ORICON NEWS
消息不明の「アムロ搭乗ガンダム」が“樹木化”し発見 モデラーが願う平和への思い「荒廃してもいつか草木が生え、花が咲く」
ヒーローとして描かれるガンダム…実は大破する機体も多い
のうちの模型部屋ガンダムは主人公側に立って戦うことが多いので、敵軍を圧倒しているイメージを持っている方も多いかと思います。しかし実際はそうではなくて、ガンダムも架空とはいえ兵器の一つなので、形はどうであれ最後はボロボロになってしまって、大破してしまう描写も結構多いんです。
――公開中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の小説版にも、ガンダムの最後について「首がなくなったり、バラバラになったり…」というようなセリフがありました。
のうちの模型部屋そうです。でもそのセリフの前後には「歴代のガンダムは、いつも反骨精神を持った人が搭乗していた」ということと、「ガンダムがなくなったあとも、反骨精神は健在だった」というような言葉もある。そんなパイロットと共に最後まで戦い抜いたガンダムの姿を表現したくて、今回ガンダムをモチーフにしました。
――なるほど。背景にも深い物語がありそうですね。
のうちの模型部屋そうですね。『閃光のハサウェイ』につながる1つ前の作品『逆襲のシャア』で、シャアは人間の欲で荒廃していく地球と争い合う人類に絶望し、地球に隕石を落として人類を滅ぼそうとします。ところがアムロは人類の可能性を信じ、それを阻みます。その後の2人の様子について、劇場版、小説版とも、死んだとも、生きているとも描写されず、消息不明となってしまいます。もちろんアムロが搭乗していた「Hi-νガンダム」も。
――今回のモチーフですね。
のうちの模型部屋はい。少し話が飛ぶのですが、全てのガンダム作品が最終的に辿り着く終着点としてはるか未来の地球が描かれている『∀ガンダム』という作品があります。そこでは、月で冬眠していた人間が地球へ帰還するのですが、地球の人々と争うことになり、またかつての兵器たちが駆り出されます。アムロが人類を信じ、命がけで地球を守ったにも関わらず、人類は変わらずまた争いを引き起こし、歴史を繰り返してしまう。そんな時代に、「もしアムロの乗っていたHi-νガンダムが発掘されたら?」ということを考えてみました。反骨の象徴であるガンダムの、初代パイロットでもあるアムロがはるか未来で見る景色、その目には何が映るのかを想像しながら制作を行いました。
現物や写真で幹を見ながら、彫刻刀で“樹木化”
のうちの模型部屋前述の通り、発見まで相当な時間が経っていると考えられます。地球のどこかで眠っていれば、ガンダムも樹木化してしまうのではないかと考えました。荒廃した街にもいつかは草木が生えて、花が咲くように。そこには平和への願いも込めています。
――平和への願い?
のうちの模型部屋はい。今回は、アムロの思いを重点的に考えながら制作しました。もう争いの道具にはして欲しくないなと思います。安らかに眠りながら、世界の行く末を見守っていて欲しいと思います。
――そんな思いが込められているとは…。“樹木化”の際、参考にした作例はありますか?
のうちの模型部屋韓国の女性モデラーさんが、樹木のような塗装を施したガンプラをYouTubeで見かけ、自分もこのような表現に挑戦してみたいと思ったのがきっかけです。最初はデザインナイフや、筋彫り用の道具で樹木の幹を表現しようかと考えていましたが、実際の樹木を触ってみたり、写真を見たりすると、幹部分にある溝はとても深いことが分かりました。そのため、溝を深く掘れるよう、彫刻刀を使用してガンプラを彫りました。
――彫刻刀とは驚きです。ずいぶん大変な作業でしたね。
のうちの模型部屋はい。途中ケガもあり、トータルで約2週間の彫刻作業の後、塗装に入っていきました。樹木=茶色というイメージを持つ方も多いかと思いますが、実際によく観察してみると、茶色だけでなく、むしろ黒やグレー寄りの色が強いことに気付き、それらをベースにした塗装で仕上げていきました。
――完成作の反応はいかがでしたか?
のうちの模型部屋「こんなガンダム初めて見た」、「不明になった機体の行く末、とてもロマンがある」、「感動して泣いてしまいそう」など、多くの方の反響を頂きました。これまで、自分の行動や、作り上げたもので、誰かが感動してくれるという経験があまりなかったので、心から嬉しかったです。
――本作に限らずガンプラを制作する上で、信念をお聞かせください。
のうちの模型部屋普段の社会生活では「こうでなくてはならない」「間違ったことはやってはいけない」などが多く、自分にとって生きづらいと感じることが多々あります。それに囚われて、自分の意見や気持ちが言えなかったり、上手く自分を表現することが出来なかったりします。だからこそガンプラを制作する際は、自分の気持ち、思いを大事にして、自由でいることを信念にしています。ガンプラ制作を通じて少しずつ前に進み、最後まで人類を信じたアムロのように、自分に自信が持てるようになりたいと思っています。