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ORICON NEWS
“簡単すぎる”レシピ本「並べて包んで焼くだけ」がSNSで話題、誰もが調理可能な未来に
フランスの“型紙付き”料理書を参考に「直感でこれは面白いと思った」
――企画までの経緯は?
小田さんフランスの料理本のアイデアを参考にしました。図に示された通りに具材や調味料を置いていく料理本です。直感的にこれはおもしろいと思いました。昨今は「長いレシピの文章は読みたくない」というニーズが強くあり、料理動画の流行もその流れから来ています。この方式なら視覚的にレシピを理解するいことができますし、パズルみたいでおもしろい。後片付けも簡単です。幅広い層に受け入れられるのではないかと考えました。
――その後、出版までどのように進めていったんですか?
小田さん著者の上田淳子先生にこちらから企画を持ち込みました。上田先生のベースはフレンチで、以前オーブンシートを使ったレシピ集も出していたことから、もう上田先生以外は考えられないと。日本で作るからには、和食や中華、エスニックのレシピも入れようと、結果的に世界中の料理が入った楽しいラインアップになったと思います。
レシピはできるだけシンプルに「一人分でもおいしく、初心者でも失敗せずに作れる」
――編集者の小田さんからフランスの料理書を見せられたとき、どのような印象を抱きましたか?
上田さん紙包み焼はフランスの伝統的な調理法です。 “型紙付き”にすることで、料理が苦手な人や初めて料理をする人にも気軽にトライできます。料理本として機能しながらも、楽しさや美しさも兼ね備えている一冊だと感じました。
――イラストの元写真となる盛り付けは、上田さんが手掛けられたんですよね。意識されたことは?
上田さんレシピはできるだけシンプルに、イラストのビジュアルでしっかり理解できることを第一に盛り付けも考えていきました。材料や調味料はどこでも手に入る購入しやすいものを使っていて、特別なものは使用していません。
――“包み焼き”をする利点はどのようなところにありますか?
上田さん特別な道具がなくていいですね。一人分でもおいしくできます。調理方法でいうと“蒸し焼き”にあたるので食材がパサつかず、しっかりとジューシーに仕上がります。初心者でも失敗しにくいのが何よりだと思っています。
読字障害を持つ人も調理可能な未来に「このパターンが料理書の定番になれば」
――現代の人々は料理に対してどのような印象を抱えていると思いますか?
小田さん多くの人が料理は義務であり、手間であると考えていると思います。その負担を軽減するには2つ方法があると私は考えます。1つは簡単でおいしいレシピを探すこと。もう1つは料理の工程自体を楽しむことです。本書は特に「楽しさ」を売りにしたいと考えました。
――では、家庭料理のレシピにおいて重要なのは?
小田さん「再現性」です。誰が、どんな食材・道具で作っても、同じようにおいしく作れるレシピ。それこそが、家庭料理においては“良いレシピ”なのです。この本のレシピは食材を切って、並べるだけで、あとはオーブンやレンジ任せなので、技術の差が出づらいのです。その点においても条件を満たしていると考えます。
――今回の本では、レシピ本に書かれたイラストの上にオーブン用シートを引いて具材や調味料を並べていきますよね。まさに紙の本”であるからこそのアイデアだと思います。
小田さんそうですね。シートを敷くことを意識して、判型は一般的な料理書より大きめのA4変型に。ビジュアルもデザイナーさんとしっかり相談しました。元となったフランスの料理本は、料理の完成写真が置かれていないんです。ここは絶対必要だろうと、見開きをパッと見ただけで分量から完成図までわかるようデザインしました。製本には「PUR製本」という技術を採用しています。開きがよくなるので、この本にはぴったりです。
――実際にはどんな反響が?
小田さん料理初心者の方が「これなら私にもできるかも…」と思ってくださったのも嬉しかったです。「文字を読むのが困難な発達障害などの方でも、この本なら料理を作れるのでは」というご意見もありました。料理は楽しいに越したことはないと思うので、この本で料理に対する精神的なハードルを下げてもらえたらとても嬉しいです。そしてこの形式がレシピのひとつのフォーマットとして定着すればいいなと思います
――上田さんと小田さんお二人に伺いますが、今後どのような活躍をしたいですか?
上田さんフランス料理の世界はやはり大切にしていきたいです。その一方で主婦歴、子育て歴も20数年。長く家族の食事を担い、子育てに悪戦苦闘した経緯があるからこそ、身に付けられた技と知恵があります。今後もその情報を発信する書籍を作り続けていきたいですね。
小田さん今はネットでレシピを探す人が多いでしょうし、自分でもそうすることが増えてきているくらいですから無理にネットと競うつもりはありません。紙の本でしかできないことを考えて続けつつ、ネットにはないプラスアルファのある本を作っていきたいです。自分が担当した本で、料理やお菓子作りを好きになっていただけたのなら、料理編集者としてそれ以上の幸せはないですね。