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毒親ブームに警鐘、脳科学から見た親と子の問題点「誰でも“なり得る”ことを知って」

「子どものためではなく、自分の快楽になっていると感じたら止めて」

  • 中野信子氏

    中野信子氏

 親は最初から親であるわけではない――。子どもと共に成長していくものだというのも重要な考え方だ。それでも親は、「子どもにとって理想にならなければいけない」と悩むことが多い。「親は子どもへの“しつけ”を義務としてやらなければいけないと重圧を感じてしまうものです。それで叱ってしまう。でも、そうした親がすべて毒親というわけではないんです」と語る。

 大きな分岐点は「自分のしていることが快感になるかどうか」。冷静な視点を持ち、いま子どもに対してやっていることが、「子どものためではなく、自分の快楽になっていると感じたら止めてほしい」と訴える。怒ってしまった内容について、しっかり説明できるかどうか。それが非常に重要な問題となってくる。とはいえ、子ども自身が虐待か否かを判断するのは難しい。「児童相談所と警察の連携がうまくいっていないという問題点はあるのですが、とにかくなにかあったら子どもは逃げてほしい。そういう仕組みを作らないといけないのです」。

脳科学者が“発信”する理由、「論文よりも一般への知の還元を」

 本書では、2種類の愛情ホルモンの存在を示し、母親と父親の子どもに対する心情の差異なども解説している。脳科学によって親子関係を考察することで“毒親”問題の本質をあぶりだし、「どうしたらいいかわからない」という親や子に手を差し伸べる。まだまだすべてが解明されるわけではないと中野氏は言うが、「もやもやした気持ちを解決する糸口にはなると思います」と力を込める。「“毒親”というのは、そういう人がいるということではない。子どもとの関係性の中で、誰でも毒親に“なり得る”ということなんです。そこを理解するだけでも、気持ちは変わると思います」。

 こうして、以前からメディアや著書を通して、その研究を一般社会に還元し、問題を抱えた人々の心を救ってきた中野氏。近年ではほかにも、茂木健一郎氏や澤口俊之氏など、一般にも馴染み深い脳科学者もいるが、中野氏の考える“発信”する意味とは?

 「研究室で論文を書いているだけでは、税金を使って研究をしているにも関わらず、一般に知識を還元することはできません。研究者の中には、一般に向けた知の還元をダサい、それは研究者の仕事ではない、とおっしゃる方もいるのですが、それではいったい誰がやるのか。自分の研究を支えた税金を支払っている人々のことを、少しでも考えているのか。捏造も多い昨今、いわゆる「業績」を上げてポストにしがみつくことに自分はあまり興味がなく、そういうことは業績と肩書きを重んじる先生方が真剣におやりになっていますから、お任せしたいと思っています。一般向けに語るというのは意外に工夫とスキルが必要なものです。メディアに関わる皆さんの伝える力から学ぶことも多くあります。自分になにができるのか、常に考えながら、知の還元をしていけたらと思っています」。
(文・磯部正和)
著書『毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ』
ポプラ社刊
【公式サイト】(外部サイト)

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