(更新:)
ORICON NEWS
『72時間ホンネテレビ』番組責任者に聞く 「マスメディアが生まれる50年に一度の機会」その理由とは?
3人の“ありのままの姿”を見せることができた点が大きかった
谷口達彦番組開始前から過去最大の数値になるのは間違いないと思っていました。実際に実施してみて、数字や反響、話題にされた総量はどれをとっても想定以上の結果だったと思っています。
――成功の要因は何だったと思われますか?
谷口達彦そもそも稲垣さん、草なぎさん、香取さんの3人が出演するという事自体が注目の的だったので、番組の縦の軸としてインターネットを密接に絡めた企画軸を作りました。それがうまく作用して日本中を巻き込むことができたと思います。何より、72時間という長時間の生放送を通して3人の“ありのままの姿”を見せることができた点が大きかったですね。
――“生放送”自体は決して新しい試みではないですが、“72時間ぶっ通し”というのは文字通り前例のない挑戦でした。本番組で3人が見せようとしたのは、失敗やアクシデントといったマイナス面も決して隠さないという“ありのままの姿”だったのでしょうか。
谷口達彦「次何が起こるんだろう?」みたいな期待値をずっと上回り続けられたと思います。視聴者が3人の一挙手一投足に注目した3日間でした。ワクワクしたり、気になったり、喜んだり、笑ったり、泣いたり…そういうドキュメンタリー作品みたいな番組を作りたかった。それをやるなら生放送しかないと。番組を企画するだけでなく、その先にある話題を企画するということを意識していました。
マスメディア以外でも、 人の心に訴えるコンテンツを産み出せる
谷口達彦SNSを通じて、視聴者が参加して成立する番組になりました。みんなが参加することで「いいね!」が増えて、つぶやきが増えていく。それによって番組のことを知らなかった人が知って、そこからまた参加していく。それがSNS上のトレンドとして取り上げられて、まるで“うねり”のように周りを巻き込んでいきました。そのうねりをすぐさま番組にフィードバックしていく番組作りを狙っていたんです。
――日本中を巻き込んだ3日間でした。
谷口達彦マスメディア以外でも、インターネット発のメディアであっても“人の心に訴えかけるコンテンツを産み出すことができる”と信じて番組を制作しました。
――SNSにより、番組への反響はダイレクトに伝わってきたかと思います。
谷口達彦炎上するようなネガティブなコメントというよりは、ポジティブな意見が多かったのが印象的でした。香取さんに「こんな時期にトランプの恰好をさせるなんて」とか、「企画だとしても、稲垣さんに結婚してほしくない」といった率直な意見もいただきました。ただ、それも“ハラハラのひとつ”として楽しんでくれていた方も多かった。そういうご指摘も含めて反響の総量が凄かったと思います。
番組中に出演が決まる!? ネットテレビならではの“フレキシブル”さと“リアリティー”
谷口達彦元々のコンセプトとして、ご本人たちが「これを今歌いたい」という思いがベースになっています。なので、気持ちの入ったコーナーにしたかった。
――「選曲に涙した」という声も多かったです。
谷口達彦70時間駆け抜けていった3人が72曲ノンストップでやる。クタクタになりながらも笑顔や涙、魅力的な素の表情を見せてくださって、その部分はとても響いたと思います。
――制作の現場を見られてきて、谷口さん的にはどの曲でグッと来ましたか?
谷口達彦テーマソング「72」はこの番組のために作ったものだったので、特に思い入れは強いですね。番組冒頭からいろんなシーンで流していましたが、生で歌唱を披露するっていうのは最後まで取っておきました。72時間駆け抜けきった3人が、あの歌詞に乗せて、視聴者や関係者みんなへの感謝を込めて歌っていたので、すごく感動しました。
ネットテレビに求められる「誰かにとって熱狂的に見たくなる」コンテンツ
谷口達彦そうですね。あのシーンは、セリフのように何か双方で決まったことを話してもらいたい企画では当然ないと思うんです。その時に3人が感じたありのままの、思わず口から出てくるようなリアリティのある言葉とか反応、そういうものがダイレクトに伝わるようにしました。
――森さんをはじめ多くのタレントが登場しました。
谷口達彦皆さんそれぞれにストーリーがあるというか、3人に対する思いがあって出てくださいました。だから「仕事として出演する」みたいな感覚は見ていて感じなかったと思います。また、番組が始まってから出演が決まる、なんてこともあったんですよ。それは準備が間に合わなかったというよりも、ネット番組の良さともいいますか、例えば「3日目のこの時間なら仕事の隙間が出来るから出たい」みたいなこともあったんです。そうしたネット番組のフレキシブルさもよく表れたと思いますね。タレントさんも「72時間ホンネテレビ」の大きなうねりの中に巻き込まれていったというか。
ネットテレビに求められる「誰かにとって熱狂的に見たくなる」コンテンツ
谷口達彦今回、多くの人の心に訴えかけられるコンテンツを作れたのではないかと感じています。そういう意味でいえば、ネット番組においてすごく大きな事象だったと思います。「メディア史に残る革命」という言葉で報じていたメディアもありました。
――地上波とネットテレビの互いの長所を生かすことで、今後も互いに補完できる部分もあると感じました。
谷口達彦「リビングにあるTV」を家族で見る、というかつての生活スタイルは少なくなっていて、10代〜30代のTV離れもあります。まさに、そういうターゲット層の補完という面はあると思いますし、スマートフォンが生活の中心にあるような若い方に、AbemaTVを見てほしいと思っています。
――AbemaTVでは「地上波では出来ないことをやる」といったテーマはありますか?
谷口達彦そう思われがちですが、「TVじゃ出来ない」ことを狙うと過激なものに寄っていきがち。私たちは、ただ過激なものを手がけたい訳では全然ないんです。「TVじゃ出来ない」というよりは、地上波よりも多少ターゲットが狭まっても、“誰かにとって熱狂的に見たくなる”コンテンツを作りたい。
――地上波とターゲット層が違うのが特性であり強みでもあると。
谷口達彦そうですね。特定の誰かを熱狂させるような、尖った番組をやりたいなと。
3人による特番復活の可能性は?
谷口達彦もちろんそれはあります。巷では“ホンネロス”と言われていることも知っています。こうした番組を手掛けられたのは嬉しいし誇りに思いますけど、次はまた新しいことをやりたいと思っています。
――「こうした企画を準備している」というものはありますか?
谷口達彦今回の3人の企画とは違いますが、年末年始にもいくつか用意しているものはあります。
――では、3人での何か別の展開は予定していますか?
谷口達彦正直まだ何も決まっていませんが、個人的にはぜひ、また仕事をしたいと思っています。
――3人から「今度はこれに挑戦したい」みたいなアイディアは出ていますか?
谷口達彦「巨大メントスコーラはもう一度やりたい」と。失敗しちゃったんで(笑)。
――今後AbemaTVをどういったメディアにしていくのでしょうか?
谷口達彦今、50〜60年に一度の新しいマスメディアが生まれる機会が訪れつつあると思っています。今回の企画もそうですが、インターネットの動画コンテンツはまだ正解がない状況です。AbemaTVは、利用者の数もYouTubeについで2位という規模にはなりましたが、インターネットで動画を見るという文化自体は、日本ではまだまだこれから。そこは強く意識していて、開拓者精神というか、自分たちで新しいものを切り拓く気持ちで多くの人を熱狂させるコンテンツを生み出し続け、必ずマスメディアを作りたいと思っています。