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「今の小学生は知らない…」のになぜ? 30年以上「タマ&フレンズ」をドリル表紙に起用し続けるワケ
学習教材初のアニメキャラクターを起用、子どもたちのやる気を出したい
担当者 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国で一丸となって対策に取り組んでいるなか、3月初旬から学校の休校措置がとられています。授業で学習すべきところが抜けている状態で、児童・保護者とも不安を抱えられています。春休みや休校中に家庭でフォローができるような、ドリルとは別の学習教材を求める声を多くいただいております。
――そのような声にどのような対策を行っていますか?
担当者 できるだけお声に応えられるように、弊社では好きな内容のプリントがオーダーできる「漢字・計算確認テスト・オーダーメイド作成システム」を無償公開しています(学校の先生対象になります)。このような時でも、基本の定着を目指し、児童1人ひとりにあわせた弱点を強化し、家でも無理なく学習を続けられればと願っています。
――御社では、1988年に「計算ドリル」「漢字ドリル」など、小学生ドリルの表紙に「タマ&フレンズ」が起用しています。なぜ、キャラクターを起用したのでしょうか?
担当者 学習教材で初めてアニメキャラクターを表紙に起用したのが、弊社です。それまでは、各社が発行しているドリルのほとんどが、白くてふわふわした犬や猫の「写真」の表紙でした。ただ、写真の表紙というのが当時少し古臭い印象になりつつありました。「子どもたちが大好きなキャラクターでドリルのやる気を出したい」という思いで、当時人気のあった「タマ&フレンズ」を表紙にする案が出ました。
――起用当初の反響はいかがでしたか?
担当者 発刊前に学校現場では、賛否両論ありました。社内でも意見がわかれていたようです。しかし、「タマ&フレンズ」でドリルを発刊すると、予想以上に好評で、「親しみやすい」「新しい」などといった嬉しいお声をたくさんいただきました。
――表紙登場から32年経った今も愛されています。なぜこれほどまで長く起用し続けているのでしょうか?
担当者 発刊当時、大きな反響をいただき、おかげさまでそれ以降売り上げもかなり伸ばしました。毎年「タマ&フレンズ」の表紙のドリルを使って、先生方がご指導するなかで、いつしか「ドリル=タマ&フレンズの表紙」となっていきました。
――たしかに「ドリル=タマ&フレンズの表紙」というイメージがあります。
担当者 実際に、弊社の名前は憶えていなくても、「タマ&フレンズ」はわかるという先生も多くいます。小学校では、毎年4月に今年1年間に使うドリルを先生方が検討され、先生はこれまでの指導経験のなかで使いやすかったドリルを選ばれます。その時に、弊社のドリルのアイコンとなるのが「タマ&フレンズ」です。一度「タマ&フレンズ」以外のキャラクターに変更したこともあるのですが、「いつも使っている新学社のドリルがない!」という問い合わせを多くいただき、すぐにタマに戻したこともありました。子どもたちにとって親しみのある「タマ&フレンズ」がいつしか「ドリルのキャラクター」として定着し、それがドリルの内容と紐づいた「アイコン」となりました。
学校現場で浸透し、単なるキャラクターではなくなった「ドリルの表紙=タマ&フレンズ」
担当者 たしかに懐かしのキャラとはよく言われます。ただ、発刊当初は「かわいい」「人気がある」という理由でしたが、いつからか「ドリルといえばタマ&フレンズ(の表紙)」と、いわゆるドリルそのものをイメージされるようになりました。それだけ学校現場で浸透し、単なるキャラクターではなくなったのだと思います。また、LINEのスタンプや文具などのグッズ、カフェなどでのイベントなども毎年展開しています。その際にも、「使っているドリルのキャラだ!」と言って楽しそうにグッズを見ている小学生も多いと聞いています。今の小学生にとっては「タマ&フレンズ」を、逆にドリルから知ることも多いようです。
―― 一方で親世代からは、「時を経ても可愛さ、楽しさを世代を超えて共感できる」「子どもたちが学校で使っているドリルの表紙になっていて、小学生の頃、大好きだった私にとっては嬉しさと懐かしさがひとしお」と好感度がとても高いです。起用し続けるのは、子どもだけでなく、親たちにも向けてのことなのでしょうか?
担当者 キャラクターの版権元であるソニー・クリエイティブプロダクツさまからも、二世代、三世代と世代を超えて愛されるキャラクターとなっていると聞きます。親世代はテレビなどでタイムリーに、子どもたちは学校でドリルの表紙をきっかけにして、同じキャラクターで親と子が繋がっています。
――先生方の反応はいかがですか?
担当者 ドリルをご採用いただいた先生からは、「キャラがかわいい」、「子どもたちにも人気」、「ずっと『タマ&フレンズ』のドリルだから表紙で採用を決めた」というご意見を多くいただいています。先生方が採用するポイントの1つになっているようにも感じます。また、先生ご自身が「小学生のときに使っていたから、懐かしい」というご意見もいただくことがあります。親近感が湧くという点でも好評のようです。
――「ドリル」の裏表紙には、「タマ&フレンズ」のキャラクター相関図が記載されています。なぜ相関図をのせたのでしょうか?
担当者 今のドリルの表紙に入っているような相関図を入れるようになったのは、平成27年度からです。「(リアルタイム世代でない)子どもたちが『タマ&フレンズ』を知らない」ということがきっかけです。学校で子どもたちから話を聞いていると、表紙のキャラクターを見て「このネコが…」や「白いイヌが…」などと、名前を呼ばれていないことを知りました。とてもショックでしたね。イヌやネコの名前を知り、キャラクターたちの関係を知ることで、よりキャラクターに親しみを持ってもらえたら…という思いで相関図を入れました。
――そうした工夫により子どもたちの反響はいかがですか?
担当者 最近では、キャラクターの性格や住んでいる町の地図など、より身近に感じてもらえるよう工夫しています。例えば、「トラ」は「高いところにのぼるが得意」なのですが、その性格を活かし、ある表紙では銭湯の煙突に登っています(ちなみにこの銭湯は「コマ」の実家「松の湯」)。そんな風に表紙を見て想像したり、物語を作って楽しんだり…親しみやすさがドリルのイメージにもつながり、「タマたちと一緒にドリルをがんばろう」という気持ちになってもらえたら嬉しいです。