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著名人の“肩書き”への思い、カテゴライズされることへの憤りも
性別で分けるナンセンスさ 女優、女子アナへ持つ違和感
とはいえ、それほど厳密でもなく、番組の内容や本人の意向しだいでは「女優」とすることもあるようだ。たとえば『プロフェッショナル 仕事の流儀』では、吉永小百合(2019年10月26日)を「映画俳優」と紹介する一方、宮沢りえ(2017年7月24日)は「女優」と紹介されていたことも。また、松岡茉優は以前は自らを「俳優」と名乗っていたが、安藤サクラや樹木希林と共演したことで、「初めて“女優”がいいと思えるようになった」とインタビューで語っていた。
一方、昨年3月放送の『ザ・因縁』(TBS系)では、元TBSアナウンサー・小島慶子と女子アナが対決、小島が「女子アナ」という呼称にもの申し、「女を売るな、アナウンサーでいい」と主張した。対する現役女子アナたちは、自分をアピールするために“女らしさ”を前面に出すこともときには必要、自分たちは“女子アナ”という肩書きで仕事に呼ばれていると反論。
実際、「女優→俳優」と同じく、男性も女性も「アナウンサー」に統一すればすむことかもしれない。また、考えてみれば“女子”という言い方も謎といえ、普通に“女性アナウンサー”でいい気もするが、“女優”や“女子アナ”であることにプライドを持っている女性も多く、“女”がつく肩書きだからこそ機能する仕事や役割もあるということだろう。
“声優”という言い方を嫌う声優 世代間での違いも
実際、最近では声優が声優以外の活動の場を広げるケースが多く、大塚明夫がNHK大河ドラマ『麒麟がくる』に出演したり、上坂すみれが初の写真集『すみれいろ』をヒットさせたりしている。今、もっとも人気がある声優といえる宮野真守も数々の話題作に声優として出演。その一方で、歌手活動もこなし、音楽番組『おげんさんといっしょ』(NHK総合)に出演すると、その流れで紅白出場も果たしている。
また、『アイドルマスター』や『BanG Dream!(バンドリ!)』などのゲームやメディアミックス作品のヒットによって、若い声優のアイドル化が進み、声優のステイタスもこれまでとは違ってきている。
汎用性の高い「タレント」という肩書き “なんでもできる”が軽くみられる言葉に
その語源は古代ローマの通貨の単位である、「タラントン」から来ているという。これが肩書を意味するようになったのは「才能(能力)に応じてタラントを支払う」という新約聖書の中のエピソードに由来しているからという説がある。
今では明確に俳優とか歌手、アイドル、芸人などとカテゴライズしにくいときにそう呼称されたり、ものまねタレントやママタレントなど「〇〇タレント」と細分化もされている。しかし、どれもどこか軽く扱われているような印象も。
本来の意味をたどれば、いろいろな仕事をこなせることが大きな才能であるのは間違いなく、もっと“タレント”という肩書きに敬意を払ってもいいはずなのだ。
時代の流れもあり、「女優」か「俳優」か、「声優」か「俳優」かなど、男性・女性や聴覚・視覚でカテゴリー分けすることに異を唱える人が出てくるのも当然の流れだろう。今後は、日本でも米・ハリウッドでも「主演女優賞」や「助演男優賞」といった呼称も見直されていくのかもしれない。しかし、肩書きを付けることによって輝く場合もある。肩書き自体には正解も不正解もないが、まずは自他ともに認める肩書きを獲得すべく、肩書に見合う努力をする姿勢が大事ということなのだろう。