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さだまさし、「コロナ禍に聴きたい」人々に寄り添う名曲の数々 “歌は希望”伝え続けるメッセージ
「ショーを止めるな!」志を胸にライブを敢行
ヒット曲が多いことから、アレンジは原曲に比較的忠実に再現したという。そのうえで、オープニングを飾る大ヒットドラマ『北の国から』(フジテレビ系)のテーマ曲『北の国から〜遥かなる大地より〜』では、フルオーケストラを入れて、原曲の何倍もの北海道の空気を再現するなど、このアルバムのためのスペシャルな趣向も加えられている。
前回、20年ぶりにセルフカバーアルバム『新自分風土記I〜望郷篇〜』『新自分風土記II〜まほろば篇〜』を同時リリースしたのは2019年5月。あれから2年が経ち、世界中が新型コロナウイルスの影響で苦難を強いられる中、さだは自らが「国内外を問わず災害に苦しむ人はもちろん、支援活動を行う人を支援していく」ことを目的に2015年に設立した「風に立つライオン基金」を活用し、医療機関や小規模の福祉介護施設に至るまで物資を届ける支援を行うなど、先陣を切って活動してきた。
その一方で、日本で一番コンサートを行ってきたさだも、コロナ禍の影響で昨年2月14日から8月31日までの6ヵ月強、コンサートを休止せざるを得ない状況となった。
しかし、ショービジネスに関わる人間にとってもっとも大切な志とさだが考える「ショーを止めるな!」という言葉を胸に、苦難の今こそ、勇気をもって安全に音楽を活かさなければと奮闘。昨年9月、いち早く観客を入れて全国ツアーを敢行した。万全な対策を施し、感染者を出すことなく、予定通りの本数(40本強)をこなすなど、コロナ禍で苦境に喘ぐ音楽界においてもけん引するべく尽力してきた。
「歌」がもたらす人々へのパワー
2009年にリリースされ、人が生まれてきた理由が優しく語られるこの曲は、これまで岩崎宏美やクリス・ハート、平原綾香など、さだのレパートリーの中でもっとも多くのアーティストにカバーされてきた。
1980年の映画『翔べイカロスの翼』の主題歌となった『道化師のソネット』も、コロナ禍に多くのリクエストが寄せられた収録曲だ。笑顔をテーマにした歌詞に心打たれる人が多いヒット曲だが、そこには、さだの「歌は希望でありたい」という思いとともに、「聞いてもらったときに得体のしれない元気が体の中にポッと灯るような一瞬の救いを与えたい」「泣きながら笑っているのが人間の一番のいい笑顔」という考えが根付いている。
昨年、13年ぶりに出演した『第71回NHK紅白歌合戦』で披露した『奇跡2021』もその一例で、コロナ禍に多数のリクエストを受けた収録曲。明日への希望を歌う歌詞に励まされた人は多いことだろう。
「訴えなければ歌う意味はない」貫く志
都会に暮らす子を想う親の心情を描いたこの曲は、1977年フジテレビ系『故郷〜娘の旅立ち〜』主題歌に起用され、今もさだのレパートリーの中で根強い人気を誇っている。一方、年老いた母に対する息子の想いを歌っている『無縁坂』も、コンサートで歌うと泣く人が続出するという言葉の響きの美しい切ない名曲。1975年日本テレビ系『ひまわりの詩』主題歌に起用された。
コミカルな歌が多いのもさだの特徴だが、本アルバムには1979年、斬新なテーマで話題となり大ヒットした『関白宣言』(同名映画主題歌)に加え、『関白宣言』を元に作られ、昨年に話題を呼んだACジャパンのCMソング『にゃんぱく宣言』も、“おまけ”として収録されている。
歌の語源が「訴う」であることを掲げ、「何かを訴えなければ歌う意味はない。昭和の人間である私は、こう訴えたと未来の誰かに伝えていきたい」とアーティストとしての使命を語るさだ。その想いをたっぷり詰めこんだ本作をリリースした今年、コロナ収束の兆しが未だ見えない中、さだは、「できることを探して、一歩でも前に向かうことが大切」と著書でメッセージを寄せている。
自らも、コンサートツアーを6月12日からスタート。そして今秋には、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』への出演が決定しており、前に向かって歩み続けている。何が起きても諦めずにポジティブなメッセージを発信し続けるさだの活動に、今後も目が離せない。