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進撃の巨人特集『ムーブメントはなぜ起きた!? 加速する人気の秘密に迫る!』
<<特報>> あの超大型巨人がついに姿を現す!
城壁を崩して迫る巨人、人類が使う立体機動装置アクション
どうして『進撃の巨人』は、アニメ化を通じてその人気をさらに拡大させたのか。確かにテレビアニメ化は、原作人気を押し上げる効果があり、それを狙って企画される側面も強いが、これほどまでに効果が出るケースは決して多くない。『進撃の巨人』に関しては、「ビジュアル面」と「ストーリー面」ぞれぞれにポイントがあり、それが人気を加速させることにつながったと考えられる。
まずビジュアル面では、アニメ化を通じて『進撃の巨人』といえば“コレ”という映像を作り出した点が大きい。
具体的にいうと、城壁を崩して迫る巨人の姿と、それを倒すために人類が使う立体機動装置のアクションだ。巨人であれば、重々しい動きと生々しい色合い。立体機動装置の立体的なカメラワークとスピード感。このふたつがアニメの映像として非常に説得力をもって描かれた。
原作読者が想像した以上のビジュアルがアニメ化によって作り出され、“番組の顔”となったことで、作品のイメージが広く伝わりやすくなったのだ。作品を見たことがない人でも、こうしたビジュアルのイメージで『進撃の巨人』というタイトルを認識している人は多いはずだ。
ちなみに『進撃の巨人』のアニメ化を担当した制作会社はWIT STUDIO。Production I.Gから2012年6月に独立した新進の制作会社だ。監督は『DEATH NOTE』の荒木哲郎氏。荒木氏の前作『ギルティクラウン』を制作したチームが、WIT STUDIOのベースになっている。また、キャラクターデザインの浅野恭司氏は『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』などで作画監督を務めてきた実力派で、『ギルティクラウン』にもメインアニメーターとして参加している。
原作のセールスポイントをしっかり抑えた同社の丁寧な作品作りが、アニメ成功の大きな要素といえる。
かなり異色なスタイル ストーリー面での大胆アプローチ
原作は、調査兵団の一員となっている主人公エレンの様子と、5年前に起きたシガンシナ区への超巨大巨人の登場の様子をカットバックしながら物語を始めている。またその後の、エレンが訓練兵時代だった過去のエピソードも、エレンが巨人化するトロスト区攻防戦を終えた後に、時間を巻き戻す形で描かれている。原作がこうしたストーリー展開になったのは、まず読者を惹きつける展開を描かないと連載が続かないという状況と、物語上欠かせない経緯の説明を両立させるために必要なことだっただろう。
アニメはこれを基本的に時系列に並べて再構成した。これにより設定・ストーリーが非常にわかりやすくなり、エレンを中心とするキャラクターの心情も追いやすくなった。これにより間口が広がったことも、アニメ化によって新たなファンが増える大きな一因となった。
また、未見の人にわかりやすいだけではない。原作ファンには、アニメ版を新鮮な気持ちで見る楽しみが生まれた。これはパッケージソフトを購入する動機にもなる。
なお、シリーズ構成を担当したのは、ベテラン脚本家の小林靖子氏。特撮では『仮面ライダー電王』、テレビアニメでは『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』などを手がけている。
このようにアニメ『進撃の巨人』は、ビジュアルとストーリーの両面で原作のポテンシャルを十分引き出すことで、その人気をさらに加速させる役割を果たした。実は、原作はアニメの企画としてみると、決してヒットしそうな要素(アニメファンが好みそうなキャラクター造形や世界観)でできている作品ではない。それがここまで広くファンを獲得するに至ったのは、ひとえに出来上がった映像のパワーがそれだけのインパクトを持っていたからだといえる。
『進撃の巨人』は、2015年に『劇場版『進撃の巨人』後編〜自由の翼〜』と実写映画が控えており、2016年にはアニメ第2期がスタートすることが発表された。原作の将来的な完結をにらみつつ、さまざまなメディアで『進撃の巨人』の人気は続きそうだ。
(文:藤津亮太)
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