ピアノ:ロベルト・プロッセダによる演奏(2018年)。第2楽章は9:31〜
――楽譜がきれいというと?
フルートは音階の高低差がある曲が多くて、楽譜がカクカクしてる印象があって(笑)。この曲の楽譜は滑らかな波のようで、絵的にも美しいんです。楽譜を見ながらこの曲を聴くのが好きでした。もちろんメロディーも素晴らしいし、大好きですね。
「一緒に落ちてくれる」瑞々しいラヴェルのメロディー
本当に美しくて、キャッチーなメロディーもあって、そこがラヴェルのすごいところだなと思って。リフがしっかり頭に刻まれるし、瑞々しくて、まったく古さを感じなくて。今聴いてもモダンな曲だなと思います。この曲は学生の頃、気持ちが落ちていたときによく聴いてました。一緒に落ちてくれる曲だし、でも、絶望だけという感じもなくて。夜の湖の水面に、満天の星空が反射しているような景色も浮かんで、一緒に落ちていくのがイヤじゃないんですよ。
指揮:ファビオ・マストランジェロ、オーケストラ:ノーザン・シンフォニー・オーケストラ、ピアノ:ポリーナ・オセチンスカヤによる演奏。第2楽章は9:33〜
はい。理解されたいけど、理解してほしくなくて、一人になりたくなったり……そういう時期もありました(笑)。
「のだめってmiletみたい」指摘多数でショパンを深堀り
ヤツェク・カスプシク指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィアとマルタ・アルゲリッチ氏による演奏(2010年)。第2楽章は21:07〜
――そうなんですね(笑)。
劇中で使われている曲のコンピレーションアルバムを聴いてみたら、「ショパン、好きかもしれない」と思って。いろいろ掘り下げて聴いてみて、いちばんいいなと思ったのが『ピアノ協奏曲第1番』だったんです。落ち着いた雰囲気の曲が自分に合うし、これだったらピアノで弾けるかもしれないなって……いや、弾けないんですけどね(笑)。