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美容整形がテーマの漫画原作者×整形アイドル轟ちゃんが徹底討論 「美容整形」「SNS加工」隠さずに発信する現代の”美”の価値基準とは?
美容整形をする人たちの真の欲望とは?ダウンタイムもリアルに描写
鈴川氏 当初、担当の編集さんと三角関係のオムニバスを書いていたのですが
「他人を綺麗にしようとする人の口がめちゃくちゃ悪かったら?」その対比の設定を思いついてからは美容外科の一篇を描こうと思いキャラクターが動き出して美容外科の設定のみで何本か書いたらトントン拍子で連載が決まりました。
轟ちゃん 最初から美容整形がテーマじゃなかったんですね。あまりにリアルな漫画でしたので、もともと興味があったのかと思っていました。
鈴川氏 いえ(笑)。美容整形の病院のHPからいろいろ症例を見て勉強したり、それこそ、メスの持ち方なども監修の先生からアドバイスを頂きながら書いています。
轟ちゃん いい意味でキラキラしてないのがリアルだなって。整形をする人たちの、欲望みたいなものを漫画の中で「渇き」っていう表現をされていましたよね。それがすごい腑に落ちました。整形ってもうちょっと魔法みたいなものとして扱われることが多いんですが、ダウンタイムの描写など普段扱われないこともリアルに描かれていて。
鈴川氏 ありがとうございます。
轟ちゃん お姫様になりたいじゃなくて「No1キャバ嬢になりたい」とか。「処女だとウソをつくために処女膜を再生したい」だとか。そういった欲望って、誰もが心の奥で持ちかねないものじゃないですか。だから引き込まれるんだと思うんです。私が好きなエピソードは第1巻の豊胸手術のお話。ヒロインは豊胸に満足しているんですけど、それで出来た彼氏がラストシーンで、グラビアタレントさんが豊胸かどうかについての発言をするんです。彼女自身は手術に後悔してないんですけど、その彼のセリフにチクリと胸が痛むという。あれはすごく「分かる!」と思いました。
鈴川氏 あれは日本だからそういう描き方になったと思います。美容整形が浸透している韓国ならまた違う描写になったでしょうね。整形を隠さなきゃいけない、そんな社会は少し変だなと僕も思うんです。でも、整形という“嘘”が一つ入ってるから、ドラマが生まれるのですが。
轟ちゃん 確かに。
鈴川氏 豊胸手術をした女性の彼もそうですが、否定する側はダウンタイムの大変さもリスクも知らず、結果だけ見て「ずるい」みたいな言い方をするんです。ですが実際に調べてみたら、普通に美人で生まれてくる人よりも遥かに大きなリスクを背負っている。これはフェアじゃないだろうと、そういった思いがあります。
轟ちゃん 私は別に、美容整形を皆に勧めたいわけではありません。現実を伝えたいだけなのです。先生のその“リスク”もしっかりと描くそのスタイルにとても共感を覚えます。
美容整形は、コンプレックスも治療できるのか?
鈴川氏 僕自身はほんとうの意味では治せないと思っています。一つのコンプレックスが消えたら次のコンプレックスが浮かぶのではないかと。轟ちゃんの自著『可愛い戦争から離脱します』にも、ご自身のネガティブ面をたくさん挙げられているじゃないですか。YouTubeの動画でもダウンタイムをアップするなど。轟ちゃんはちゃんとご自身のコンプレックスに向き合ってらっしゃいますよね。
轟ちゃん 私も渇きというか、ドロドロしたものを根底に抱えていたと思うんですけど、妬みとか、周りの子は、可愛いのに、なんで私だけ、とか。コンプレックスを抱いてしまい、鏡を見ると止まらなくなって。しかもYouTuberという仕事についているから、いまだにコメントで「サイボーグ」とか「改造」とか言われるという(笑)。
鈴川氏 大変な職種に就かれましたね(笑)。整形だから「ズル」とも言われる。でも最近はそのネガティブ感も少なくなってきて、寧ろカミングアウトした方が好意を持って迎え入れられるという現象も少なからずあると思うんです。その第一人者が轟ちゃんだと思います。
轟ちゃん ありがとうございます。確かにカミングアウトも珍しくなくなりましたよね。コンプレックスの話に戻りますが、『Dr.クインチ』のセリフに「傷を完全に消すことはできないけど、目立たなくさせることはできる」というのがあるんですけど、それはあるかなと思います。