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拡大するノンアル市場、アサヒが3年半かけ「0.5%」の“微”アルコールビールを開発した理由とは
「こんなにビールに近いものを出していいのか」ノンアル市場が急成長した理由とは
「出始めの頃は味がイマイチなところがありましたが、他社も含めて様々な商品が開発・販売されるようになり、どんどん美味しくなっていきました。さらに、運転だけでなく、スポーツ前後ののどの渇きや休肝日(肝臓を休ませる日)のビールの代替など、アルコールを控えなければいけないけれど、ビールが飲みたいというときにふさわしいということで、飲用シーンが大きく広がったことが追い風となり、売り上げが伸びていきました」(アサヒビール 梶浦氏/以下同)
「反響は大きかったですね。『こんなにビールに近いものを出していいのか』という嬉しいお言葉も頂戴しました。0.00%を開発する前、0.1%を発売していた時期もあったのですが、味の面で今ひとつ、イノベーションを起こすことができず広がりませんでした。『ドライゼロ』は“最もビールに近い味”を目指して開発しました。ビールらしい味わいが好評でどんどん広がり、ノンアルコールビールテイスト飲料市場において5年連続売上No.1を達成しています。」
“酔うため”ではなく“飲むため”の微アルコールが現代にマッチ
「当社では、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の実現のために設定したマテリアリティの1つである『責任ある飲酒』を推進し、飲む人も飲まない人もお互いが尊重し合える社会の実現を目指すため、『スマートドリンキング(飲み方の多様性)』を提唱しています。今はメニューを見ると、ビールが1種類しかなかったり、度数が選べなかったり、あまりにも選択肢が少なさすぎます。それは、他のアルコール飲料やノンアルコール飲料も同じです。理想とするのは、種類も度数ももっと増やし、さまざまな人たちが自身の状況や場面に合わせて、自分の好きな飲み物を自分の好きなタイミングで選べる選択肢があるようにすることです。今後、お客様の飲み方を多様化するために、魅力的な商品やサービスの開発、環境づくりを推進していきます。その一環として、アルコールが微かに含まれるアルコール度数1%未満の商品を新カテゴリーの“微アルコール”として展開していく方針で、『ビアリー』はその第1弾です。度数に関してはいろいろ試しましたが、技術的に安定して美味しいビールテイスト飲料が作れるのが0.5%でした」
「アルコール度数が低いものは誰でも作れます。当社としては、“満足できる味”を実現することがイノベーションと考え、アルコール度数が低くても、物理的にも心理的にもお客様が十分満足できることにこだわりました」
『ドライゼロ』が調合技術によってビールに近い味を作っているのに対し、『ビアリー』は、ビールを醸造した後、アルコール分だけを丁寧に抜き取る独自の蒸溜技術でビールらしい本格的な味わいを実現。約100回の試験製造を重ね、3年半もの歳月をかけて開発された。
「僕自身ビールが大好きなので、『ビアリー』の開発を聞いた当初は、正直、0.5%なんて飲む意味ないよと思っていました。ところが、飲んでみたらうまいなって驚いて。泡もいいし、発酵由来の香りも高いし、アルコール度数が低くてこの味だったら飲みたいと思いました。見た目も泡ものどごしも味も、ビールとほぼ同じなので、驚いていただけると思います」
「アルコールの摂り過ぎは体調管理の面で問題となっていますが、現在、コロナ禍により家飲みをされる方、運動不足の方が増え、さらに問題視されています。『ビアリー』は、アルコール度数は低いけれど、5%と同じような味わいで、10本飲んでも5%ビール1本分ですから、酔いたいというよりは、ビールの味が好きだという方にとってすごく意義のある商品だと思っています」
もう1点は、ノンアルコールビールが実現した飲用シーンの多様性をさらに広げることだ。
「0.5%は、“ほんのちょっと(アルコールが)入っている”というところがポイントです。ちょっと心地よくなりたいとか、酔いたくはないけれど、ちょっとお酒の味がほしいとか。ゲームしながら、本を読みながら、休日のランチタイムや翌日にお酒の影響を残したくないときなどなど、ゼロはさびしいけれど5%はいらないというようなときに飲んでいただけます。また、コロナ禍の現在、レストランでの飲食の需要が昼の時間帯にシフトする傾向にありますが、それによりノンアルコールやローアルコールを充実させたいという声が飲食業界からあがっています。今後、さまざまな人々の状況や場面における “飲み方”の選択肢を拡大し、体調やシーンに合わせて選べる時代にしていきたいと考えています」
アサヒビールが実施したアンケート調査によると、近年、「あえて飲まない」という若者が増加している。さらには、飲み会やお酒の飲み方に不満・不自由さを感じている人は約半数。微アルコールビールは、多様性を受容できる社会を実現するための商品でもあるということだ。
アルコールがグラム表記化? カロリーと同じようにアルコールも計算して飲む時代に
さらにもうひとつ、初の試みとして、純アルコールグラム量をWebサイトで開示する予定だ。
「食事はカロリーを計算して摂りすぎがわかりやすいですが、飲みすぎって意外とわかりませんよね。アルコールは100mlのものに5%入っているから5gかと思いきや、そうではないんです。厚生労働省からは1日のアルコール摂取量の指針がグラム表記で出されていますが、現在グラム表記のお酒は少ないです。当社としても、グラム表示をすることで、自分の体調や体質に合わせ、ご自身でコントロールしてアルコールと上手に付き合える世の中にしていけたらと考えています」
飲む人も飲まない人も、飲みたい時も飲めない時も、いろいろな人がひとつの場所に集まって、自分にとって適切な飲み物を選んで楽しい時間を共有する。そんな多様性のある飲み会が、コロナ禍を乗り越えた後の令和の飲みニケーションの形になるのかもしれない。
(取材・文/河上いつ子)
【商品概要】
商品名 :アサヒ ビアリー
発売品種 :缶350ml
アルコール分:0.5%
先行発売 :2021年3月30日(火)
発売地区 :東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県の1都9県
全国発売 :2021年6月29日(火)
希望小売価格:181円(税抜)
商品名 :アサヒ ビアリー
発売品種 :缶350ml
アルコール分:0.5%
先行発売 :2021年3月30日(火)
発売地区 :東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県の1都9県
全国発売 :2021年6月29日(火)
希望小売価格:181円(税抜)