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”自分とは何か”というテーマに歌で向き合い続けるシンガー・ReoNa 「新曲は『シャドーハウス』が開いてくれた新しい扉」
個性が尊重される時代だが「自分の色がない」ことに苦しむ人もいる
ReoNaレコーディングの時点で発売されていた単行本をすべて読ませていただきました。最初は主人公たちのかわいらしさもあって、「朗らかな日常をゴシックな雰囲気で描いている作品なのかな」と思いましたが、読み進めていくうちに、もっともっと深いものが込められていることが分かって。今までに味わったことのない世界観ですし、「この作品に対し、どんな楽曲を届けられるだろう?」とワクワクしましたね。
――「ないない」のサウンドはダークファンタジー的な雰囲気があって。『シャドーハウス』の世界ともすごく合ってますね。
ReoNa毛蟹さんが作ってくださったデモ音源を聴いたとき、ゴシックでクラシカルなテイストを感じて。これまでのReoNaの楽曲にはなかったサウンドだし、「このオケに自分の声が乗っかるとどうなるんだろう?」と思いました。もともと好きな曲調なんですが、自分がこういう曲を歌うとは思ってなかったし、まさに『シャドーハウス』が開いてくれた新しい扉だなって。
ReoNa(昨年10月にリリースした)アルバム『unknown』でも「自分自身はどこにあるんだろう?」「自分の本当の色って何だろう?」というテーマのもと、お歌を紡いできて。今回の「ないない」では、作詞してくださったハヤシケイさん、毛蟹さんがさらに踏み込んで、「自分は他人の鏡で、他人は自分の鏡。誰かがいるから自分が分かるのであって、本当の自分なんていないのではないか?」というテーマを提示してくれたんです。
――深いですね……。そのテーマは、ReoNaさん自身の実感ともつながっていたんですか?
ReoNaそうですね。子供の頃もそうで、例えば「何が食べたい?」「どうしたい?」と聞かれると、「どう言えば喜んでくれるだろう」「何て答えるのが正解なんだろう?」と考えてしまって。それは「どうすればこの人の機嫌を損ねないかな」ということもあるんですけど、同じようなことを考えてる人って、たくさんいると思うんです。かと言って、周りからの影響を一切なくしたときの自分も想像できなくて。今は個性が尊重される時代ですけど、「自分の色がない」ということに苦しむ人もいるでしょうし。いろいろなことを考えさせられる歌詞だなって思います。
――『シャドーハウス』を通してこの曲を聴き、自分の在り方について考える人も多そうですね。
ReoNaいろいろな方にお届けしたいですね。アニメの放送が始まってから、女性の方や海外の方からの反応が増えている感覚があって。これまでとは違う方々との出会いが増えているのは、すごくうれしいです。
カップリングでは、自身のルーツのひとつ“カントリー”にも挑戦
ReoNa「まっさら」も毛蟹さんが『シャドーハウス』の世界を受け取って制作してくれた楽曲なんです。原作を読み進めると、かわいらしさ、不穏さだけではなく、切なさも感じられて。淘汰され、消費される命を目の当たりにしたり……。特に「まっさらな命で 生きていたかったのに」は心に残りました。生まれてきたときはまっさらだけど、生きていくなかで、汚い言葉を知って、傷つくことも、傷つけられることもあって。
――痛みや傷を癒やしてくれるような雰囲気もありますね。
ReoNaそうですね。「ないない」とは対になっているというか、大きなサウンド、美しいメロディの曲なので。ロングトーンを活かしたボーカルも挑戦だったし、ありったけの思いを込めて歌いました。
ReoNa誰かの日記をのぞき見しているような感じもありますね。まず、傘村さんと「どんな楽曲にしましょうか」とお話させてもらって、最近抱いてる気持ち、思っていることを話し合ったんです。そのなかで出てきたのが、すごく大きい出来事…例えば失恋とかではなく、「小さなイヤなことが積もって、全部がイヤになる瞬間ってあるよね」と。そういうときって「頑張れ」という言葉では眩し過ぎる気もするし。この曲の歌詞では、(主人公の女の子が)クラスメイトから「生きてるだけでえらいよ」という言葉を言ってもらうんだけど、それをおしつけがましくない表現にしているのがすごいなって。
――ピアノと歌だけのアレンジも生々しく表現されています。
ReoNaピアノのレコーディングに立ち会わせてもらったときに、「歌も録っちゃおうか」ということになったんです。ピアニストはライブにも参加してくださってる荒幡亮平さんで、一緒にブースに入って、お互いの呼吸を合わせながら頭から最後まで歌って。その場で言葉を紡ぐ集中力は、ライブに近かったですね。
ReoNaカントリーは自分の音楽のルーツの一つなんです。アニソン、ボカロ曲も大好きだったんですが、テイラー・スウィフト、エド・シーランなどもよく聴いていて。ある人に「君はたぶんカントリーが好きなんだね」と言われたんです。ここまでカントリーっぽい曲調は初めてだし、ReoNaのなかでも、特に明るい曲になったと思います。
――「嫌なこともあるけど、たまには逃げたり、ふわりふわり生きてもいいんじゃない?」と語り掛けるような歌詞もいいですね。歌詞の韻に合わせて“モロヘイヤ”とか“ジョン・デンバー”という言葉が入ってるのも楽しくて。
ReoNa重すぎない絶望と言いますか、日常をふわりと過ごせるような歌にしたくて、チームのみなさんと意見を出し合いながら作っていきました。“モロヘイヤ”“ジョン・デンバー”は、じつは私の提案なんです。肩の力を抜いて聴いてほしいですし、こういう曲でも私の声が活かせるんだなって思いました。
リスナーのみなさんに寄り添える曲を歌っていきたい
ReoNaはい。お歌を紡ぐとき、何度も立ち返る原点です。私自身、アニソンやボカロ曲を聴いて、自分が抱えてきた思いを代弁してもらったり、苦しさを癒してもらってきて。4月に行った全国ツアー(初のホールツアー「ReoNa ONE-MAN Concert Tour“unknown”」)でも、みなさんが私の話を聞いて笑ってくれたり、悲しい曲では目を伏せていたり。「今日来てよかった」と言ってもらえると本当にうれしいし、目いっぱいお歌を届けたいという責任を改めて感じることができました。ReoNaとして、リスナーのみなさんに寄り添える曲を歌っていきたいと思います。
取材・文/森朋之
リリースインフォメーション
SACRA MUSIC VVCL-1845〜1846
1,760円 5月12日発売
ないない/まっさら/生きてるだけでえらいよ/ないない -Instrumental-
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SACRA MUSIC VVCL-1848〜1849
1,760円 5月12日発売
ないない/まっさら/あしたはハレルヤ/ないない -TV Ver.-
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SACRA MUSIC VVCL-1847
1,320円 5月12日発売
ないない/まっさら/生きてるだけでえらいよ/ないない -Instrumental-
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