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渋谷すばる“俺には歌が必要だ” 新作『NEED』全曲レビュー
2018年7月、関ジャニ∞での活動を終了し、2019年2月にオフィシャルHP「渋谷すばるです。」を開設。さらに同年4月にオフィシャルファンクラブ「Shubabu」、秋には自主レーベル「World art」を立ち上げ、ソロ活動を本格化。今年1月末からは、千葉・幕張メッセ公演を皮切りに初の全国ツアーを成功させるなど、その活動はきわめて順調だった。
しかし、すべてのアーティストやエンターテインメントに関わる人々と同様、コロナ禍の影響により活動は停滞。渋谷も初のアジア公演がキャンセルになるなど、大きな打撃を受けた。
“楽曲が1曲できるまで”を『あなぐらTV』シリーズとしてYouTubeチャンネルで公開した渋谷すばる
2ndアルバム『NEED』全曲紹介
<歌が必要だ 俺にはどうしても>というフレーズで始まるアカペラ曲。どんな時代になっても、世界がどうなろうと、絶対に歌は必要なんだという切実は思いを全力で響かせるこの曲は、アルバム全体のテーマを示すと同時に、渋谷すばるという歌い手の覚悟がしっかりと伝わってくる。技術に頼らず、愚直なまでに“伝える”ことに心を砕いたボーカルも素晴らしい。
エッジの効いたギター、軽やかに飛び跳ねるピアノ、そして、渋谷のブルースハープが共鳴し合う。性急なビート、感情をむき出しにしたメロディ、生々しいライブ感にあふれたサウンドを含め、“これぞ、渋谷すばる!”なロックンロール・ナンバーだ。どんなに激しく叫んでも、決して歌心を失うことがなく、叙情的な雰囲気を滲ませるボーカルも素晴らしい。
M4:Noise
何気ない日常の風景から、普遍的なテーマに結びつける天性のセンスも、渋谷すばるの魅力。「Noise」と題されたこの曲では、部屋の片づけ、要らないものの整理をしているうちに、本当に必要なモノとは何か? 不自然と自然の違いとは何か? という根源的なテーマにたどり着いている。心地よいグルーヴと言葉の強さを共存させた歌からは、彼の表現の深化が伝わってくる。
M5:水
まるで水滴のように響くピアノから始まる「水」は、ゆったりとたゆたうメロディとアコースティックな音響が混ざり合うバラード。時代の波に身を委ねながらも、本当に大切な人との愛を抱えながら生きていきたい――そんな思いが込められた歌詞は、先が見えない現状において、一筋の光のように映る。壮大なスケール感を漂わせるサビの旋律も、このアルバムの聴きどころの一つ。
M6:風のうた
軽快なリズムとハーモニカの音色によって、アルバムの空気は一変。穏やかな表情が伝わる歌、女の子のスカートが風で揺れる瞬間を捉えたリリックによって、ほっこりした気分が生まれる。キラキラとした光を想起させるピアノ、気持ち良く前進するドラム、楽曲のボトムを支えるベース、青春の匂いを感じさせるギターソロなど、バンドのアンサンブルも絶品だ。
M7:たかぶる
最初に聴こえてくるのはオーセンティックなレゲエのリズム。長めのイントロで奏でられる渋いブルースハープをじっくり味わっていると、激しく打ち鳴らされるドラムのハイハットとともにいきなりテンポが上がり、パンキッシュなロックンロールに変貌する。遊び心にあふれたアレンジ、ルーツミュージックに対する敬意が伝わる楽曲だ。“お前の気持ち、分かるぜ!”と叫びまくる歌詞も楽しい。
M9:人
ピアノと歌を中心としたサウンドのなかで奏でられるのは、“人を傷つけてはいけない”という本質的なメッセージ。頭ではわかっていても、なかなか実践できない大切なことを美しいメロディとともに響かせる楽曲だ。ピュアな思いに満ちあふれた渋谷の歌に寄り添う演奏陣のプレイも秀逸。渋谷とバンドの関係性は、本作の制作のなかでさらに向上しているようだ。
M11:Sing
アルバムの最後を飾るのは、1曲目と同じく“この世界には歌が必要だ”との思いを込めた楽曲。言葉だけでは伝えられないことも、歌という形にすることで、どんなに遠くにいる人にも伝わるし、必ず心と心でつながることができる。渋谷すばるにとって歌とは何か? というもっとも根源的な問いに対する答えが、ここにある。
文/森朋之
INFORMATION
11月11日発売
https://special.shibutanisubaru.com/feature/2nd_need(外部サイト)