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声優・下野紘を築き上げたキャラ5選 『鬼滅の刃』我妻善逸の愛されぶりには“親戚のおじさん”感覚

この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。
⇒この記事をオリジナルページで読む(8月14日掲載)

撮影:石川咲希/Pash 取材・文:遠藤政樹
ヘアメイク/小田桐由加里 スタイリスト/村留利弘(Yolken) 衣装協力/KOH’S LICK CURRO

声優活動20年目「少しずつ上ってきた」

――来年6月21日で声優活動20周年を迎えられます。デビュー当初から変わった部分と変わらない部分はありますか?
下野紘応援してくださる人や支えてくれている人たちがいてこそ、ということはずっと変わらず感じていることです。応援し、見てくれる人がいないと、まったく成り立たない仕事です。ファンの方々のおかげで僕は声優の仕事を続けていられる、キャラクターを演じることができる、歌うことができる、ということを改めて強く感じるようになりました。いろんなことを経験してきて、「声優という仕事を辞めないでよかったな」という想いも変わらないですね。

変わった部分でいうと、最近は声優の可能性が広がり、表現の仕方や見せ方、パフォーマンスなどをさまざまな形で発信できる機会が増え、自分自身もいろんなアプローチで伝えられるようになってきました。声優としてもそうですけど、人としても、この仕事をやり続けた結果、変化した部分や成長できた部分はあるかなと思います。

――2001年にデビューし、翌年には主役に起用され、早くから活躍されているイメージがありますが、ご自身ではいかがですか。
下野紘作品に出たのは早いのですが、そこから至らない部分や苦労したことがものすごくいっぱいありました。自分としては「もっともっといろんなキャラクターを演じたい」「いろんな仕事がしたい」と思う中で、なかなか自分が思い描いている仕事と結びついていかない、そんな歯がゆい時期がデビューからしばらくはありましたね。

もともと声優になりたいと思って目指したものの、実は人前で何かを表現したり、人前でしゃべるのも苦手でした。「失敗しちゃいけない」という思いが強すぎて、うまく表現できなかったり、あわあわしてしまったりということも多かったです。

――その時はどんなことを考えていたのでしょうか?
下野紘ただただヘコみました。「なんでできないんだろう」と思いながら、次チャンスをもらえたときに「もう一回頑張ろう」と思い直し、またヘコんで……を繰り返してきました。

あるとき養成所の講師から「お前は生きることに必死すぎる」と言われ、“本当にそうだな”と思いました。「この1行のセリフを失敗したら死ぬ」くらいの気持ちでいたと気づき、思い詰めすぎないようにしようとしたあたりから、少しずつ緊張とうまい付き合い方をしていけるようになった気がします。上がって下がって上がって下がってを繰り返し、少しずつ上(のぼ)ってきた感じです。
【声優・下野紘を築き上げた5人のキャラクター】

【1】“スタート地点”となった初めて尽くしのキャラ――『ラーゼフォン』神名綾人

――さて、20周年を目前に控えた今、“声優・下野紘の節目や転機となったキャラクター5人”を選んでいただきます。まず、真っ先に挙がったのは、デビュー翌年のテレビアニメ『ラーゼフォン』(2002年)の主人公、神名綾人(かみな・あやと)でした。
下野紘やっぱり最初に挙げるとしたら、僕にとって“スタート地点”と言っても過言ではない神名綾人ですね。初アニメで初主人公、さらに言えばオーディションで受かったのも初めてという、本当に初めて尽くしのキャラクターでした。

実はこのキャラクターのオーディションに受からなかったら、声優を辞めようと思っていました。「才能ないのだろうな……」と考えていた時期で、僕の声優生活も、彼と出会っていなければ、今はなかっただろうと思います。
『ラーゼフォン』
アニメーション制作:ボンズ。舞台は21世紀初頭の東京。高校生・神名綾人は、不思議な少女の導きで、巨大な人型の存在「ラーゼフォン」が出現する瞬間に居合わせる。侵略に遭う東京を脱出するため、ラーゼフォンに同調し、綾人は体内へと入っていく……。
  • 『ラーゼフォン』コンプリート Blu-ray BOX、メディアファクトリー、2011年

    『ラーゼフォン』コンプリート Blu-ray BOX、メディアファクトリー、2011年

――役作りで心がけたことなど、覚えていることはありますか?
下野紘そんなことを考えられないぐらい余裕がなかったです(苦笑)。ただ、余裕がなく一生懸命だったり、振り回されていたり、そういった部分が神名綾人と合致したというのはあったかもしれない。

――収録現場での思い出深いエピソードはありますか?
下野紘本当に何もわからなくて、現場に入ったとき、「おはようございます」のあいさつをどのタイミングで言えばいいのかさえわからないぐらい緊張していました(笑)。名だたる声優さんたちばかりで、“みんな仲良くしゃべっている。僕だけ新人で誰も知らないけどどうしよう。あいさつはどのタイミングですれば……”なんて心の中で焦っていたら、マネージャーから「いいから行け!」って言われました(笑)。

当時はがむしゃらすぎたのか、ある大ベテランの方が僕のことをイジってきてくださったのに、その気遣いに気づかず「ちゃんとやってますよ!」って言い返したこともありました。その方は面白がって笑っていらっしゃったらしいのですが、周囲のスタッフは「何てことを言うんだ!」と焦っていたそうです。

――ちなみに、その大ベテランの方というのは……。
下野紘実はどなたにイジられたのか見えていなかったのですが、内海賢二さん(※)だったと後で聞きました。出渕裕さん(『ラーゼフォン』監督)から、「あの内海さんに対して、『ちゃんとやってますよ!』じゃないだろう」と言われました(苦笑)。いやあ……今だったら考えられないですね。今ならもう少し違う対応をしていたはずです。

※内海賢二さん……『北斗の拳』ラオウ役、『鋼の錬金術師』アレックス・ルイ・アームストロング役など。『ラーゼフォン』では亘理士郎を演じた。1937年〜2013年。

【2】「少しずつオーディションにも受かるようになった」転機の役――『CLUSTER EDGE』アゲート・フローライト

――続いては『CLUSTER EDGE(クラスターエッジ)』(2005年)のアゲート・フローライト。天真爛漫な笑顔に破天荒な行動というのが魅力のキャラクターです。
下野紘仕事が増えていく転機となったのが、『CLUSTER EDGE』でした。この作品に関わらせていただいた後、いろいろな仕事やキャラクターをやらせてもらえる機会が徐々に増えていったんです。……神名綾人とアゲートは決まりとして、このあと誰にしようか困るな。
『CLUSTER EDGE』
アニメーション制作:サンライズ。20世紀初頭のヨーロッパを彷彿とさせる異世界が舞台。各国の名家の子息が在籍する名門校「クラスターE.A.」に一人の少年、アゲート・フローライトが転入してきた。アゲートには、本人も知らない出生の秘密と、「奇蹟」を起こす不思議な力があった……。
  • 『クラスターエッジ 1』DVD、バンダイビジュアル、2006年

    『クラスターエッジ 1』DVD、バンダイビジュアル、2006年

――多くのキャラクターを演じている中で5人選ぶというのは大変ですよね。
下野紘5人に絞るのは難しい。タイミングごとにいろいろありますからね。例えばパッと挙げてみても、『バカとテストと召喚獣』(2010〜2011年)の吉井明久、『みつどもえ』(2010〜2011年)の矢部智、『進撃の巨人』(2013年〜)のコニー・スプリンガー、う〜ん……増えるな(笑)。

ただ、声優活動の“ターニングポイント”として振り返ると、『CLUSTER EDGE』でアゲートをやってから少しずつオーディションにも受かるようになったので、外せないですね。

【3】声優・下野紘を広く世に知らしめた“おバカ”キャラ――『おおきく振りかぶって』田島悠一郎

――次は、悩んだ末に『おおきく振りかぶって』(2007年)の田島悠一郎(たじま・ゆういちろう)を選ばれました。主人公・三橋廉(CV:代永翼さん)と同じ西浦高校野球部随一の実力者で、普段はちょっとおバカだけど決めるときは決めるところがクセになるキャラクターです。
下野紘本格的に“声優・下野紘”という存在を広く知ってもらえたきっかけは多分、『おおきく振りかぶって』かなと思いますね。
『おおきく振りかぶって』
原作:ひぐちアサ アニメーション制作:A-1 Pictures。埼玉の公立校・西浦高校野球部が舞台。ピッチャーの三橋廉は、中学時代、祖父が経営する群馬県の三星学園のエースだったが、“ひいき”されているとチームメイトから嫌われ、自虐的で暗い性格になってしまう。人間不信に陥り、隣県の西浦高校へ進学。部員は新入生ばかり10人の無名野球部が、悩みながらも仲間とともに成長していき、甲子園優勝を目指して奮闘する。
  • 左が田島悠一郎/ひぐち アサ『おおきく振りかぶって』31巻、講談社、2019年

    左が田島悠一郎/ひぐち アサ『おおきく振りかぶって』31巻、講談社、2019年

――下野さんはギャップがあるキャラクターに定評がありますが、田島はまさにギャップが魅力ですよね。
下野紘田島に関しては、がむしゃらに一生懸命演じるだけだったので、もう田島のキャラクターに“おんぶに抱っこ”みたいなところはありましたね。

実は、「田島って、そんなに言われるほどカッコいい?」って思っていたこともありました。決めるときに決めるカッコよさはわからなくはないのですが、バカなときが本当にバカだなって(笑)。

田島と関わるようになって、キャラクターとの向き合い方がより密になっていった感じはありました。というのも、アニメでキャラクターを演じる以外にイベント出演などの機会が徐々に増えてきたので、お客さんの反応を生で感じられたのが大きかったのかも。そのあたりから、失敗してもヘコむだけじゃなくて、“でも、ここは面白くできた。じゃあ、もっとこうしたらこの子(キャラクター)の良さが増すのでは”みたいな考え方ができるようになって。

それで少しずつ自信というか、工夫する余裕が出てきました。そういう感覚は『おお振り』あたりからですかね。

【4】長い付き合い、兄弟に近い気持ちもある――『うたの☆プリンスさまっ♪』来栖翔

『うたの☆プリンスさまっ♪』
アニメーション制作:A-1 Pictures。2010年に発売された同名の人気ゲームのメディアミックス作品。超人気アイドル・HAYATOに憧れ、作曲家を夢見る七海春歌は、念願かなって競争率200倍の芸能専門学校「早乙女学園」作曲家コースに入学。アイドルコースの1人とペアを組み、卒業時に行われる「シャイニング事務所 新人発掘オーディション」の合格を目指す。そんな春歌の前に、アイドルになることを夢見る6人のプリンス、一十木音也(いっとき・おとや)、聖川真斗(ひじりかわ・まさと)、四ノ宮那月、一ノ瀬トキヤ、神宮寺レン、来栖翔(くるす・しょう)が現れる。
――続いては、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ(2011年〜)の来栖翔。男気と愛きょうあふれるキャラクターですね。身長が低いことを気にしているところもキュートです。
下野紘やっぱり外せないのは『うたプリ』。翔に関しては長い付き合いをさせてもらっているというか、一緒に歩んでいるキャラクターですね。

それまでは、イベントで歌ったり、パフォーマンスをするのが苦手でした。人前に立つのは緊張しますし、声の仕事として芝居するのではなく自分自身がパフォーマンスで表現するということに、あまり積極的になれない面もありました。

そういう部分で、翔には、一緒にステージングなどを作り上げて支えてもらってきたなと思います。

『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジ LOVEキングダム』スペシャルライブPV

――下野さんにとって、翔はどんな存在ですか?
下野紘すごく支えてもらっていて、兄弟ではないですけど、それに近い気持ちかな。一緒にライブの稽古をしたり歌の練習したりを続けてきたし、彼がいなかったら僕は『うたプリ』のライブには出られなかったでしょうしね。それに翔がいなければ、自分自身がアーティストとして歌を出そうとも思わなかった。

初めて下野紘として歌を出すとなったときに、翔にどれだけ支えてもらって歌っていたのかを実感しました。“翔”としては歌えるけど、“下野紘”自身の歌い方とはなんぞやと、わからなくなってしまうこともありました。ステージングは翔を通じて学びましたね。

【5】絶対にやりたかった役「本当に大人気、ご活躍で(笑)」――『鬼滅の刃』我妻善逸

――最後は思わず「待ってました!」と言ってしまいそうな、「我妻善逸」(あがつま・ぜんいつ)。原作マンガ、アニメ共に大人気の『鬼滅の刃』(2019年〜)の人気キャラクターで、主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)の同期の鬼殺隊(きさつたい)剣士です。ここで名前が挙がらなければ、あとでお話を聞くつもりでした(笑)。
下野紘挙げたいキャラクターは他にもあるけど、最近だとやっぱり善逸は、ね。ここ最近、本当に大人気、ご活躍で……と思います(笑)。
『鬼滅の刃』
原作:吾峠呼世晴 アニメーション制作: ufotable。大正時代の人喰い鬼の棲む世界が舞台。炭売りの心優しき少年・竈門炭治郎は、人喰い鬼に家族を惨殺されたことで生活が一変。唯一生き残ったものの、凶暴な鬼に変異した妹・禰豆子(ねずこ)を元に戻すため、さらには家族を殺した鬼を討つため、2人は旅に出る。
――まさに! 善逸に対してはどのような気持ちを抱いていますか?
下野紘「絶対にやりたい役」でした。僕の声優人生の中で、20年培ってきた表現を最大限に出せるキャラクターが「我妻善逸」だと思いました。シリアスで物静かなときもあれば、ギャーギャーうるさい瞬間もあり、いろんな表情を出してくるこのキャラクターを絶対にやりたかった。

他の誰かが我妻善逸をやることを全然イメージできなかったほど、やりたい思いが強かったです。だからいろんな人に好きになってもらえてよかった。最初はやりながら「うるさいな、こいつ」なんて、自分で思っていたんですけど(笑)。

TVアニメ『鬼滅の刃』我妻善逸スペシャルPV

――善逸役をやってから、小学生の女の子からもファンレターが届いたそうですね。
下野紘そうなんですよ! 本当にびっくりするぐらい小学生からのファンレターが増えましたし、「娘が好きなんです」とか「孫がファンなんです」とか、いろんな年齢層の方たちからファンレターをいただきました。本当に善逸が幅広くいろんな方に愛されてよかったなと思います。
――そこまで多くの方から熱烈な支持を集めた心境はいかがですか?
下野紘感覚的には“親戚のおじさん”です(笑)。「うちの善逸が本当によくしてもらって、みんなありがとうね」みたいな気持ちですね。

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