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熊本の被災地で見えた“ペット防災“”の今、批判あれど「同行避難こそのメリット」
3.11を教訓に建て直された病院でペット同伴避難を受け入れ
“犬の殺処分ゼロ”を誇る熊本を、震災の前から幾度となく取材で訪れていたという片野さん。第二の故郷のように感じている熊本が被災し、居ても立ってもいられず取材する中で、獣医師・徳田竜之介先生と出会った。3.11を教訓に、災害時を想定して建て直された病院で、延べ1500組のペット同伴避難を受け入れた竜之介先生から学ぶことは、非常に大きかったという。
「熊本には古い家屋が多く、建物は次々に崩壊し、残った住居の中も倒れた家具や割れたガラスなどでいっぱい。そんな中、自身や病院スタッフも被災者であるにも関わらず、竜之介先生は行き場のない飼い主とペットに病院のビルを丸ごと開放されました。ニュースも届かず、自分の置かれている状況すら把握できない中で様々な判断を下すことは、あとあと責任を問われかねないことも多かったはずです。でも竜之介先生は、“迷うくらいならやる!”という信念の持ち主。同伴避難所の開設は、行動の早い竜之介先生だからこそ、成し得たことだと思います」
明確なルールがないから、一人の不満の声が多数派となる
「2013年、環境省は災害時に飼い主の責任で、ペット同行避難をすることを基本にするガイドラインを策定しました。ただ、実際の取り組みは、各地方自治体によって様々。避難所の運営は市町村ごとの判断になるので、ペット対応の準備をするかどうかは、体育館を管理する学校や団体などによります。フードの備蓄やキャリーを準備している自治体もあれば、何をすればいいかすらわからない自治体もある。そんな現実を見ると、ガイドラインだけでなく、行政が具体的なやり方を紹介したり、明確なルールを作ってくれれば、誰もが従いやすいと思うんです。
きちんとしたルールがないから、誰か一人があげた不満の声が多数派となり、ペット同伴がリスクになってしまう。これは動物だけに言えることではなく、赤ちゃんや高齢者、身体の不自由な方、同伴している方にも言えることでしょう。ケアを必要とする人が弱者になってしまう、そんなことにならないようしなければいけません。動物が好きな人もそうでない人も協力しあえるように、時代の流れとともに変化するペット防災について、飼い主が知っておくことが重要です」
中越地震、東日本大震災を経て変化…ペット同行避難のメリット
とはいえ、最近の災害の際にも、ペット同行避難の映像がニュースで映ると、一部で批判の声が聞かれることもあります。同行避難は、実は“人間の救助に集中できる”という大きなメリットがあるということを、より多くの方々に知ってもらいたいと思います」