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ORICON NEWS
久保田利伸の“全楽曲”がストリーミング解禁 超ヒット曲から最新のCM曲まで数々の名曲を振り返り
日本の音楽ファンをR&Bと出合わせた立役者
ブラックミュージックをルーツとしたサウンドを扱ったミュージシャンはそれまでにも少なからず存在した。しかし、久保田の登場は大きな衝撃をもって迎えられる。体内に取り込んだソウルサウンドが自然とあふれ出るかのようなパフォーマンスは、音楽ファンのみならず耳の肥えた関係者のアンテナをもしっかりととらえ、お披露目となったコンベンションライブには観衆が殺到、ホールの扉が閉まらないほどの異常事態となった。さらに、デビュー前に配布されたデモテープは瞬く間に話題となり、高値で取引されたという逸話まで残っている。
そんな圧倒的な前評判のなか、リリースされたファーストアルバム『SHAKE IT PARADISE』(86年)には、「流星のサドル」「Missing」という今なお愛されている代表作が収められた。とりわけ「Missing」は久保田のボーカル力の高さが遺憾なく発揮された屈指のラブバラードとして、多くのアーティストのカバーを生み出すこととなる。R&Bに興味のなかった人をも振り向かせるきっかけとなったスタンダードナンバーと言ってもいいだろう。
名曲「LA・LA・LA LOVE SONG」や「Missing」はJ-POPの発展にも貢献
90年代に入ると拠点をニューヨークに移し、ワールドワイドな活動を始めるようになる。それは、ブラックミュージックの本場に日本語の柔らかな響きとジャパニーズポップスの持つカラフルさを流入させ、“化学反応”を引き起こすこととなる。そんななかから生まれたのが前述した「LA・LA・LA LOVE SONG」だ。「Missing」同様、長きにわたり(発表から24年!)多くの人に愛されカバー作品を他出している同曲だが、注目すべきは歌っているアーティストの国籍が多岐に広がっていること。文字通り、久保田が“世界”へ一石を投じた証である。
上記のほかにもポップさが心も体も揺さぶる「You were mine」(88年)や「AHHHHH!」(98年)など、印象に残る曲は枚挙にいとまがない。それらがすべてストリーミングで楽しめる時が来た。彼の音源解放はファンの間で以前から強く望まれていたことでもある。それだけに満を持しての“解禁”とも言えるだろう。
デジタルシングルもリリース 久保田自身が「今歌いたい、今聴いてほしい曲」
11月には、南青山・ブルーノート東京で6日間のスペシャルライブも予定されている。ジャジーな空間とグルービーな久保田のパフォーマンスは相性的にも最高と言えるが、同所でのライブは今回が初めて。それだけにどんなセットリストで我々を楽しませてくれるかにも注目したい。
秋が深くなり、より一層耳が音楽を求めてくる季節。久保田利伸の珠玉のナンバーを様々な形で楽しんでいただきたい。
(文/田井裕規)