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「シルバニアファミリー」SNS”専門垢”も活況で大人が夢中、33年間追求する可愛さの哲学
ドールハウス文化を日本に浸透、ジャンル衰退も“草の根活動”で復活
「通常だったら省略してしまうようなデザインやディテールを丁寧に再現し、大人にも『素敵だね』と思って貰えるようなクオリティに仕上げたというところが、それまでの玩具と一線を画していました。親子で気に入っていただける家庭が多かったようですね」(エポック社)
爆発的に売上を伸ばし、発売翌年の1986年にピークを迎えた「シルバニアファミリー」。しかし、同時に他社から類似商品が発売され、市場が飽和状態になったことで、1990年頃一時的にジャンル自体が衰退してしまった。
「当時はPOS管理がない時代だったので、あまり人気のない商品だけが売り場に並んでいるという状況が生まれてしまったんです。そこで当時の担当者が協力いただける店舗に対しては店頭に偏って残った商品を引き取って、売れ筋の商品を棚に並べるという作業を全国の店舗にしていった。そうした努力の甲斐あって、またお客さんが戻ってきてくれました」(エポック社)
とてもアナログな方法ではあったが、手間とコストをかけてでも守りたい、会社にとってとても大切な存在であったことが伺える。
働き女子やリケジョも登場、時代の変化に寄り添う商品づくり
「世界60ヵ国で全く同じ商品を販売しているので、人気のある人形が国ごとに異なることも興味深いですね。例えばハリネズミは日本だとあまり馴染みがないですが、アメリカでは非常にポピュラーな動物なので人気が高いと言われています」(エポック社)
世界で愛される「シルバニアファミリー」。その理由のひとつにどこから見ても可愛らしく見えるという顔の黄金比があるそう。
「人形たちはシンプルな顔だけど、実は最新技術を駆使しながら日々研究して作られています。正面から見ると優しく感じる顔立ちにしたり、お姉さんの目にはまつ毛のような線が1本入っていて、よりおしゃれな女性らしい雰囲気が出ています。初期の人形は今よりも動物としてややリアルでキリッとしていましたが、どんどん優しく可愛くなっています。また、近年のデジタル技術の向上により、人形の種類も増えてきました」(エポック社)
多様性が謳われる現代だが、「シルバニアファミリー」の世界にも変化はあるのだろうか?
「2017年に発売したタウンシリーズでは女性の自立や女の子たちの憧れの職業を体現していて、女の子もみんな街で働いているという設定にしました。2019年に発売予定の「ペルシャネコ」の女の子たちは理系女子なんですよ。来年以降は今までなかった服装のキャラクターの登場も予定していて、時代に合わせた要素を少しずつ取り入れています。基本軸は”ファミリー”なので、”家族”としての見せ方をいろいろと研究しながら進めています。『シルバニアファミリー』の基本コンセプトは”自然・家族・愛”。シルバニア村は心優しい仲間たちの世界なので、じつは警察がいないんです」(エポック社)
最近ではドラム式洗濯機やスティックタイプの掃除機がアイテムとして登場しているというから驚きだ。時代コンセプトは1900年代を想定しているが、現代の子どもたちの感覚に合わせて家具や家電は見なれたものを採用しているのだそう。
大人にも話題の公式インスタは撮影チームを組んだ一大プロジェクト
「SNSを見ている人がどんな写真が欲しいか、共感してもらえるような世界観を撮るためにチームを組んで作っています。小物なども撮影のために特別に製作したり、キャラクターのいつもと違った面が見えるストーリー性がある写真作品がとくに好評です。ファンの方のTwitterやInstagramを見ると本当にいろいろな遊び方をされている方がいて、おもちゃとしての役割をまっとうしている姿はなかなか感慨深くもあります。現在60ヵ国で展開していますが、これからも世界中で愛されるブランドにしていきたいですね」(エポック社)
2019年3月には過去のアーカイブなどを展示する初めての大規模な展覧会「シルバニアファミリー展」が松屋銀座で開催し、その後全国巡回予定とのこと。2019年はどんな世界観で私たちを驚かせてくれるだろうか? 「シルバニアファミリー」の躍進をこれからも見守りたい。
(取材・文/齋藤倫子)