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GRANRODEO15周年、MVでは味わえない“映像×音楽”の新境地へ「音楽そのものから一歩踏み込んだ」

去年15周年を迎えたGRANRODEO

去年15周年を迎えたロックユニット・GRANRODEO

 去年、結成15周年を迎えたロックユニット・GRANRODEO。夏には初の全世界同時生配信のオンラインライブを開催。先月にも主催フェス(GRANRODEOのほか、気志團、BREAKERZ、ベリーグッドマン、OxT、西川貴教、FLOWが出演)のリベンジ公演を成功させるなど、精力的かつアグレッシブな活動を続けている。10日に発売される新作ミニアルバム『僕たちの群像』は、初の試みとなるショートムービーとの融合作品。映像を元に新曲を書き下ろし、MVでは味わえない“映像×音楽”の新たな表現に挑んだという。彼らの挑戦には、生のライブが困難な今だからこそ伝えたいメッセージが込められていた。

嵐、RADWIMPSを手掛けてきた直監督のショートムービーに音楽を融合させた“逆タイアップ”アルバム

 声優としても活躍しているKISHOW(V)、作曲家・プロデューサーとしての手腕もあるe-ZUKA(G)により、2005年にシングル「Go For It」(TVアニメ『IGPX』OP主題歌)でデビューしたGRANRODEO。その後、「デタラメな残像」(TVアニメ『ブラスレイター』OP主題歌)、「RIMFIRE」 (TVアニメ『黒子のバスケ』2クール目OP主題歌)「少年の果て」 (TVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期エンディング主題歌)などで圧倒的な支持を得た。また、高いパフォーマンス力にも定評があり、サマーソニックをはじめとする大型フェスでも大きな注目を集めてきた。

 ロックとアニソンを融合させ、シーンを超えた人気を得てきた彼ら。これまで培ってきたスタイルを活かしつつ、これまでにない斬新な音楽表現に結びつけたのが、本作『僕たちの群像』というわけだ。本作の最大の特徴は、オリジナル脚本のショートムービーをもとに新曲を書き下ろし、“映像×音楽”を有機的に融合させていること。
  • 『ロストマインズ』場面カット

    『ロストマインズ』場面カット

  • 『ロストマインズ』場面カット

    『ロストマインズ』場面カット

 起点になったのは、“生のライブがやりづらい状況のなかで、音楽そのものから一歩踏み込んだ表現方法はなんだろう?”と考えたことだったという。さまざまなアイデアを模索するなかで辿り着いたのが、オリジナル作品を作り、それに対してGRANRODEOの音楽を融合させる“逆タイアップ”のようなイメージ。オリジナルのストーリーに登場する人物の心情を描いた挿入歌として楽曲を書き下ろし、いわばサウンドトラックアルバムと同じ手法で作り上げられた。

 『ロストマインズ』と題されたショートムービーの監督を務めたのは、嵐(「Happiness」「アオゾラペダル」など)、back number(「青い春」「ヒロイン」など)、RADWIMPS(「マニフェスト」)などのMVを手掛けてきた直だ。

 本ムービーは、高校2年生の達也が、静まり返った校舎にぽつんと取り残されている場面からはじまる。いつもと同じ風景なのに、人の気配がまったく感じられない。そんな状況に戸惑いながら、同じく校舎に取り残された未奈、千秋、蓮とともに、もとの世界に戻るために行動を起こす。それは1年目に事故で亡くなったクラスメイト、司がこの世でやり残したことを実現することだった――。青春群像とSF的な要素を織り交ぜた脚本、美しく瑞々しい映像がひとつになった本作は、短編映画としてのクオリティも際立っている。

当たり前にあった日常を失くし、先が見えない社会を生きる人々に届けるメッセージ…“過去は取り戻せる”

『ロストマインズ』場面カット

『ロストマインズ』場面カット

 ミニアルバム『僕たちの群像』は、リード曲「未来線を上って」で始まる。きらびやかな光を放つギターフレーズに導かれたこの楽曲の主人公は、やり残したことばかりで途方に暮れている“僕ら”。狂おしいまでに愛おしい過去の思いを残しつつも、「昨日は戻らないきっと/明日を拓くんだろうずっと」という確かな予感とともに未来に向かう決意に至る。ショートムービー『ロストマインズ』の物語とも強く重なっているこの曲は、『僕たちの群像』のコンセプトを端的に示す楽曲と言えるだろう。

 さらに軽快なバンドサウンドと思春期の初々しい恋愛感情が一つになったポップチューン「オレンジピール」、ハードロック系のギターリフとともに、愛の本質を射抜くような歌詞が響き渡る「妄想GRAVE」などを収録。『ロストマインズ』に沿って楽曲を制作したことで、GRANRODEOの音楽性がさらに広がっていることも、本作の聴きどころだろう。

『ロストマインズ』場面カット

『ロストマインズ』場面カット

 最後に収められたロックバラード「その愛と死を」も当然、ショートムービーの物語と強く結びついている。この曲で表現されているのは、失ってはじめて実感した“君”への愛、そして、愛を知って生きることの怖さと素晴らしさ。濃密なエモーションを放つKISHOWのボーカル、ドラマティックな旋律を奏でるe-ZUKAのギターも絶品だ。この曲を創り出しことは、“映像×音楽”をさらに突き詰めた『僕たちの群像』における最大の成果だと言っても過言ではないだろう。
  • 2nd Mini Album『僕たちの群像』

    2nd Mini Album『僕たちの群像』

 ストーリーと楽曲の関係性、歌詞に込められた思いを含め、リスナーによってさまざまな解釈が可能な本作だが、筆者がもっとも強く感じたのは、“過去は取り戻せる”というメッセージだった。『ロストマインズ』に登場する高校生たちは、亡くなってしまった友達の“願い”を探すことによって、それぞれの過去と向き合う。その過程で強い憤りや葛藤、後悔に直面するのだが、お互いに胸の内をさらけ出すことで過去を取り戻し、未来へと足を進めるのだ。映像に収められた彼ら、彼女らの姿、そして、『僕たちの群像』の楽曲はまちがいなく、当たり前にあった日常を失くし、先が見えない社会を生きる我々に大きなヒントを与えてくれるはずだ。

 楽曲だけ、MVだけでは表現できない、新たなスタイルを示した本作『僕たちの群像』。映像と音楽が生み出す、斬新にして普遍的なエンターテインメントをぜひ、じっくりと体感してほしい。


(文=森朋之)
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