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ORICON NEWS
【TBSアナウンサー×「ラジオ」Vol.6 蓮見孝之】放送に携わる一員として、念願の冠番組で同世代に伝えていきたい
そこで今回、TBSラジオで番組を担当しているアナウンサー陣を対象に、テレビとは違ったラジオの魅力を聞くリレーインタビューを敢行。第6回は、土曜朝のニュース番組『蓮見孝之まとめて!土曜日』を担当する蓮見孝之アナ(37)。念願だったという冠番組がスタートしてから1年4ヶ月。同世代に向けてニュースを届けることに、大きな意義を感じているという蓮見アナに、現在の胸の内を聞いた。
正解のないニュースとの向き合い方「表情では伝わらない、言葉で示すのがラジオ」
蓮見孝之番組の打合せは放送前日の金曜日に行われます。けれども、深夜から明け方にかけて進展するニュースもありますし、一週間分のニュースを「まとめて!」お届けする番組ですから、把握しておくべき情報量も多くなります。スタッフとの情報共有は欠かせません。特に、豪雨や台風、地震などの自然災害は、リアルタイムで状況が変わってきますし、避難や警戒を呼びかける場面もでてきます。時間帯によって放送エリアも異なりますので、その都度、どのように呼びかけるべきか、常に考えながら取り組んでいます。
蓮見孝之自然な会話……ですかね。例えば、ゲストが発言している最中、私は「ええ」とか「はい」と、うなずきを繰り返してしまうことがあるのですが、それだけでは話は広がっていきません。同意するならば、どんな点に納得感があったのかを言葉で示してみる。逆に、素朴な疑問を抱いたり、同意できない部分があった場合には、簡単にうなずかない。以前、スタッフからアドバイスをもらったことがあるのですが、ラジオでは自分の気持ちを言葉にできなければ、自分のスタンスを曖昧にしたままやり過ごしていることになってしまいます。首を傾げたり、目を細めたり、表情や態度では伝わりません。些細なことでも、言葉にしてみる。そうすれば、自然な会話になっていくんじゃないかと。
――ニュース番組で“自分らしさ”も意識する?
蓮見孝之TBSラジオには、経験豊富なラジオパーソナリティーの先輩方がたくさんいて、長年続く信頼度の高い番組が既に複数あります。その中で「自分らしさ」をどう出していくかというのは、まさに今現在の課題です。けれども、こんな私でも、伝え方を工夫したり、自分自身の経験談を交えてお話しできることもきっとあります。そして、この番組にはたくさんのメールが届きます。そのメールを紹介する際には、まさにラジオパーソナリティーとしての「自分らしい」目線や「自分らしい」感性が問われると思っています。「進行役を任された局アナ」ではなく、TBSラジオのパーソナリティーの一人として、より一層の自覚を持っていきたいです。
――冠番組はアナウンサーとして目標にしていた?
蓮見孝之番組のタイトルに自分の名前が入るのはとても光栄なことで、TBSに入社してから、それを目標にやってきた部分もありました。その目標が、アナウンサーになって14年目にして実現し、初回の放送で感極まって思わず泣いてしまったんです(笑)。実は、番組に関する会議や打合せは、事前に何度も重ねてきたんですが、番組のオープニング曲だけは、初回の放送まで聴かされなかったんです。ですから、第1回の放送でオープニング曲を初めて聴いたとき「本当に自分の番組が始まるんだ」という感動で涙があふれてきました。それだけ思いを込めているこの番組で、放送開始当初から念頭にあるのは、自分と同世代の30〜40代の方々に聞いていただくことです。ラジオは年輩の方々が聴くもの…、いやいや、30代だから思うことや、わからないことを隠さずに伝えていき、共感していただく、何かを考えるきっかけにしていただく。30代の自分が、土曜の朝のニュース番組のパーソナリティーを務める意味は、そんなところにもあるんじゃないかと思うんです。
東日本大震災の報道で抱いたニュースへの思い 自分に出来ることは何なのか?
蓮見孝之付き合いの長い友人から「結婚して性格が変わったんじゃない?」と言われたことがありました。まさか保育士の資格まで取得して、育児に前のめりになるとは自分でも思っていませんでした。以前、この番組の中でもお話ししましたが、私には「大人の余白が足りない」くらい、家族のスケジュールを優先して生活しています。ですから、自然と妻や子供たちの話題が多くなってしまうんですが、時々、自分に言い聞かせるんです。「家族の在り方、生活スタイル、働き方は人それぞれ」。自分の経験談を話すことで説得力が増すこともありますが、一方で押しつけがましくなっていないか、自己陶酔して満足していないか、帰りの電車の中で、時々反省することもあります(笑)。
蓮見孝之入社してから、ジャンルを問わず複数の番組に携わってこられたという実感はありますが、特に若い頃は、「一人でも多くの方に自分の名前を覚えていただく」そればかり考えていたような気がします。しかし、アナウンサーの評価基準というのは人それぞれ。報道、スポーツ、バラエティーといった番組のジャンル、担当番組の数、出演番組の視聴率や聴取率、それから各番組における役割や認知度など色々です。だからこそ、他人との比較ではなくて、自分の中で「やりがいを持てるかどうか」が大事だと思います。私は今、週末の土曜の朝に、一週間のニュースと出来事を伝えられるこの番組にやりがいを感じています。慌ただしい生活をやりくりする中で、この番組を聴けば、一週間のニュースがチェックできる! 週末から来週にかけてのスポーツ情報が把握できる! そんな番組にしていきたいです。そしていつか「蓮見を起用してよかったね」と思っていただけるよう頑張ります!!
――ニュースへの強い意気込みを感じます。
蓮見孝之2011年の東日本大震災が一つの転機になりました。TBSテレビでその第一報を伝えたのが私だったんです。ところが、その数日後、私は日本にはいませんでした。以前から決まっていた番組の海外ロケでイギリスのロンドンに行っていたんです。撮影が終わり、現地のホテルでテレビをつけると、日本の震災のニュースが報道されていました。「日本が大変な時に、なぜ自分は海外にいるんだろう、放送局の職員として何の力にもなれていない…」。妻の親族や友人が岩手や宮城に住んでいましたから、そのことも大きかったかもしれません。
私はその後、2012年に『NEWS23』の取材キャスターとして、新たなアナウンサー人生を歩み始めました。私が言いたいのは、報道だから、スポーツだから、バラエティーだからというジャンルに縛られることなく、放送に携わる一員として、自分にできることは何なのかを考えながら、この『まとめて!土曜日』にも臨みたいと思います。
神田松之丞との“シュートマッチ”の舞台裏「後悔しているんです……」
蓮見孝之あれはねぇ…(苦笑)。番組のスタッフにも相談しましたし、当日のシミュレーションややり取りのイメージをしながら、密かに作戦会議はしていたんです。でも、ラジオの面白さでもあり怖いのは、始まってみないと分からないところ。松之丞さんと対面したのが、当日の本番開始直前の打ち合わせだったのですが、その時の様子が、毎週ラジオで聴いている松之丞さんとは全くの別人で、とても丁寧。スタッフの話を真剣に聞きながら、分からないことは聞き直す、そしてメモを取りながら細かく確認していたんです。「どっちが本当の松之丞さんなのか?」「もしや既に心理戦が始まっているのか?」と変に勘ぐってしまって、そのまま生放送スタートです…。私は悩めば悩むほど、自分が非力であることを痛感するんです。悩まずにぶつかれば良かったと後悔しているんです…。
――松之丞さんがラジオで振り返っていましたが、蓮見さんのトークを適度にいなして、自分のペースに持ち込んでいました。
蓮見孝之共演する直前のご自身の番組で「ラジオは生放送やってる人が偉いんでしょ? こっちは収録だからさ」なんて仰っていましたけど、既にそこから駆け引きが始まっていたんでしょうね。当然、私がその松之丞さんの番組を聴いているということも想定した上で。はぁ…、またご一緒できるチャンスはありますかね。今度は、『問わず語りの松之丞』にお邪魔したい(笑)
◆蓮見孝之(はすみ・のりゆき)1981年生まれ。法政大学卒業後の2004年にTBSに入社。
『みのもんたの朝ズバッ!』や『王様のブランチ』などに出演後、17年4月から『蓮見孝之 まとめて!土曜日』を担当。現在はTBSテレビ『ひるおび!』やお昼の『JNNニュース』などにも出演。
『みのもんたの朝ズバッ!』や『王様のブランチ』などに出演後、17年4月から『蓮見孝之 まとめて!土曜日』を担当。現在はTBSテレビ『ひるおび!』やお昼の『JNNニュース』などにも出演。