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わずか4年で“ハマスタ”ライブを実現 Suchmosが音楽シーンに与えた影響とは

 Suchmosが昨年9月に開催した神奈川・横浜スタジアムでの単独公演の模様を収めたBlu-ray&DVD『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』を発売した。デビュー当初から、メンバーの地元であるシンボル“ハマスタ”でのライブを目標に掲げてきた。バンド結成からハマスタ公演に至る軌跡、Suchmosが音楽シーンに与えた影響について改めて検証したい。

海外シーンと重なりながら、既存のJ-POPにはない独自の音楽で後続を牽引

  • 『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』より

    『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』より

 2013年にYONCE(V)、HSU(B)、OK(Dr)を中心に結成されたSuchmos。2015年4月に1st EP『Essence』をリリース。TAIKING(G)、KCEE(DJ)、TAIHEI(Key)が加入し、現在の体制となった。「Fallin’」「YMM」などの初期の代表曲、1stフルアルバム『THE BAY』によって、早耳の音楽ファンや業界関係者、ファッションやカルチャーシーンからも注目を集めた彼ら。地元のFMヨコハマで初レギュラー番組がスタートし、『Apple Music Best of 2015』のベストニューアーティスト賞に選出されるなど、徐々に存在感を高めていった。この頃のSuchmosの音楽のベースにあったのは、ソウルやR&Bなどのブラックミュージック。さらにジャミロクワイに代表されるアシッドジャズ、ニルヴァーナをはじめとするグランジロックなど90年代のエッセンスを織り交ぜ、独自のサウンドへと昇華していた。

 Suchmosが躍進したきっかけは、2016年1月にミュージックビデオが公開された「STAY TUNE」。しなやかなグルーヴとキャッチーなメロディーがひとつになったこの曲は、J-WAVEなどのFM局でヘビィローテーションされ、幅広い音楽ファンに訴求。Honda『VEZEL』のCMに起用されたこともあり、大きな話題を集めた。「STAY TUNE」を含む2ndアルバム『THE KIDS』(2017年1月25日発売)がオリコン週間アルバムランキングで最高2位を記録し、『第59回日本レコード大賞』で最優秀アルバム賞を獲得。この1年間でSuchmosは確実にブレイクのきっかけを掴んだと言っていい。

 「STAY TUNE」が発売された2016年前後は、日本の音楽シーンが大きく変化した時期だった。Nulbarichやcero、D.A.N、WONKなどが続々とデビューし、Suchmosと同じく、現在進行形のジャズやブラックミュージックなどを取り入れたアーティストやバンドが新たな潮流を作り出した。その動きは、マーク・ロンソンの世界的ヒット曲「Uptown Funk」(マーク・ロンソンfeat.ブルーノ・マーズ)に象徴されるネオソウル、ファンク・リバイバルとも同期している。海外シーンと重なりながら、既存のJ-POPにはなかった音楽性によって、大きなヒットを生み出す“カッコ良くておしゃれで新しい”という流れの起点になったのがSuchmosであり、「STAY TUNE」なのだ。

自分たちの感性を信じ、やりたい音楽を貫いた結果、メジャーシーンにも浸透

 ここで強調しておきたいのは、彼らは音楽的トレンドを取り入れたのではなく、あくまでも自分たちの感性を信じ、やりたい音楽を貫きながら結果を出したということだ。『ORICON NEWS』のインタビューでYONCEは、「俺らが売れているほうに寄せて行くとか、やることがブレてしまうのは、すごくカッコ悪いと思う。そういう意味では、俺らは一貫して自分たちが良いと思うものを作り続けるだけです。そこに何か希望があるとすれば、受け取る人の価値観がもっと変わって欲しいということかな」(2015年9月30日掲載)と語っている。Suchmosのブレイクは、YONCEが口にした“希望”が現実のものになった、ということだろう。

 その後Suchmosは、さらに大きなフィールドへと進んでいく。6月に発売されたミニアルバム『THE ASHTRAY』は、アリーナや野外フェスに似合いそうなロックサウンドへと移行。実際、この年には『FUJI ROCK FESTIVAL』のグリーンステージ(約4万人規模のメインステージ)に出演し、11月には神奈川・横浜アリーナでの初ワンマンライブを開催。さらに『第69回NHK紅白歌合戦』に初出場するなど、メジャーシーンへと突き進んだ(「臭くて汚いライブハウスから来ました」と言ったYONCEのコメントも当時話題になった)。それはシティポップ、ネオソウルといった言葉に大乗される日本の音楽シーンの新しい動きが、アンダーグランドとオーバーグランドの壁を越えた出来事だったのだ。

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